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主にポケモン小説?を掲載

#15

2017-04-19 18:37:29 | 暁と共に
「そんなことが...」
詩織の話を聞いた舞乃は、うまく感想が出てこなかった。
美人な上に大企業のOLを勤める詩織が、コーディネーターとしての優れた経歴まで持つことに対する羨望、
ストーカーの被害に幾度となく遭っているという彼女への同情心、
才色兼備でも必ずしもいいことばかりではないのだ、という教訓を受けたような心境、
そして今、まさにこの町にストーカーがいるかもしれない、という恐怖心、
これらの感情が全て混ざり合ったような心境である。
黙っている舞乃を見て、詩織は口を開いた。
「...やっぱり迷惑だよね、ごめんね。本当にごめん...諒太の友達だからって、勝手に親近感覚えちゃってた。いきなりごめんね。」
そう言うと、申し訳なさそうに微笑み、立ち上がった。
「いいんですよ!」
部屋に戻ろうしている詩織を止めた。
「ストーカーは怖いし...私はポケモンいるから、もしストーカーが来ても戦えます。だからしばらくいても いいですよ」
「本当?迷惑じゃない?」
申し訳なさそうにたずねる詩織に、舞乃は頷いた。
「諒太と顔見知りみたいだし、信用できるから大丈夫です」
「良かった、じゃあしばらく部屋にいさせて貰うね。あ、郵便物は受付で保留してもらってるの」
そう言うと、詩織はベッドに再び腰掛けた。
諒太と詩織は同じ孤児院出身ということ以外、いまいち関係性がはっきりしていない。
公園での諒太の態度を見た限り、むしろ彼の方は避けているようだ。
色々と疑問は尽きないが、首を突っ込むのも何だかなあと思ったため、あえて言及はしなかった。
「...詩織さんもポケモンコーディネーターの経験があるなら、手持ちポケモンいるんじゃないんですか?」
沈黙がやや気まずいので、別の質問をした。
「ええ、ポケモン自体はいるんだけどね...」
詩織は返事すると、腰に付けていたモンスターボールを投げた。
中からは、一匹のエーフィが現れた。
大変美しい毛並みに、引き締まったしなやかな四本の足、長く流れるような尻尾が実に印象的だ。
...しかし、舞乃の姿に気が付くと、大きく後ずさりした。
「相棒のエーフィ。見ての通り、すっごく臆病なの。ストーカーと対面でもしようものなら、失神は確実ね」
そのような性格のポケモンが、よくコンテストを勝ち進んだな...と内心思ったが、
「すんごい...ナイスなコンディション、ですね...」
こちらも本音であった。確かにプロポーションだけなら、そこらのポケモンとは比べものにならなさそうだ。
「舞台の上にいるときだけ、堂々と演技ができるのよ。普段はこんなに臆病なのに」
膝の上でエーフィを撫でながら、舞乃の内心を見透かしているかのように疑問を解消した。
「不思議ですね。演技ができるのに...」
「そうそう。どんなに鍛えても改善されないのよね...舞乃ちゃんのポケモンも見せてくれるかな?」
「いいですよ。昼間、チラッと見せただけでしたもんね」
舞乃は四つのボールを投げて、カメール、ピジョット、デルビル、ポリゴン2を出した。
「へえ、ポリゴン2かー。颯生に聞いたよ。舞乃ちゃんのお父様はシルフカンパニーにお勤めなのよね」
やはりコメントはポリゴン2に集中する。他のポケモンは何の変哲もないので、特に感想は見当たらないのであろう。
「舞乃ちゃんも颯生と同じポケモントレーナーなのよね、確か。旅には出ないの?」
「出たかったけど...両親がなかなか許してくれなくて」
両親が事故死したという詩織に、両親の話を出すのは躊躇われるので、最小限の説明に留めた。
「そっか。舞乃ちゃんみたいな可愛い子が冒険するのは危険だとお思いなんだね、きっと。
...それじゃあ、どうしてトレーナーになろうと思ったの?」
「うーん...それはですね...」
舞乃は冷蔵庫からペットボトルを取り出すと、一口飲んでから話し始めた。
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