弁護士山本行雄 情報提供 札幌弁護士会所属

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よくある質問(法令解説7):放射線障害防止関係の法律がたくさんあり,わかりにくい

2017-07-11 09:23:02 | 公害犯罪処罰法と原発公害

 <記事の複写配付自由です。「制定しよう放射能汚染防止法」と合わせてご活用ください。>

よくある質問(法令解説7)<放射線障害防止関係の法律がたくさんあってわかりにくい>

 

Q 被爆の問題には、たくさんの法律が出てきてわかりにくい。原発による被曝には、どの法律が、どのように適用になるのか。法令をどのように辿ればよいのか、説明してもらいたい。その上で、一般公衆がどのように守られているのかに触れてほしい。

 

A 法令を詳しく知りたいという方からこのような質問を受けることがあります。法律をやっている者にとってもややこしいところです。わかりやすい説明にチャレンジしてみます。

 

1 「放射線障害防止法」から入るのがコツ

 

(1)たくさんの法律

 わかりにくい原因は、いくつもの法律が重なり合い、絡みあっているからです。

 最初に、主な法律をあげておきましょう。

 ① 放射線障害防止法

 ② 原子炉等規制法

 ③ 労働安全衛生法

 ④ 放射線障害防止技術基準法

 他に、たくさんの医事法や薬事法、公務員関係法などが関係してきます。

 なお、①と②の正式名称は(注1)にまとめてあります。

このように多数の法律がありますが、理解のコツは、放射線障害防止法とその適用除外から見ていくことです。

放射線障害防止法は、放射線障害を防止するための中心となる法律です。この法律は様々な分野で適用除外があり、特別な法律を作って、そちらを適用するということが行われています。

適用除外は、次の政令に書いてあります。ネット検索がしやすいように正式名を書いておきます。

<放射性同位元素による放射線障害防止法施行令>

この施行令の第1条が適用除外規定です。

除外規定には、原子炉等規制法の核燃料・核原料物質、薬事関係や医療関係の法律で定める一定のものが掲げられています。

 

(2)原子炉等規制法の扱う「核燃料物質」「核原料物質」は、放射線障害防止法から適用除外

 

 放射線障害防止法は「放射性同位元素」という表現を使い、一方原子炉等規制法は「核

燃料物質・核原料物質」という表現を使っています。

両者の関係ですが、ウラン、トリウム、プルトニウムを含む物はすべて原子炉等規制法の「核燃料物質・核原料物質」になります。ですから「放射性同位元素」と重なり合っている場合も放射線障害防止法の適用はなく、原子炉等規制法が適用になります。(法令を辿ろうとする方は注2を参照してください。)

原発による原子力の利用は、ウランを原料に精錬や加工を経て核燃料にして利用する事業ですから、原発関係の放射性物質の扱いには、放射線障害防止法の適用はなく、原子炉等規制法が適用になるということです。

 以上から、原発関連の施設が扱う放射性物質や被曝には、原子炉等規制法が適用され放射線障害防止法は適用されないことになります。

 

(3)労働安全衛生法は、一般公衆を保護しない

 労働安全衛生法は、事業者に労働者が放射線障害を受けないように、様々な規制を行っています。労働安全衛生法の規則に「電離則」(注3)と略称される規則があります。違反には罰則があります。又、福島第一原発事故による除染作業のための「除染則」という特別な定めも作られています。この法律は放射線作業に従事する労働者を保護する法律ですから、一般公衆を被曝から守るための法律ではありません。

 

(4)原発関連の施設から公衆を被曝から守る法律は原子炉等規制法

 ここまでで、公衆が、原発関連事業からどのように守られているかは、原子炉等規制法を見ればわかることになります。

 原子炉等規制法の公衆被曝線量限度は、放射線障害防止に関する技術的基準法によって一般国民が「障害を及ぼすおそれのない線量以下とする」という基本方針に則って、他の法律と同様年1ミリシーベルトと定められています。

 この年1ミリシーベルトには、罰則規定はありません。

 1ミリシーベルトの法令を辿ろうとする方は(注4)を参照してください。

 

(5)排出については、罰則無き「濃度規制」があるだけです。濃度規制だけで「量」の規制がありませんから、薄めて捨てれば違反になりません。

 濃度規制に関する法令を辿ろうとする方は(注5)を参照してください。

 

2 公害規制と原子炉等規制法の濃度規制、線量規制との違い

 原子炉等規制法では、排出段階では、薄めて捨てればよい濃度規制で、しかもその濃度規制違反に罰則もありません。また公衆被曝線量規制は、周辺監視区域を定め、その外は1ミリシーベルトを超えないことになっています。ただこれだけの法律なのです。違反しても罰則がありません。

 公害規制法の目的は、人の健康や環境を守ることです。その基本構造は「汚染するな。すれば罰する。」というものです。「大気を汚染するな」「水質を汚濁するな」「土壌を汚染するな」という三つの「するな」と理解するとわかりやすいでしょう。そのために一定の規制基準を設けて罰則で強制することになります。 放射性物質が公害原因物質になったのですから、以上のような公害規制法を整備し適用する必要があるわけです。

 

3 「現行法でも放射線管理は厳しく行われている」という公害規制法不要論に誤導されないように

 このような不要論は「汚染に責任を負う」という公害規制の基本を理解していません。

汚染から公衆を守るために企業を規制するのが公害規制です。現在の法律では、重過失で放射性物質をばらまいても、そのこと自体何らの処罰も受けないのです。

現在の法制度をくだけた表現で表せば、放射線を扱う原発運転技術者や放射線を扱う医師が厳しい放射線管理で守られている結果、公衆も守られる。だからありがたく思え。公害規制などと、たてつくようなことを言うな。このような構造なのです。

なお、このような構造は、原発関係の放射線防護に放射線障害防止法が適用されても同じです。

 

注1 放射線障害防止法の正式名称=放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律

原子炉等規制法の正式名称=核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律

注2 放射線障害防止法施行令1条→環境基本法3条→核燃料物質、核原料物質、原子炉及び放射線の定義に関する法律第1条、第2条

注3 電離放射線障害防止規則

注4 (原子炉の例)原子炉等規制法施行規則2条2項6号→実用原子炉の設置、運転に関する規則に基づく、線量限度などを定める告示3条1号

注5 (原子炉の例)気体状廃棄=原子炉等規制法施行規則90条4号→実用原子炉の設置、運転に関する規則に基づく、線量限度などを定める告示9条

  液体状廃棄=原子炉等規制法施行規則90条7号→実用原子炉の設置、運転に関する規則に基づく、線量限度などを定める告示9条

 

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