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#20

2017-04-21 00:02:15 | 暁と共に
舞乃たちがアカツキタウンに来訪して、一晩が明けた。
翌朝も、昨日の夜から何一つ変わらない土砂降りが続いていたため、この町の名物であるはずの朝焼けは姿を見せなかった。
「あーあー...朝焼け見たかったなあ...」
まだ眠気から覚めていない様子の舞乃は、とりあえずポケギアを開いていた。
舞乃のポケギアの画面に、メール受信の通知が表示されていた。
差出人は『青垣諒太』と示されている。
「詩織さん。諒太が、この後みんなで集合して今日の予定立てようって」
「う...うん、そうだね。そっか、諒太が...」
ベッドの横で着替えていた詩織はやはり、その名を聞いて少しうろたえていたが、
「あ、そうだ颯生にも連絡しなきゃね。さすがに起きてる...と思いたい...」
自分のポケギアを手に取ると、メールを打ち始めた。

簡単なメールでの打ち合わせの結果、一同はひとまず食堂に集合することとなった。
メンバーは無論、ポケモンセンターに宿泊した舞乃、諒太、詩織、颯生、万尋の五人だ。
とりあえず面識がない相手には簡単な挨拶と自己紹介を済ませ、本題に入った。
「...天気予報によると、今日も丸一日この土砂降りが続くみたいだ」
ポケギアで天気予報を再確認しながら、万尋が情報を伝えた。
「嘘だろ...祭りが近いってのに!」
ひどい寝癖が残っており、湿気も相まってひどい髪型となっている颯生がげんなりとした表情を見せた。
その様子を見た舞乃は吹き出した。
「颯生、その髪型何とかしなよ...」
「えっ...何か変か?ソースが付いてるか?それとも、寝てる間にモヒカンにされたとか?」
髪の毛をわさわさと触り、確認している様子から、颯生は起きたあと鏡を見ずにここに来たようだ。
「わはは、すごい寝癖だぜ!少年、鏡ぐらい見ろよな!」
豪快に笑い飛ばす万尋に、颯生はムッとして向き直った。
「何だよお前!」
「颯生、落ち着け。...本当に大人しくなる気配すらない。昨日の晩から同じ調子だな」
諒太が窓の外の様子を確認して、冷静に呟いた。
そのときだった。
『クゥ〜』
彼の足元に、ダイアナがすり寄ってきて鳴き声をあげている。
なお、食堂内にはポケモン用の飲食スペースも設けられており、一同のポケモンはそこで朝食を摂っている。
ダイアナはそこから移動してきた様子だ。
「どうしたんだよダイアナ。...ん?何だよこれ?」
ダイアナは口に、包装された小さな飴玉のようなものをくわえている。
それを諒太に差し出しているようだった。
「くれるのか?...え、あの人がくれたって?」
諒太の視線が、やや離れたところに立っているドーブルに向けられた。
ドーブルは諒太の視線に照れている様子で、離れた位置からさらに後ずさりしている。
「おお!君がくれたのか。...え、何?ふんふん...」
何やらドーブルと会話している諒太。
「お、おい、見ろよ、ドーブルだぜ!俺、初めて見た!」
詩織の腕を引っ張りながら、颯生が目を輝かせている。
舞乃にとっても、今ここにいるドーブルは見たことのないポケモンであるため、その姿をまじまじと見つめている。
「ダイアナ、お友達ができてよかったなー。」
ダイアナの頭を撫でると、諒太が一同の方に向き直った。
「みんな、ダイアナがこのドーブルと仲良くなったみたいなんだ。それで、お友達の印にー」
そう言うと、ダイアナから受け取った飴玉を見せた。
「ふ、ふしぎな...アメ...」
ふしぎなアメーポケモンのレベルを1段階上げる、便利なアイテムだ。
「一応、俺が持っておくから、欲しい人は後で」
諒太がそこまで言ったとき、
「こっ...こら、レオっ...」
くぐもったような小声と共に、一人の少年がドーブルの側まで駆けてきた。
「食事スペースにいないからどこに行ったのかと...あっ、はっ、は初めまして」
呆気に取られている一同に気が付くと、頭を下げて挨拶をした。
小さくボソボソとした声で、特に奥の方に座っているメンバーには、何を言っているのか聞こえていない様子だ。
ドーブルと同様に、シャイで内向的な性格のようだ。
(なんでそんなにテンパってるんだろ)
舞乃は内心そう思いながら、彼の左胸に付けられた名札の文字を確認していた。

アカツキタウンポケモンセンター サロンスタッフ 栗林都築(くりばやしつづき)

どうやらこの人物は、ポケモンセンター内にあるポケモンサロンのスタッフのようだ。
「うちのレオが、し、失礼しました」
レオと呼ばれたドーブルを抱き抱え、なぜか慌てた様子でその場を離れようとした。
「ちょっと待ってください」
逃げるようにして背中を向けた都築を、諒太が止めた。
「うちのこの子とあなたのドーブルが、食事スペースで知り合ったみたいなんですよ。迷惑ではないので落ち着いてください」
椅子の近くでレオの方を見上げてクンクン鳴いているダイアナ。
レオは都築の腕から身体を伸ばして、ダイアナの近くに行きたがっているようだ。
「れっ、レオ」
やがてトレーナーの手をするりと抜けて、レオはダイアナの近くに来た。
「ほら、この通り。...お礼にこれをあげます」
諒太は持っていたバッグから、小さなピッピのぬいぐるみを都築に差し出した。
(ピッピ人形だ...)
野生のポケモンから逃げるときの最終手段として使われる、レアなアイテムが、都築に手渡された。
「えっ...え、ええっ!?」
レアアイテムを目の前に出され、驚く様子の都築。
「飾るのもよし、ポケモンにあげるのもよし、逃げるときに消耗するのもよし。使い道は様々ですよね。
...これをあげるので、代わりにお願いがあります」
「お、お願いとは」
慌てる様子の都築に対して、諒太は何ら物怖じすることなく、にんまりとしながら用件を述べた。
「ここにいる五人分のポケモンを一匹ずつ、無料でトリートメントお願いします!」
この大胆な要望と引き換えに、ピッピ人形を惜しげもなく初対面の相手に捧げるとは。
都築はあたふたしながら、チラリとポケモンたちの様子を見た。
ダイアナとレオは、すっかり仲良しといった様子で仲良くじゃれ合っている。
人見知りでシャイなレオが、よそのポケモンと仲良くなれる機会なぞ、今までに見受けられなかった。
ここで諒太の要望を断ってしまうと、レオの唯一の交友関係にまで悪影響が出るかもしれないー
そこまで考えると、要望を承諾しないわけにはいかなかった。
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