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主にポケモン小説?を掲載

#14

2017-04-19 17:56:23 | 暁と共に
ポケモンセンターの宿泊室は、すでに大半が予約済みであった。
そして同時に、町の規模に見合わない宿泊室の数の理由が判明した。
それは言うまでもなく、トーナメントバトルに出場するために遠征してきたトレーナーたちが気軽に宿泊できるからだ。
「部屋が二人分空いててよかった。今夜は寝れそうだ」
「まあな。秘密基地のベッドは何だかんだで安いからなあ...まともなベッドで寝れるのがありがたい...」
「それじゃ、後は各自行動で、明日の朝起きたら合流だね」
「そうだな。それじゃ!」
宿泊室の階数が異なるため、二人は階段の前で一旦別れた。
(今日は本当に疲れたー...お風呂入って食堂行って、早く寝たいな)
諒太と別れた舞乃は、指定された部屋の前まで来ると、鍵を差し込もうとした。
「...わっ!!」
突然後ろから、驚かす声と共に、肩を掴まれた。
「うわあっ!?」
度肝を抜かれた舞乃は、素っ頓狂な悲鳴を上げて振り返った。
「ごめん、驚いた?」
彼女を驚かせたその正体は、公園で(諒太によって強引に)別れて以来の詩織であった。
「し、詩織さん...すみません、驚きました」
「ふふふ、ごめんね、私結構いたずら好きなのよ」
いたずらにしても、あまりにも不意打ちであったため、舞乃は未だに呼吸を整えることに時間を要している。
「勘弁、よろしくお願いします...詩織さんもここに泊まってるんですか?」
「そうよ。お祭りが終わるまでね。颯生は多分、ぐーすか寝てるわ。メールしても返信来ないもの」
部屋に戻り次第、寝息を立てる颯生の姿は安易に想像がつく。
「...それでね舞乃ちゃん」
詩織の表情が少し固くなった。
「しばらくの間、舞乃ちゃんの部屋に一緒にいてもいいかな」
「えっ...どうしてですか?」
「実はね...私の部屋に、ファンと名乗る人から郵便物が届いたのよ」
「ファン?郵便物?」
「追っかけもここまで来ると、ちょっと怖くなってきてね...諒太はなんだか久しぶりで話したくないみたいだし、
もう頼めるのは舞乃ちゃんしかいないの。知り合って間もないのにごめんね」
話がよく見えて来ないが、
「...とりあえず、部屋に入りませんか?」
舞乃は鍵を差し込み、ドアを開いた。
部屋は何泊かするのに不自由はしなさそうな程度に、設備が整っていた。
「あっ、冷蔵庫がある。ラッキー!」
小さい冷蔵庫に、持参してきた飲み物をしまった。
「...詩織さん、さっきの話の続きは?」
舞乃は冷蔵庫を閉めると、詩織の方を見上げて立ち上がり、二人はベッドに腰掛けた。
「うん、お話しするね...最初から分かりやすく話すね」

自分の将来の夢は、ポケモンコーディネーターだった。
ホウエン地方を中心に、ポケモンコンテストで活躍する人々だ。
それは幼少の頃、まだ生きていた両親と共に観に行ったコンテストに魅了されたためだった。
自分もこの人たちみたいに、ポケモンの魅力を花咲かせたいー
それを現実のものにするべく、両親が事故死し、颯生と共に孤児院に引き取られた後も、
コンテストの中継をビデオに録画したり、いつかホウエン地方に旅立つために小遣いを貯金したりした。
バイトするようになってからは、バイト代はもちろん、その目標のために大半を注ぎ込んだ。
そしてその日がとうとうやってきた。自分は18歳になっていた。
孤児院の仲間に見送られながら、ホウエン地方に旅立った。
それから一年間、自分はコンテストに出場し続け、気付いたら有名人になっていた。
町を出歩けば声を掛けられ、サインや握手を求められることも少なくなかった。
結局ホウエン地方での生活は、その年のグランドフェスティバルの決勝戦で敗退したことで幕を閉じ、
自分はカントー地方に戻ってきて就職活動を始め、普通のOLとしての生活を始めた。
しかし、様々なコンテストで注目を集め続けた自分は、もはや著名人と言っても過言ではなかった。
カントー地方に戻ってきてからも、通りすがりの市民に何度、声を掛けられたか知れない。
そしてそれは、必ずしも常識的な人間ばかりではなかった。
分かりやすく言うと、ストーカーだ。
被害は一度や二度の話ではない。
職場まで特定され、嫌がらせの電話を受け続け、部署を異動させられたこともある。
そして今、それを思わせる郵便物が届いたー
つまり、自分がこの町にいることを知るストーカーが、町内にいる可能性が高い、ということである。
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