弁護士山本行雄 情報提供 札幌弁護士会所属

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よくある質問(法令解説2):環境基本法は、被災者救済にとって無意味なプログラム規定か

2017-06-19 20:56:39 | 放射能汚染防止法制定運動

 

<記事の複写配付自由です。「制定しよう放射能汚染防止法」と合わせてご活用ください。>


よくある質問(法令解説2

<環境基本法は、被災者救済にとって無意味な単なるプログラム規定か>

Q 「基本法」という名前の付いた法律が適用になったからといって、被災者にとっては意味があるのか? 「基本法」と名前が付いているように,「プログラム規定」とかいう単なる理念規定で、意味のないものではないのか?何もないゼロからの出発ではないのか?

(関連質問:「環境基本法」は公害規制とどんな関係があるのか。報道でさえ無視、軽視している。そんなものに意味があるのか。など)

 

A ゼロからの出発ではありません。

 旧公害対策基本法を引き継いだ環境基本法について「単なるプログラム規定」と理解するのは誤りです。国が何をしなければならないか、基本的事項を記載した法律です。この法律は、国の公害被害者救済措置責任を定めていますし、環境基準はこの法律が直接の根拠法になっています。規制基準についても基本的な方向性を定めています。単なる理念規定などではありません。

公害国会当時、多くの国民が具体的なイメージで捉えていたものです。「プログラム規定=単なる理念規定=無意味」と、過去の国民が獲得した法制度を無意味にするような発想に陥らないようにしましょう。

 

 以下に「制定しよう 放射能汚染防止法」の被害者救済の関係部分を引用しておきます。

 (体裁、レイアウト,表現の一部を変えてあります。)

やや長めです。

<引用開始

 

国の責任 その1

環境基本法に基づく公害被害者救済責任

 

環境基本法の改正の意味について、最初に押さえておきたいことを略図的にまとめました。簡単な内容です。しかし、すごく重要です。

 

環境基本法13条放射性物質適用除外規定削除=環境基本法適用=法整備はゼロからの出発?

 

ゼロからの出発だと、国が何をするかは、何も決まっていないことになります。しかし、そうではありません。

 

環境基本法13条放射性物質適用除外規定削除=国が何をしなければならないかの基本的事項は環境基本法に書いてある。

 

原子力公害の被害者である被災者に対して、国が果たさなければならない基本的な事項は環境基本法に書いてあるのです。

(中略)

以下に、国が行わなければならない事項を整理しておきます。要望書などを出す場合、法律上の根拠として引用できます。

 

① 国の基本的責務=総合的施策策定責任

環境基本法6条は、「環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する」と定めています。この「環境の保全」には、公害から人や自然環境を守ることが含まれます。国は、公害から人や環境を守るための施策を策定実施する責任があるのです。

 

② 人の健康と生活環境が保全されるように実施する責任

この施策は「人の健康が保護され」「生活環境が保全され」るように行うことになっています。(環境基本法14条)

「人の健康保護」「生活環境の保全」は、旧公害対策基本法第1条の目的規定を承継したものです。

 

③ 被害者救済措置の責任

公害によって被害を受けた場合の救済についても「国は、公害に係る被害の救済のための措置の円滑な実施を図るため、必要な措置を講じなければならない」と定めています。(環境基本法31条2項)

公害被害の救済措置は広範囲に及びます。現行法上、公害健康被害補償法による公害健康被害者認定制度や補償給付金制度、公害保健福祉事業、水俣病認定などの制度があります。大気汚染防止法等による無過失賠償責任などもこの「必要な措置」になります。

放射能汚染被害については、その被害の特性に応じて「必要な措置」を制度的に保障しなければならないのです。

 

④ 法制上財政上の措置責任

更に、法整備と財政措置については「政府は、環境の保全に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上その他の措置を講じなければならない。」と定めています。(環境基本法11条)

この規定は、政府が環境の保全に関する施策(公害対策を含む)に必要な法案提出や具体的な政策実施の責任があることを定めたものです。

 

⑤ 生存権の確保に基礎を置いて施策を実施する責任

環境基本法1条は、国が、これらの施策を行わなければならない理由について「国民の健康で文化的な生活の確保」としています。これは憲法25条が保障する生存権のことです。

憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」としています。その意味は、「人間としての尊厳が保たれる生活」のことです。

放射能汚染は公害です。旧公害基本法を引き継いだ環境基本法が、第1条の目的規定に、この生存権を掲げ、公害から人間の尊厳を守ろうとしているのです。公害被害者らが、差別と偏見に抗して法を生み出した意味をしっかりとらえておきましょう。

 

このように、放射性物質が法律上公害原因物質に位置づけられたと言うことは、法整備は一から始まるのではないことを意味します。環境基本法の適用により、公害国会で形成された土台となる法律は「すでに適用になった」ということです。

 被災者は、このような、しっかりした土台の 上に立って国、自治体、東電に責任を果たすよう要求できる立場なのです。

国や自治体は、このような被災者の権利を尊重して施策を講じる法律上の義務があります。

国の責任 その2

国策として原発を推進してきた加害者責

 

原発は、国が国策として推進してきた責任があります。国の責任について触れた法令があります。

福島復興再生特別措置法
1条 この法律は、これまで原子力災害により深刻かつ多大な被害を受けた福島の復興及び再生が、その置かれた特殊な諸事情と原子力政策を推進してきたことに伴う国の社会的な責任を踏まえて行われるべきものであることに鑑み(略)

 

汚染対処特措法

1条 国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることに鑑み、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関し、必要な措置を講ずるものとする。

 

この「社会的責任」は、立法に際し、国の責任に触れないわけにはいかないものの、国に法的責任が及ばないように「法的責任ではない社会的責任」の意味で入れた可能性があります。しかし、公害という法的観点から見れば、それは正に加害者責任です。国の公害被害者の法的救済責任に波及するのは当然です。法整備運動の手がかりになります。

 

 <引用終わり ↑>

 

前橋地裁判決

 2017317日の前橋地裁判決は、福島第一原発の事故が安全確保について,国が注意義務を怠ったので、事故が起きたと結論づけています。国は事故を起こした当事者であると認定したのです。公害という法律分野から見れば、国の加害者責任をストレートに認めたことになります。国が公害企業と同じ立場で,被災者に対する加害者責任を果たさなければならないとうことになります。

 

以上のように、国には環境基本法が定める責任と、原発政策を推進してきたという二重の責任があります。

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