ビバ!風俗!!さらば愛しき風俗マン生活~2chでも連載中~

某一流自動車メーカーを退職して、風俗マンに。華やかに見える世界も働いてみてわかる苦渋と舞台裏。そしてすさんだ人間関係。

(続)先が見えない風俗従業員

2007-03-22 01:17:39 | ビバ!風俗!!さらば愛しき風俗マン生活
ある日、自分が繁華街を歩いているとみすぼらしい格好をした風俗従業員が
ほうきで道端を掃除していた。掃除していたところは当然働く店の前で
その看板に目をやると40分総額8000円とデカデカと宣伝が打ってあった。
店構えは金額からもわかるように激安店で、言い方は悪いが金額の安さだけが
売りの店といった雰囲気だった。けして激安店が悪いわけではないが、
大体働いている嬢は若い嬢の店では働けずに流れてきた嬢が多い。

平均年齢は30台半ば~40台と言ったところか。サービスも金額から
わかるように手抜きサービスが多い。また業界すれした嬢が多いことから
風俗で売れる要因の1つ「癒し」などを求めるのは間違いで、ただ単に
抜いて終わりっという店だ。安く抜きたいと思うお客には良いかもしれないが、
それ以外の物を求めてお金を払う人にはけして受け入れられない店だ。

話は少しずれるが、業界すれした嬢というのは本当に嫌になる。
実際、面接などで何人もそういった嬢と接したが基本的にやる気がないのだ。
面接の時点で色々と聞くが受け答えは適当、こちらの都合でやむなく採用して、
お客に紹介するためのプロフィールを確認してもうんともすんとも言わない。

店で使用する名前をどうする?と聞いても「何でもいい。」、
3サイズを聞いても「わからない。」性感帯は「あまり触られたくないから
背中とか首筋でいい。」とか得意プレイは「そちらで考えてください。」と
まったくやる気がないのでどうしようもない。
そんな状況だからお客がつかない(つけないが本当は正しい)、
つけてもアンケートは最悪。だから稼げないのは当然だか、その理由を
自分の事は棚に上げ、全て店のせいにしてしまうから性質が悪い。
まあ、そういう嬢は店側で嬢の数が確保できたり、繁忙期をすぎれば、
真っ先にリストラされるのだが…。

「こんな店、客なんて本当に入るのかよ。」
と思っていると、掃除をしていた従業員が顔を上げ、こちらに目をやる。
思わず、自分は「あっ!!」と声を上げると向こうもこちらに気づいたらしく、
ニヤっと笑顔で返してきた。その人のトレードマーク?とも言える
何本か抜けた歯は相変わらずだ。

「何やってんの!!支配人!!」

そうみすぼらしい格好をした従業員は以前自分が働いていた店で
支配人の役職をもらっていた人間だった。当然給料も100万近く
もらっており、社長の次に力を持っていた人だ。

どうしていいかわからずにいると、向こうから気軽に話し掛けてきた。
その話しぶりにはまったく気まずさを感じている様子もない。
昔からこの図太さは変わらない。「久し振りだね、今何してんの?」と
胡散臭い笑顔の後、「あれから色々とあってね…。」と昔話を話始めた。



(ブログ編)第1話 先が見えない風俗従業員

2007-03-19 23:34:05 | ビバ!風俗!!さらば愛しき風俗マン生活
風俗の従業員は色々訳ありな人間が多いのは確かだ。

泊まる所もなく、その日を暮らす金も持たなくて
風俗で働く人間も少なくはない。そんな人間の働く店は当然限定され
店で泊まる事ができ、日払いも支給される店になる。

風俗店のほとんどは日払いの支給は当然で寮完備の店も多い。
だが寮完備の店のほとんどは採用年齢を30歳までと制限があったり、
身元が保証できる人間でないと採用しない店がほとんどだ。
泊まる当てもなく、その日暮らしていく金も持たない人間が
身元を保証できるわけもなく、ある程度環境の整った店で
採用されるわけもない。だからそれ以外でやっていける店となると
それこそ環境は最悪だ。朝から晩まで通しで休みは無し、しかも冬も
夏もずっと外に立ちっぱなし。給料は日給に直すと5000円程。
そんな店からすると風営法なんてあってないようなものだ。

