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虹への旅/芝田勝茂

2007年03月20日 22時53分57秒 | 読書歴
■ストーリ
 「嘘つきマリオ」と呼ばれていた少年は「森の民」に
 なるべく、二人の少女と共に森での生活を開始する。
 一方、アイザリアで行われている戦いはマリオたちが
 住む森をも巻き込み始めていた。戦争ををやめさせるため、
 「森の民の王ヌバヨ」を名乗ったマリオは、昔アイザリアから
 連れさられたラクチューナム・レイという王女様を探し
 ドーム郡に向かうことになる。

■感想 ☆☆☆☆
 この本も久々に読み返したくなった本の一冊。
 83年に福音館書店から刊行された「虹へのさすらいの旅」を
 改題改稿し、挿画も新しくした改訂版とのことで、
 私が幼い頃に親しんだのは「虹へのさすらいの旅」のほう。
 題名は改訂前のほうが好みだ。
 一冊目の感想はコチラ。

 第一作でドーム郡の危機を救うべく旅に出たクミルと同じく、
 マリオもアイザリアの争いを治めるべく、救世主となるはずの
 ラクチューナム・レイを探しに旅に出る。
 しかし、探し出した「王女」は、自分と同じ年代のごく普通の
 女の子。戦争を厭い、平和を愛し、友達を大切にする
 普通すぎるほど普通の女の子であり、並みいる武将をまとめ、
 国を統治する特別な力を持っているようには見えない。

 ここでも主軸を貫くのは「個人の自立心」だ。
 権威や他人や伝説に頼るのではなく、ひとりひとりが
 今、ここで、何ができるのかを考え、行動する。
 それだけで確実に世界は変わっていく。
 そして、何よりも大切なのは「戦争を嫌う心」。
 戦争を必要悪だと認めない心。
 どんなに大義名分があっても、戦争は所詮人殺しでしかない。

 ごくごく普通の女の子だったラクチュナーム・レイは
 戦場で空に見事な虹を描いてみせる。
 それこそが王女の証であり、その虹によって
 民衆の心はひとつになる。
 しかし、敵の武将、アサスにはその虹が見えない。
 根本的な考え方が異なる以上、どんなに努力しても通じない
 言葉がある。目の前に突きつけても共有できない景色がある。
 物語は、そういったどうしようもない現実も
 きちんと描いている。
 
 ラストは鮮やかに爽やかで、青空の中に
 確かに虹が見えるようなそんな気分にさせられる。


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