弁護士山本行雄 情報提供 札幌弁護士会所属

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よくある質問(法令解説5):クリアランスレベル100ベクレルと汚染対処特措法8000ベクレル

2017-06-19 21:41:33 | 放射能汚染防止法制定運動

 

<記事の複写配付自由です。「制定しよう放射能汚染防止法」と合わせてご活用ください。>

よくある質問:(法令解説5)

<クリアランスレベルキログラム当たり100ベクレルと汚染対処特措法8000ベクレル>

Q クリアランス100ベクレルと汚染対処特措法8000ベクレルという制度の意味について論争があって、混乱してしまう。法制度を整理してほしい。

 

A わかりにくい分野です。長ったらしい名前の法令が絡み合っていたり、多数の行政情報に関係したりしているためです。この文章自体長ったらしいのですが、少しでもわかりやすく説明しようと思います。がんばってチャレンジしてみてください。

 2005年5月に原子炉等規制法が改正され、クリアランス制度が導入されました。次の1の(1)で説明する次の条項です。こんがらかってきたらこの条項に戻ってください。

    *原子炉等規制法61条の2(特に1項と3項)

1 法令(クリアランス制度の導入)

(1)2005年5月原子炉等原子炉等規制法の改正により導入されました。

<以下、ちょっとむつかしいです。法改正、導入のポイントです>

 「原子力事業者等は、工場等において用いた資材その他の物に含まれる放射性物質についての放射能濃度が放射線による障害の防止のための措置を必要としないものとして原子力規制委員会規則で定める基準を超えないことについて、原子力規制委員会規則で定めるところにより、原子力規制委員会の確認を受けることができる。」(原子炉等規制法61条の2の1項)。

「第1項の規定により原子力規制委員会の確認を受けた物は、この法律、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)その他の制令で定める法令の適用については、核燃料物質によって汚染された物でないものとして扱うものとする。」(3項)。

以上が、導入されたクリアランス制度です。

(注3)

(2)クリアランス制度、クリアランスレベル、実際のことばの使われ方。

 上のように、法律上放射性物質として扱う必要のないものとして扱う制度を「クリアランス制度」といいます。クリアランスという表現は、法令で直接使われている表現ではなありませんが「放射性物質として扱う必要がないもの」を指す表現として広く使われているわけです。(注1)「クリアランスレベル」の基準は濃度(ベクレル)で決めます。

電事連は「一般の廃棄物と同じように処分や再利用ができるように定められた放射性物質の濃度」としています。(注2)

(3)100ベクレルはどこに、どのように定められているか。

 放射能濃度の基準として原子力規制委員会の規則で定めています。数値はその別表に記載されています。(注4)

 別表を見ますと放射性物質の種類がたくさん掲げられています。セシウム134(C134)とセシウム137(C137)の欄には、いずれも0.1Bq/g)と記載されています。グラム当たり0.1ベクレルはキログラム当たり100ベクレルになります。

 なぜ100ベクレルとしたかですが、被曝線量10マイクロシーベルトを目安値として定めたと説明されてきました。

 これが現在のクリアランスレベルです。数字の読み方ですがセシウム134とセシウム137の合計200ベクレルという読み方ではありません。両方合わせて100ベクレル以下でなければなりません。他の核種が混ざっても合計100ベクレル以下でなければいけません。

 <やっと、クリアランスレベル㎏当たり100ベクレルまで辿り着きました。>

ここまでのおさらいをしておきましょう。

「放射性物質として扱う必要のない物」の基準がクリアランスレベルであり、これ以下の物は廃棄物として処分したり再利用したりできる。」

(3)放射性物質の廃棄物処理法適用除外規定との関係

 廃棄物処理法は、放射性物質を適用除外にしています。(2条)。では、ここに言う放射性物質に該当するかどうかは、どのように決められるのでしょうか? それがクリアランスレベル制度の導入によって、法律上明確になりました。クリアランスレベル以下の物は放射性物質に該当しない(廃棄物扱いできる)。それ以上は該当する(廃棄物扱いできない)ということです。基準は100ベクレルということになったわけです。

2 では、汚染対処特措法の8000ベクレルとは何だ

福島第一原発事故によって発生した放射能汚染ゴミ(「事故由来放射性物質で汚染された物」)を廃棄物として処理できる基準です。福島第一原発事故による汚染にだけ適用される「汚染対処特措法」が制定され、廃棄物として処分できるようになりました。すごく長い名前の法律です。(注5)

 汚染対処特措法は、省令で定める範囲で、事故由来放射性物質で汚染された物を廃棄物処理法の適用除外の例外として処分できることにしました。(汚染対処特措法22条)。環境省は省令で一般廃棄物や産業廃棄物として処分できる基準をキログラム当たり8000ベクレルとしました。(注6)

 8000ベクレルとした根拠について、環境省は、周辺住民や作業者は年1ミリシーベルトの被曝を超えないし、処分施設管理期間終了後は10マイクロシーベルトを超えないことになるから問題なし、と説明しています。

3 基準が二つできてしまった!