当然店も繁盛するわけもない上に従業員は売上金を持って
夜逃げが相次ぐ。何十年前の風俗店だと思うかも知れないが
まだそんな店は存在する。そんな従業員がビルの階段に腰掛けて
コンビニで買った牛丼を食べている。通りかかった自分に気づいたのか
座ったまま、挨拶する。挨拶すると言っても割り箸を持った右手を
上げるだけだが…。仕方なくこちらも会釈するが、こいつとは
正直親しくもなければ、特に仕事で利害関係があるという関係でもない。

ある日、向こうから「暇ですね、最近どうですか?」なんて
話しかけてきたから「ぼちぼちかな。」と適当に返事したら
その後も顔を合わせるたびに声を掛ける様になってきた。
その内、嬢の在籍数や1日入っている客数などこちらの情報を聞き出そうと
してきたので正直うざいと感じていた。上の人間からも必要最小限の
挨拶だけして、会話はしないように指示されていた。

その数日後、その従業員が働く店が営業時間になっても
開店していなかった。しばらくすると作業着を着て人間がバールで
店の扉をこじ開け始めた。要するにあの従業員を含めた全従業員が
一致団結?して売上金を持って、とんだのだ。
ご丁寧に鍵まで持っていったらしい。でも所詮売上金を持っていっても
大して入っていない店だから雀の涙だろうと心の中で思ったのと、
もうあの従業員の顔を見なくていいと思うと少し気が楽になった。

何故気が楽になったかと言うと当時うちの店では
「俺達も将来あんなになるのかな」なんて笑い話で話していたが、
心の中では将来性のないこの業界を不安に思って、多少なりとも
ダブらせていたかも知れない。その時自分はまだ20代半ばでそんな気持ちは
少なかったが、自分の部下のほとんどは皆30前後で自分よりも
強く思っていたようだ。

そんな話を店長に話すと
「子供生んで、面倒見てもらえばいいんだよ。」
とさらりと一言返って来て、ある意味この人は幸せなのかもしれないと思った。

そして数年後、自分の知っている人間がそういった従業員になっているとは
心にも思わなかった。


中書き

2006-08-15 23:57:59 | ビバ!風俗!!さらば愛しき風俗マン生活
ここまで読んでくださった皆さんありがとうございます。

2ちゃんねるで掲載させていただいたものは一旦終了しました。
ただ2ちゃんねるでも掲載させていただきましたが、1スレで
完結しなかった分に関してはブログで掲載させていただくことを
約束させていただいております。

その事から今後も継続していきたい気持ちはありますが、
今私は仕事が忙しく、中々更新できないのとブログを更新する時間が
あるなら体を休めたいという気持ちが本音です。
その為これまで通り1日毎の更新は気持ち的にも時間的にも不可能です。
少し落ち着いてから更新を開始する予定ですので、読んでくださった皆さんも
時間に都合があったときにこのブログにお越しいただければと思います。

ひとまず、ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました。

第39話 ビバ風俗

2006-08-12 22:07:10 | ビバ!風俗!!さらば愛しき風俗マン生活
しばらくして、店長が出勤してきた。
「珍しく早いですね。」と聞くと、「MGも早いじゃない。主任から連絡が
あったでしょ。まったく最後まで何考えているかわからなかったね、彼は。」
と愚痴をこぼし始めた。店長の話を聞くと主任の退職には裏があった。
主任は前日に店長から事務室に呼ばれてこってりしぼられたそうだ。
自分はその事は、定休だったので始めて知った。
何故こってりしぼられたかと言うと、ある嬢から色々と店長に主任の態度に
関して密告があったそうだ。その嬢は前にも上げた主任の事を嫌っていた嬢だ。
内容は自分の事を口説いてくるといった内容だったそうだ。ただ店長としても
本当にそういった行為に及んだかは、はっきりとした事実が無いが
そういう話が出てくる事という事は、主任の店内での言動や行動に
問題があるのでは、という旨を注意した。
役職者という事と事実がはっきりしないので、一回目は厳重注意で
すましたつもりだったが、プライドの高い主任としては、存在すら
認めたくない店長にそんな事を言われるのが耐えられず、飛んだのだろう。
またどうやら主任が自分に言った「店長には言ってあるから。~」というのは
嘘で、店を出てしばらくしてから連絡をしたようで、最後の最後まで
主任らしかった。

