昨年夏、突風のようにサブプライム問題が巻き起こった時、世界最大の債券ファンドを運用するビル・グロスは「金利を至急に3%まで引き下げるべき」と主張した。
当時のFFレートは5.25%であった。
ビル・グロスの主張を聞いた時には「そこまでは?」というのが正直いった感想であった。
ビル・グロスは昨年初めの米バロンズ誌の新年の座談会で「住宅市場には問題が起こり、信用市場に波乱がくる」と的確に予想した。
しかし当時はそれに謙譲に耳を傾ける向きは少なかった。ビル・グロスの予想が現実になったいま、ウォール街の大手投資銀行は今回の利下げの終着駅を1%とした。それぐらい、バーナンキ議長の政策が手遅れになったことは確かである。ビル・グロスは先週、自社のホームページに恒例の「2月の相場見通し」を掲載して次のように書いている。
「ケインズが理論化し、クルーグマンが現実に適用したその理論によると、いまや政府は個人消費の割れ目を埋める義務を負う。
しかし2008年末に新しい大統領が誕生するまでは、政策の発動には期待できず、米国やその同盟国の経済がはしばらくは千鳥足で歩むことになるだろう。
再度の世界経済の繁栄到来には、過去10年の経験ではなく、1930年代のような金融・財政政策の改革が必要である」。
ビル・グロスの主張をバーナンキ議長は読んでいる。