 クリアランス制度は、「放射性物質として扱う必要がないもの」で、ゴミ扱いできる基準は100ベクレルでした。汚染対処特措法では、ゴミ扱いできる基準は8000ベクレルです。ゴミ扱いできる基準がふたつできてしまいました。80倍の違いがあります。

 多くの人々から「ダブルスタンダードだ」という声があがりました。

 環境省の公務員は、説明しなければならなくなりました。どうしたか?

 クリアランスレベルの意味を、これまでとは変えて説明することにしてしまいました。

*従来のクリアランスレベル100Bqの意味=「放射性物質として扱う必要のないもの」だ。ゴミとして捨てることも資材として再利用することもできる。

*汚染対処特措法制定後に言い出した意味=原発内で使われたコンクリートや金属をリサイクル(再利用)するための基準だ。

 放射性物質として扱う必要があるか否かという基準を、リサイクル利用できるかどうかの基準という、違う意味に変えてしまったのです。だから汚染ゴミの8000ベクレルとは別でダブルスタンダードではない、と言い張っているわけです。

 原発施設内では100ベクレルを超えれば放射性物質なのに、一般の人の住むところでは8000ベクレルまでは放射性物質ではないということです。しかし同じゴミです。これは、どうがんばっても無理な説明です。ダブルスタンダードです。

4 将来8000ベクレル安全論が一般化するおそれ

8000まで安全なら100にこだわる必要なんか無い。8000に合わせて一本にすれば矛盾も解消する。そうすれば、原発でたまっている廃棄物を一般ゴミにして一挙に解決できる。このような流れになる可能性があります。

行政の説明の仕方に注意しましょう。

① 8000ベクレルまでは安全だからゴミとして処分する。

② 安全ではないがやむを得ず8000ベクレルまではゴミとして処分する。

 国の立場はです。8000ベクレルが高いだけでなく、国の説明には大きな問題があるのです。この立場に立つと一般化に道を開くことができるからです。

5 クリアランス制度と公害規制

 クリアランス制度にリンクさせ事故由来廃棄物の公害規制を述べておきます。基本中の基本だけです。(注7)

①事故由来廃棄物に廃棄物処理法を適用しようとしまいと、100ベクレルを基準に放射性物質による汚染ゴミかどうかを分け「分別処理」する。

②100超の放射能汚染ゴミは、廃棄物処理法の一般廃棄物、産業廃棄物との混合処分を禁じる。

③希釈・拡散政策を集約管理政策に転換する。

④原則焼却禁止

⑤管理・処分施設に対する大気汚染、水質汚濁、土壌汚染の規制法整備(規制基準、環境基準、罰則など)

⑥管理処分施設の立地基準整備(居住地、水源地からの距離など)

⑦常時監視(定期は不可)

⑧自治体の権限明確化(上乗せ条例、立入検査権、改善命令など)

 

注1 ATOMICA(原子力百科事典)<タイトル>放射性廃棄物としての規制免除についての考え方。なお、ATOMICAは科技庁の委託事業で始められたネット公開のデータベースです。関連事項にもアクセスできるので使い慣れると便利です。

注2 電事連ネット版「クリアランスの安全性-クリアランス制度」より

注3 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)この法律は「廃棄物処理法」とか「廃掃法」と略称されることがあります。前身は「清掃法」です。

注4 発電用原子炉施設等を対象とする放射能濃度の具体的基準例 「精錬事業等における工場等において用いた資材その他の物に含まれる放射性物質の放射能濃度についての確認等に関する規則」の別表第133核種の記載あり)。

注5 正式名称「平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(2011年8月26日成立)。

注6 汚染対処特措法と廃棄物処理法の適用関係は、例外の例外規定が重なるなど判読が難しい構成になっています。ネット公開中の「放射能汚染防止法制定運動ガイドブック」(10-02)で整理してあります。

注7 事故由来廃棄物問題は、森林や土壌汚染の実態を踏まえ、居住制限とリンクした長期の展望が必要です。

 半減期約30年のセシウム137で放射能の自然減衰を大雑把に考えると、200年で約100分の18000ベクレル→80Bq)、300年で約1000分の18000Bq→8Bq10Bq→100Bq)です。現在の20ミリシーベルト政策と表裏をなす8000ベクレル政策には、「安全とみなす」ことによって自然減衰の壁を越えようとするもので、無理があります。この無理は被害を無いことにするもので、公害隠蔽政策です。

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