この後、主任はしばらく家業を手伝っていたが、ある時期に
見切りをつけて、また風俗業界で働き始めることになる。
別れた彼女ともよりを戻したそうだ。


Siさんも出勤してきて、その話題で持ちきりになった。
ここ最近入ってきた従業員も数日前に飛んでおり、従業員の数も
少なく、自分もその日はフロアにいた。

「やっぱりあの嬢は苦手ですよ。」

「ですよね、何かお高くとまってる印象がありますよね。」

なんて会話が従業員間でなされていると、個室から内線が鳴った。
噂をしていた嬢がサービスを終えて出てくるのだ。

「ありがとうございました。」

と一声にお客に向かって頭を下げる。お客を見送った後、必ず従業員の
誰かが個室掃除に行くのだが、誰も行こうとしない。

「MG、お願いします!!」

Siさんが半分冗談めかして行ってきたので、仕方ないなと思いながら
自分が個室掃除に行く。正直Siさんにああいう態度を取られると
逆らえないところがある。

数枚のタオルを抱えて、廊下を歩く。

店長、辞めていったMGと主任。
この3人から主に自分は風俗という物を直接学んだ。「今ではもう店長1人か。」と
少し哀愁に浸りながら、久し振りに個室掃除に行った。
そこには主任の退職のきっかけとなった嬢がタオルを丸めていた。
「おつかれさん。」と声を掛けると
「あ、珍しいね。」といつもはクールに気取っている嬢が笑顔で返す。

自分:ああ、たまにはな。色々と大変だったでしょう。

嬢:ね、今晩暇?飲みに行こうよ。

自分:また?いいよ、付き合うよ。

と言って、嬢を抱きしめた。

そう自分とこの嬢はできていたのだ。しかもこの嬢が入店してすぐに。
風俗の従業員は嫌いと言われたが、何故か自分とは馬が合った。
当時付き合っていた男と別れたばかりというのもあるだろう。
正直主任の退職には自分にもある程度責任があるのだ。申し訳ないと
いう気持ちもあるが、目の上のたんこぶがいなくなったという気持ちもある。

個室掃除を終えてフロアに戻る。
従業員達も主任が辞めた事を寂しがっている感がある。
「主任何するんですかね?」「他の店に行くんじゃない。」と言った会話の中
「MGはずっと風俗に居そうですよね。何か適職って感じですよ。」と言われた。

自分は店長、MG、主任から風俗を学んだが、こいつらも自分を見て
風俗を学んでいるのかも、自分ははもしかしたら風俗に完璧に浸ってるのかも知れない。
もし知り合いが風俗で働くなんて相談されたら「人間じゃなくなるからやめとけ」
なんて言うのかな、なんて考えていると

「無いとは思いますけどMGが辞めたら何をしますか?」

とSiさんが聞いてきたので、少し考えて

「この業界ネタだらけだから、本でも出したいかな。
ビバ!風俗!!なんてタイトルで。」


あまりのくだらなさにフロアに笑い声が広がった。


          2ちゃん編 完

第38話 主任の退職

2006-08-11 21:57:33 | ビバ!風俗!!さらば愛しき風俗マン生活
主任が涙を流している。鼻をすすっている。
どうやら本命の彼女に仕事中に振られたそうだ。それを
一目もはばからず嬢の控え室で座り込んで、嬢にこぼしている。
主任の本命の彼女は一般人だった。ちなみに風俗従業員の
付き合う女は当然の如く風俗嬢が多い。

まあ、主任は店の中で付き合っている嬢も2、3人いたが
所詮は金を引っ張るための道具としか見ていなかったし、
心の拠所はもちろん彼女だけだ。日頃から強がって、
プライドも高い主任が人前で泣くなんてよっぽど
ショックだったのだろう。

一方のそんな主任の相手をさせられている嬢は
あからさまに嫌な顔をしている。この嬢は、ルックスは
間違いなく店で1番良かったのに出勤が悪かった。
昼間はOLをして、終わった時間に出勤するタイプ
なのだが、自分で申請した週4出勤のシフトを平気で
破った上で、週1出勤が定着しつつあった。

