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#19

2017-04-19 21:24:09 | 暁と共に
(204号室 草谷舞乃様)
土砂降りは一向に、勢力が弱まる気配すら見せない。
今晩降り続けるとすれば、土砂崩れが起きてもおかしくないレベルだ。
(あーあ...明日は止んでくれるかなあ...)
自分の隣では、詩織がすでに寝息を立てている。
疑っているわけではないが、知り合って間もない大人の女性が隣で眠っている状況では、落ち着いて寝づらい。
舞乃はベッドから降りると、刺すような雨の降り続ける窓の外を眺めていた。
(今日は色んなことがあったなあ...)

本来の目的であった「未確認ポケモン」の見物は、早くて明後日に延期された。
そして色々な人と出会った。
ついでに、この町の歴史や祭りの存在についても情報を得た。
こう考えると、今日という日は予想していたよりも遥かに濃い一日となった。
(なんだかんだで、来てよかったな)
脳内で呟くと、ベッドに戻り、詩織に背中を向けて目を閉じた。

(一方、行方神社にて)
「ったく!何こんなときに雨降ってんの!?あーあ、ほんっとふざけてる!」
強引に外した髪留めを、机の上に放り投げると、乱暴な口調で怒鳴る一人の少女。
すでに寝巻きに着替えていて、寝る準備をしている模様だ。
「ミツル姉、やけを起こしても何にもならないって!明日ばーちゃんと儀式をすれば晴れるかもよ?」
何食わぬ顔で飴を舐めながらテレビを見ている美雁が口を挟んだ。
どうやらヒステリーを起こしているのは、昼間話題に出ていた彼女らの姉である美鶴のようだ。
そしてその横では、美鷺が黙々と裁縫をしている。
「美雁と美鷺はあたしと違って、巫女の任務は背負わなくていいんだから黙っててよ!」
美雁の方を睨みつけ、なお怒り任せの言葉を吐き捨てる美鶴だが、当の美雁は怯えた様子を見せるどころか、鬱陶しそうに睨み返した。
「文句ばっか言ってても始まらないよ。いつも言ってるけど」
「ああもう、うるさい!」
美鶴は苛々としながら美雁の返事を遮った。
「ほんっと、つまんねー人生!あたしだって好きで巫女なんかやってるわけじゃないのに!」
怒鳴り散らすと乱暴に立ち上がり、ズカズカと進むと、ピシャリと襖を閉じた。
「...久しぶりに会ったけど、相変わらずだね」
襖に向かって舌打ちをすると、美雁は美鷺の方を向いた。
美雁は普段、自分の経営する食堂の物件に独り暮らししていて、今日は昼間言ってたように実家に戻っているらしい。
「まあね。何も変わりないわよ」
「...あれが町の平和を守る巫女なんだから、この町はいつ崩壊してもおかしくない...なんちて」
「あながち、笑い話じゃないかもしれないわ」
美鷺は静かに返答すると、素早く先端の糸を結び、糸切りバサミで切った。
「この町は役所よりもこの巫女一族の発言の方が力を持つ...ゆえに今、この町で一番権利を持つのはうちのおばあちゃん。
おばあちゃんが亡くなったとき、町の体制が変化していなければ、最高権力者は姉さんになる...」
「洒落にならないね、それ」
あっさりした突っ込みに、美鷺ほ頷いた。
「それを防ぐ方法は二つー姉さんを改心させるか、町の風習そのものを変化させること。
後者はもうすでに、父さんが実行し始めているけどね」
「ふーん。やっぱ親父、町長になるつもりなんだね。無謀なこと考えるなー、と思ったもんだけど...」
「一応、町の将来を見越した末での行動なのよ。本当に一応ね」
「そう。見直したかも」
見た目も性格も全く似ていない姉妹だが、打ち解けた会話をしているあたり、関係は良好のようだ。
土砂降りの中、神社の奥に潜む部屋でのことであった。
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