コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

コンパオレ大統領の演説

2009-09-23 | Weblog

ブルキナファソのコンパオレ大統領が、コートジボワールを公式訪問した。昨年7月に、両国間で合同閣僚会議を開くという合意が出来た。その合意に基づいて、9月16日に、ヤムスクロで両国主要閣僚が集まって、両国共通の問題について話し合った。

その後、コンパオレ大統領はアビジャンにやってきて、一連の公式行事を行った。さて、国家の賓客であるので、行事ごとに外交団も呼ばれて、同席が求められる。9月17日に、国会での演説、そしてその夜は大統領府でバグボ大統領主催晩餐会、そして次の日(18日)にコンパオレ大統領とアビジャンの外交団との面談会、と3回も召集がかかった。

最初は国会での演説である。コートジボワールの国会、つまり国民議会は1院制で、225人の議員がいる。議員たちは、2000年に選出された。任期は5年。それじゃ、任期がとうの昔に切れているじゃないか。いや堅いことは言わないことにしよう。お国は危機下なのだから。バグボ大統領だって、選挙が行われないで、大統領を続けている。国会も同じである。みんな、選挙が行われないまま、議員を続けている。

国民議会の議場に入ると、その議員たちが皆、コートジボワールの三色旗を肩からかけて、議場に並んでいる。私たち外交団は、議場の上階にある、見物席のようなところに案内された。やがて、議場の執事の声がかかって、クリバリ議長とコンパオレ大統領が並んで入場してきた。私たち大使連中も含め、全員起立で、拍手で迎える。

「2009年の特別会期を開催する。」
クリバリ議長が宣言。点呼に移る。点呼なるものがあるのだ。壇上に立った書記が、議員を順番に呼び、呼ばれた議員は手を上げる。225人であるから、延々と点呼が続く。これを毎回行っているのだろうか。悠長なしきたりである。最後に書記が、出席者数を議長に報告した。

クリバリ議長の挨拶に続いて、コンパオレ大統領が壇上に呼ばれた。さて、コンパオレ大統領は、周旋役として、コートジボワールの危機からの脱出のために重要な役割を担っている。だから、今日の演説は注目される。ほんとうに11月29日に大統領選挙ができるのか。準備が予定通りに進んでいない、という情報が流れてきていて、実際に8月29日に予定されていた暫定選挙人名簿の公表が延期された。雲行きがどうも怪しい中で、コンパオレ大統領がどういう演説をするのか。それを注目している。

「コートジボワールが近年経験した危機は、国家統一と民主主義と平和への、国民の強い意欲によって、克服されました。コートジボワール国民の知恵が、国家分裂への誘惑ではなく、平和と団結への意思が勝利するべきであるとの、心からの信念を生み出したのであります。」
コンパオレ大統領の、コートジボワールに対する高尚な賛美が続く。

「そしてこの、地理的に密接な関係にあり、内陸国のブルキナファソにとっては港に通じる玄関ともいえるコートジボワールに対して、ブルキナファソ国民は、大いに祝辞を述べたいと考えているわけです。そして、コートジボワールは、経済発展の潜在性を多分に秘めた国です。その潜在性は、指導者たちの政治的な意思と、人々の勤労への意欲により、支えられています。そして、コートジボワールは完全にも、西アフリカ地域の統合をめざし、最前線の先鋭部隊なのであります。」
ここまで褒めあげると、ちょっと皮肉に聞こえる。

「昨年7月に、バグボ大統領との間で、条約を締結しました。両国間で、平和促進のための共同作業を行うこと、グローバリゼーションのもたらす困難を、手を取り合って乗り越えていくこと、などを取り決めました。両国国民が、この選択を支持していることを高く評価します。ヤムスクロ-ワガドゥグ枢軸は強化され、両国は地域統合の過程において、歴史的な責任を果たすということなのです。」

コンパオレ大統領は、具体的な課題を列挙する。両国間の経済関係の効率化、アビジャンとワガドゥグを繋ぐ鉄道路線の修復と近代化、陸上輸送の困難除去、アビジャン港の管理へのブルキナファソ側の関与確保、電力網の接合改善による電力供給能力の向上、などなど。この部分は、ちゃっかりブルキナファソ側の要望事項が並んでいるようなものだ。

そして最後になって、コンパオレ大統領は、大統領選挙について発言した。
「数週間のうちに、コートジボワールは、大統領選挙を成功のうちに実施できるかどうかに、挑戦することになります。これは、民主主義の再構築と、その足場固めのために、最重要な段階です。ワガドゥグ政治合意(2007年3月)により、自由で透明性のある選挙を行う意向を表明しているコートジボワール国民の能力を信じております。ブルキナファソは、平和と安定に向けた協力を行う用意があります。」

それだけだった。あとは、今月初めにブルキナファソを襲った、洪水の話などをしている。11月29日という日付には、言及が無かった。それだけでなくて、なんだか、君たちの問題だよ、と言わんばかりの突き放したような言い方だ。コートジボワールの危機解決において、「周旋者」という特別の役割を担っているコンパオレ大統領だからこそ、今後の指針などについて具体的な発言があることが、期待されていたのである。

満場の拍手、総立ちで大統領を送り出す。テレビ中継も入ったこの注目の舞台で、コンパオレ大統領が、大統領選挙について積極的な発言をしなかったということは、それだけで重大な意味を持つ。選挙の準備が、あまり良い調子には進んでいない、というのはどうやら本当のようである。

 議場に集まる国会議員

 階上からみた議場

 議席に座る

 コンパオレ大統領の演説

 議場を出るコンパオレ大統領(写真中央)
右はクリバリ国会議長

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