店側も何も言わなかったのは店長の大のお気に入りで、
本人もそれを承知の上でそのような態度を取っていたし、
自分が気に入られているのを知っており、何かあった時の
為に店長には愛想良くしていた。しかし、裏では色々と
経営センスが無いなど陰口を言っていたのだが・・・。
ようするに店長よりもこの嬢の方が一枚上手だった。

今思うと顔、スタイル共に元AV女優の高樹マリアに似ていた。
自分が風俗から身を引いたときに、恥ずかしながらレンタルビデオの
AVコーナーであまりにも似ていたのでパッケージとしばらく
にらめっこした程だ。結局本人かどうかわからず、後日DVDを
購入してしまった。(当時この嬢も既に風俗業界から身を引いていたので、
もしかしたらAVの世界に転向したと本当に思った)

また性格も、好き嫌いがはっきりしており、思ったことをそのまま
口にするタイプだった。例えば、以前自分がこの嬢と個室掃除を
しながら、会話をしていると

嬢:○○ちゃん(ある嬢の名前)、ほくろが無い方がいいと思うんだ。
  だから整形したらって、言って上げた方が良いと思うんだ。
  だから私が言ってあげるつもり。

自分:(焦って)いやいや、待て待て。そんな事言われたら本人傷つくかも
   知れないだろ。

嬢:だから私が言ったら大丈夫だと思うの。

自分:いや、悪いところってのは本人も気にしてるし、誰から
  言われるよりも本人が一番分かってるって。

嬢:ふ~ん、そんなものかな。

この時の会話だけではなく、他にも何故ここまで自信過剰な発言ができるか
わからなかったが、本人もルックスにはかなり自信を持っていたようだ。

主任の涙の裏にはきっと同情を引いて、何とか物にしようと
いう考えがあったのだろう。ただどう見ても早番でつきあっている
嬢とはタイプが違うし、そもそもこの嬢は主任の事をえらく嫌っていた。
いや、そもそも風俗の従業員をえらく嫌っていたという方が正しい。
まあその中でも主任の事はすごく嫌いだったそうだ。

その主任が数日後にとんだ。突然だった。
自分の携帯に電話が入って、「すぐ店にきてほしい。」と言われたので
何事かと思い、店に顔を出すと同時に、

「君とは色々あったけど楽しかったよ。はい、これ餞別。」

とその時腕にしていた時計を手渡してきた。

「あ、どうも。」

立場は自分が上なのだが、そんな事も忘れて素で返してしまった。
話を聞くと家業を手伝う為に辞めるそうだが、突然すぎないかとも
思った。

「店長には言ってあるから。じゃ、色々世話になったね。
Siさんにもよろしく言っといてよ。」

一言言い残して、店を出て行った。店の入り口から主任の姿が
見えなくなるまで、見送った。主任も2、3度振り返って
手を振る。MGの時の様に悲しい気持ちにはならなかったが
しばらく寂しさが心の中に残った。

第37話 風俗従業員の老後

2006-08-10 00:10:08 | ビバ!風俗!!さらば愛しき風俗マン生活
事務室で店長と雑誌を見ている。
見ている雑誌はもちろん風俗誌、ページは特集で組まれていた
各店舗の紹介ページ。そのページには店の紹介と共に
男子従業員が1人ずつ写真つきで掲載されていた。

よくこんなのに出るなとも思いながら、軽い気持ちで
店長に話しかけた。

自分:何か写真の人たちって、皆30より上ですよね。

店長:うん、そうだね。多分皆店長クラスじゃないと思うよ。
   目的持たずにやってるといろんな店を移って、いつまでも
   平の従業員なんだよね。嬢も従業員も目的意識持たないと
   意味無いよね、この世界。

自分:ちょっと聞きたいんですけど、この業界ってある意味
   下からの突き上げがきついじゃないですか。でも上の立場の
   人間はいつまでもその地位にいる。いや、悪い意味じゃなくて
   人材が揃っていて、という意味ですよ。そういう場合って
   下で頑張っている人間はどうなるんですかね?

と何気なく風俗誌のページを捲りながら、前から気になっていたことを
聞いてみた。

店長:グループによっても違うけどね、給料上げるだけの所もあるし、
   上の人間を辞めさせる所もあるよ。上の人間を辞めさせるのは
   どうかと思うんだけど、それがそのグループの慣習みたいな物
   で仕方ないって本人も言ってたよ。

自分:そうなんですか、何か頑張ってるのに報われないですね。
   もう1ついいですか?普通の企業と違って、退職金なんて
   ありませんよね、老後の事とか考えた事あります?

店長:ははは、さすがサラリーマン出だね。
   不安がないと言えば嘘になるけど、保険会社とかも
   あるし、最悪子供生んで面倒見てもらうしかないでしょ。

自分:・・・そうですか・・・

事務室から出て、先の店長の言葉が悪い意味で心に残った。
「最悪子供を生んで面倒見てもらうしか・・・」なんて考え込んで
フロアを見回すと従業員がえらく少ない。

Siさん:2人程休憩に入って、2時間ほど戻ってきません。

・・・そうですか・・・

・・・とんだよね・・・

(続) 従業員の寮での出来事

2006-08-09 16:59:00 | ビバ!風俗!!さらば愛しき風俗マン生活
階段を上って、部屋の前につく。少し懐かしい気分になる、ここは前に自分が
住んでいた場所でもある。店長が何度か呼び鈴を鳴らすが反応は無い。
持ってきた鍵で扉を開けると、店長が先に入れと目で合図をしてきた。

「おいおい、これ前と同じだぞ。」と内心思いながら、中に入る。
明かりが風呂場から漏れている。その先は真っ暗だ。頭に嫌な予感が
よぎった。まさかドラマみたいに自殺なんてしてないよな。
「○○さ~ん(従業員の名前)」と少し力無い声で名前を呼んだ。
正直自殺しているイメージが頭に浮かんで、びびっていた。

風呂場の扉を開けると蛇口から風呂桶に溜めたお湯に水滴が落ちる音が
ピチョン、ピチョンと聞こえてくる。「本当にドラマのワンシーンかよ。」と
びびっている自分は風呂場を覗き込む前に玄関の方に目をやった。
店長はまだ玄関から一歩も動いてない。動こうともしない。
結局、俺かと思いながら風呂場を覗き込むと誰もいない。
ホッとした。じゃあ、後は部屋だけか。ということで
部屋の扉を開けようとしたが、また悪いイメージが頭に浮かんだ。

もしかして暗闇にまぎれて潜んでいたらと思うと部屋に通じる
扉を開ける手も止まった。何を考えているかわからないタイプでは
あったが、ストレスをためこむタイプなのはわかっていた。
もしも刺されたらなんて思いながら、再度玄関に振り向くと、
まだ店長は動こうとしない。
「しょ~がねぇ~な~」と勢いを付けてと扉を開ける。
部屋は真っ暗だが、誰かいる気配はなかった。扉の横のスイッチを
入れ、明かりをつける。明かりがついたのと同時にホッとした
気持ちが広がった。誰もいない。後は押入れなどを開けて、
中を確認するが何もなかった。自分の気持ちは今までの悪い
イメージが消えて、晴れやかな気持ちになっていった。

「店長、誰もいないっすよ。」と玄関に向かって言うと、
一直線に部屋に入ってきた。店長も部屋を見回す、自分は
床に置いてあったエロ本を見ている。「やっぱ飛んだのですかね。」
と言いながら、エロ本をパラパラと捲っていると、ベランダで
スッと動く影が目に入った。エロ本を捲る手が止まって、
思い切って、窓を開けた。

「うあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

思わず、叫んでしまった。店長も慌てて、こちらを見る。

「いいから降りろ、いいから降りろ。何もしないから降りろ。」
ただひたすら降りろと言い続ける自分。店長もさすがに焦った顔で
窓際までやって来た。

そこにはベランダによじ登って、今にもどこかに飛び移ろうと周りを
伺っている全裸で布団を抱えた従業員が自分と店長に背中を向けていた。
何度も降りるよう言っても言う事をきかないので、力ずくで降ろす。

「何やってんだ、お前!!」と自分が言うよりも先に店長が怒声を上げた。
「いや、体調が悪くて・・・。」と意味不明な返しをする従業員。
更に怒りが増す店長、その光景はしばらく続く。

数十分後、店長と自分、従業員の3人は寮から出て、道端にいた。
「じゃあ、頑張ってね。」と店長は従業員から寮の鍵を取り上げて、
そう告げた。その場から立ち去る店長と自分、布団を抱えてその場に
立ち尽くす従業員。「少し可哀想じゃないですか?」と自分が言うと
「そう?でも先は本当にびっくりしたね。」と店長は答えるだけだった。

数時間後、店の営業を終えて店長と再度2人で寮周辺を見回るが
その従業員の姿はなかった。

「・・・なんて従業員がいてよ、まったく漫画かって言うの本当に。」

話し終えて同級生を見ると既にドン引きだった。

「お待たせしました。」と居酒屋の店員が代えの酒を持ってきた。
焼酎のお湯割りを口にして、この後もしばらくお互いの事を
話し合った。会計は珍しく割り勘で、「割り勘もいいもんだな。」と
思っていた。役職が付いてからはほとんど奢る側で割り勘なんて
なかったからだ。中にはつり銭を受け取らなかったことも度々あった。
部下の前でかっこつけているのもあるが、自分が下っ端だった時は
そういう光景を見せられ、いつかは俺も、なんて思ったものだ。


帰り道、同級生が「お前、風俗辞めたら、絶対連絡してこいよ。
その時は奢らせてくれ。」と言われたのは何か嬉しかった。

第36話 従業員の寮での出来事

2006-08-07 01:18:50 | ビバ!風俗!!さらば愛しき風俗マン生活

久し振りに高校の同級生と居酒屋チェーン店で飲んでいる。
いつもはちょっと値段が高めの店で飲むから、こういう店も新鮮味があって
たまにはいい、何より一般人と一緒に飲むのは久方ぶりで昔の話にも華が咲く。
酒が進むに連れて、同級生は「お前このままでいいのか?」なんて話を
してくる。風俗以外の人間と飲むと決まって出てくる話題だ。
気遣いは非常にありがたいが、20代半ばで月で40万超える額をもらっているし、
自分は辞める気など更々なかった。「将来は大丈夫なのか?」なんて話も
されるが、この年で将来の事など考える気などなかった。
何よりも一緒に働いている人間達が面白い。人生の底辺を味わっている人間と
ここまで接する機会もない。申し訳ないとは思うが、一般社会でここまで面白い
人間達と出会う機会などそうはないし、この業界を経験していると同年代の
人間達が子供に見えてしまう。
それを伝えると「確かにそうかもしれないけど…。」と口を噤む。
「この前もな、面白い従業員がいてよ、漫画みたいな話なんだよ。」
と自分は少し酔った口調でその話を語り始めた。

依然働いていた従業員でMという従業員を覚えているだろうか。
国立大出身だったが、性欲の塊のような人間で身を滅ぼしかけていた人間だ。
身なりはその従業員にそっくりで、Siさんも「本当に似ている。」と
言うほど似ていた。仕事振りは物覚えが悪いというか、物忘れが
激しいというか、ともかく記憶力が著しく乏しかった。わかりやすく言うと
仕事内容が1~50あるとする。最初に1~10を教え、それを反復させる。
1~10の仕事ぶりに問題が無い事を確認してから、11~20の仕事を教えると
1~10の仕事がまったくできなくなる、忘れるといった方が正しいのか。
仕方なく、また1~10の仕事を教えると11~20の仕事ができなくなる。
また11~20の仕事を教えると1~10が抜ける・・・。仕事といっても
タオル畳み、個室掃除、接客など簡単な事なのに、まったく使い物に
ならなかった。寮に入れていたこともあり、すぐには首にはせず1月程
様子を見ていたが、まったく進歩する様子もなく、月末を迎えた。
月末は給料日である。確か初任給(日払いは毎日貰っていた)で布団を
買いに行くと言っていたのを覚えている。布団を買うぐらいだからよっぽど
身寄りもなく、金にも不自由していたのかも知れない。

そんな従業員の仕事ぶりにSiさんが始めて人前で切れたのだ。
元々感情的な人間が多い中で、常に自分の立場を弁えて、会話の中でも
社会的道徳を感じさせる常識人であったSiさんには店長や嬢、
性格の悪い主任でさえ、一目置く存在であったし、自分も店の中では
一番信頼していた存在でもあった。その人が切れたのだから、よほどの事だ。


何度も何度も同じ事を注意して、いい加減嫌になったのだろう。
まあ確かにトイレ掃除も何回言っても綺麗に掃除できないし、
タオルも綺麗に畳む事ができないのだからSiさんが切れるのもわかる。
しかしそのSiさんに対して平気で背中を向けて、個室掃除に行く
従業員もすごかったが・・・。

Siさんが切れた翌日と翌々日連絡もなく、その従業員は出社してこなかった。
「また飛んだか。」という気持ちと「辞めてくれて、せいせいする。」という気持ちが
フロア中に漂っていると、店長が「寮見てくるよ。」と寮の鍵を持って出て行った。

その数分後、店の電話が鳴る。

「MG、店長がいますぐ来てくれって言っていますけど・・・。」


仕方なく、寮へ向かうと道中店長が立ち止まっていた。
「どうしました?」と確認すると視線を寮へ向ける。
「いや、ここからずっと見てたんだけどね、誰かいる気がするんだよ。」と
言い終えると、寮へ足を向けた。

「何か前にも同じ事があったな。」と思いながら店長の後を付いて行った。

(続:2)マナーの悪い客とのトラブル

2006-08-03 17:46:00 | ビバ!風俗!!さらば愛しき風俗マン生活
「空いてる個室ある?」とSiさんに確認すると
「3号室が空いてますよ。」と言われたので
ひとまずその部屋に男を入れた。

「靴脱いで、待っとれ。」と一言残し、フロアに戻る。
現場に連れて行った2名の従業員に念の為見張って
おくように指示を出す。

その間、店長に連絡を取り報告する。
店長からはもし看板に何かあった時の為に連絡先だけは
必ず聞くように、そして既に目に見える形で
看板が損傷していた場合は警察を呼んでも構わないと
指示をもらった。その後、看板を確認しに行くと
隣の店の店舗の従業員が「ここらへんを蹴ってましたよ。」と
声を掛けてきた。よく見るとアクリル部分にうっすらと
靴跡がついていたが損傷などはなかった。「ありがとう。」と
一言残して、個室に戻った。個室に戻ると学生は正座で
床に座っていた。いや、座らされていた。
「こんな指示出してないのに…、まったく。」
と内心思ったが、お客もかなりの数上がってきているので
早めにこの件を終わらせたかった自分は
「確認してきたけど、蹴ってたね。やっぱり。」

しばらく沈黙の後、
「…すいませんでした。」と震える声で謝罪してきた。
もう既に涙が目に浮かんでいた。
「実際に蹴られた箇所見てきたけど、別に特に何もなかったから
いいけど、念の為に連絡先だけ聞いとくわ。
ただ本当に何もなかったら連絡はしないから安心しな。」
と言うと素直に免許証を出してきたので、その場にいた従業員に
コピーに走らせた。電話番号も控えてひとまず一段落ついた。

「あと悪いけど、ここの個室の使用料1万な。」と言うと
素直に財布から1万円札を自分に手渡してきた。

その後、この学生を連れて店の外に出ると
連れの学生達が待っていたので看板を蹴った事を認めたことを
伝え、その場で全員頭を下げさせて、この件は幕を閉じた。

数日後、同じグループの幹部にその話を振られた際に
このような事を言われた。

「いや~、おやさしいですね。うちらでしたら、即その場で…。」

「さすがに同じグループ内でも武闘派で知られるだけありますね。」
と皮肉を伝えてその場を去った。ちなみに店先を防犯カメラで録画なんて
話はもちろん嘘である。

(続) マナーの悪い客とのトラブル

2006-08-01 21:07:03 | ビバ!風俗!!さらば愛しき風俗マン生活
自分個人の考えとしては看板を蹴飛ばすぐらいで揉め事などに
したくはないのだが、他の店舗の目というのもあり、その手前
見て見ぬ振りもできない。何らかのけじめをつけておかないと
他店舗からどういった風評が流れるかわかったものではない。
付いてきた2名の従業員は血の気も多く、こういったトラブルも
楽しむ毛がある。最悪4対7で殴り合いになっても負けないと
いう自信はあった。

現場は先に追いかけた従業員が7人相手に叫んでいた。
若いな、7人と対峙してそう思った。すこし話はずれるが、
風俗で揉め事起こす人間はほとんど若い奴らばかりだった。
遊び方を知らないというか何というか、揉め事を起こしても
それが箔になるとふざけた考えをする奴が多い。

会社勤めしている人間などは風俗で揉め事を起こすなんて
恥ということをわきまえているし、遊び方も心得ていたので
トラブルなんてほとんどなかった。まあ、無いとは言わないが
比率は圧倒的に少なかった。一度自分がコンビニで買い物を
していると19~22と思われる3人組の1人がうちの店で
強引に本番をしたなんて笑いながら話していた。他の2人も
お前ならやるな、なんて話していた。多分うちの店を馬鹿に
されてイラだった自分(正直この時は機嫌が悪かったのもあるが)は
この3人組で1番調子に乗っている奴に後ろから肩に腕を掛けて、
一言二言軽い脅し文句を言ったら、手のひらを返したような
態度で謝ってきた事がある。所詮目の前の7人もそいつらと
代わりないと思っていた。

「誰がやったの?」と先に追い掛けた従業員に問いかけると
「こいつですよ!!ふざけたガキだ!!!」と7人の中で
一番やんちゃな格好をしている人間を指差した。
「いや、お前も若いだろ。」と心の中で突っ込んでる
余裕もこの時は持ち合わせていた。自分と連れて来た2人の
従業員もその先に視線を向けると「いや、蹴ってなんかない
ですよ。」とその男が反論する。


「お前蹴ったじゃないか、俺見てるんだぞ!!」と従業員が
火に油をそそがれたように怒声を上げる。
すぐに他の6人も「蹴ってないですって。」と次々と
庇う声を上げる。連れて来た従業員2人は、既に戦闘モードで
看板を蹴った張本人と追われる人間に歩み寄るので、一旦自分が
制止する。怒鳴り散らし続ける従業員、もうこの時点で他店舗の
従業員は野次馬と化して店先に出てきて、こちらを見ている。

内心自分は舌打ちをした。物事を軽く考えていて、入り方を
間違えたのだ。場所を一旦変えていたら、こんなことには
ならなかった。それにもう既に他店舗からも見られている。
こういう話は広まるのもあっというまで社長の耳にも
すぐに入る。何らかのけじめをつけなくてはいけないが、
それをどう取らせるか考えがまとまっていなかった。

さすがにここで乱闘を始めるわけにもいかないし・・・。
しかし、既に戦闘モードの従業員、いくら自分が立場は
上でも頭に血が上った人間3人を止められるわけがない。
それに若いときは人並み以上に喧嘩はしてきたが、
正直連れて来た2人を止めるほどの腕力もない。


「お前すこし黙れ。」と怒鳴り続ける従業員を黙らせる。

「君達、学生?それともどこかで働いているの?」と聞くと
学生です、と返って来た。

「まだ蹴られた看板をよく見てないから何とも言えないけど、
もし損傷している場合は修繕費として請求するから。
学生証出しな。あと、さっき蹴ってないなんて擁護した奴も
全員出せ。」

「いや、蹴ってないですって。」

「お前いい加減にしろよ!!蹴っただろうが!!」
また従業員が叫ぶ。「いや本当に蹴ってないですよ。」と
他の6人の内の1人が声を上げると従業員がそいつの胸ぐらをつかむ。

正直勘弁してほしかった。早く事態を収拾したいのに
どんどん荒れ模様になっていく。仕方ない店に連れて行くか、と
この場で話をまとめるのを諦めた自分は、

「じゃあ、そんなに言うならうちの店来るか。
悪いけど防犯カメラで店先は録画してるんだよ。
ここで話していても埒があかんから来い。」
一方的に言い付けると何か言おうとした学生の
胸ぐらをつかんで、強引に店まで連れて行った。
他の6人も付いて来る人間もいたが店の中までは
入ってこなかった。