本があるような。生活

読んだ本の感想です、ジャンルは主に小説

broken,broken into thousands of pieces

2006-05-23 22:04:37 | おすすめの本。
『千々にくだけて』  リービ英雄

9・11をテーマにしたノンフィクション

作家というのは変わった経歴を持つ人が
結構多いように思いますが、
この人はとくに面白いですね。

1950年カルフォロニア生まれ
少年時代から台湾、香港などに移住して
16歳から日本に住む、以降日米往還を繰り返し
現在日本在住(神楽坂に住んでいる…らしいです)

西洋出身(!)の初めての日本文学作家。
デビューは92年の「星条旗の聞こえない部屋」
これは野間文芸新人賞を受賞していますね。


この人の作品は2~3コ読んだことがあるのですが
私小説?というのでしょうか、
そんなジャンルで活動しているようです。
随筆のような、小説のような…
(蛇足ですが私小説、というのは日本独自のものらしいですね。)


リービ英雄の本は視点が斬新というか新鮮というか…
独特だ…、という事をすごく感じます。
(あぁ、なんと言ったらいいか分からない)
とても興味深いです。


本当になんともうまく言えないのですが、非常におもしろい本だと思います。
そしてこの人、日本語がものすごく、上手い。

シュール

2006-03-12 00:17:14 | おすすめの本。
『最後の物たちの国で』  ポール・オースター

絶望的な小説だった。
暗く、陰鬱で、全編を通して灰色のじっとりした空気におおわれてるいるみたい。

主人公の語り口形式で語られる内容は手紙で、それがこの本です。
その国がどこなのかも分からないし、
主人公が元いた安全で安楽な国がどこにあったのか、
またこれらがどこの世界に属していた国なのかもわからない。
(未来なのか、それとも私たちの今いる此処に似た「どこでもない、どこか」なのか…おそらく後者)

ある国で行方不明になったジャーナリストの兄を追って、
その国へ一人で探しに行くのが、主人公の女の子。

『戦場のピアニスト』を観た事があるのだけれど
その中にでてくるゲットーと、第二次世界大戦下の世界を
足して二で割ったような国みたいだと思った
(あまり想像して良い事ではないけれど…)

物資は困窮して、世相は荒み、明るいものや温かいものが出て来ない。
気が滅入るような商売が横行し(自殺請負人、安楽死クリニック…)
まともな社会は無いに等しい。
人はやせこけて、力なくばたばたと死んでいく世界。

もちろん主人公はもといた世界(国)にもどることができない
(まともな輸送手段は機能していない、糞尿から動力を得ているような国だ)
生き延びて、それだけでギリギリな生活を送っている、
その中で兄を探すこと、兄の消息を知っている人を探すこと、を支えに生き残っていく

この本が紹介されていたところである人が
「これはファンタジーではない、いつかくる未来だ」
みたな事を言っていたのだけれど、
あまりに怖いし、リアリスティックだ。
新聞紙のくだりなんてとくにリアルで、なんだかイヤになる。

主人公は本の中でしきりに、
この手紙が届くかどうかなんて分からないと言っている。
(実際読んでる限り届くとは思えない…どうやって届けたんだろう?)
だけど、文の途中でふっと『彼女はそう続けている』というくだりが入ったりする、
読んでる途中は分からなかったけれど、これは彼女の望むところへこの手紙が届いたという「印」なのだろう。
(それが何を意味するのか分からないけど)



「すばらしい」の意味がわからなくなりそうだけど
この本はすばらしい小説なんだろう、
でも今しばらくはもう一度読みたいとは思わない
…というか読みたくない、と思った。


おすすめ、コメディ

2006-01-26 00:38:24 | おすすめの本。
『銀河ヒッチハイクガイド』  ダグラス・アダムス

世の中、大雪とか、大地震とか
いろいろ驚く事が起こったして
おいおい、地球、大丈夫かよ?
なんて思ったりしますが
さすがに、ここまで予測できないな。

ある日突然、地球が滅亡
理由は「バイパス建設のため」
銀河単位のバイパス建設ってのがすでにおかしいんだけど、
冒頭部分からすでに笑えるんです
地球人は
「デジタル時計をいまだにいかした発明だとおもってる猿の子孫」で
「たまには人に親切にしようよ、たのしいよ、といったばかりに一人の男が木に釘付けにされてから二千年近く経ったその日、」
に物語がはじまる…

侵略が始まってから
地球が消滅するまでわずか6ページ!
(地球消滅自体は3行!)

哲学的のような哲学的をばかにしたようなジョーク、
風刺の効いた冗談、ばかばかしいシュールな設定
プラスSF的要素、プラス人生とか
作者の笑いの才能を感じましたね、私は。

でもそれもそのはず、本国イギリスではベストセラー&古典的名著
作者はモンティ・パイソンなんかとも交流(関係?)があったそうです。
今年は映画化もされて、そろそろDVD発売のよう、気になる。

半笑いが止まらないまま深夜に読み終わる…
(絵にすると不気味)
いやぁ、ホント読み出すと止まりませんでした
ブラックユーモアが嫌いじゃない方なら
ぜひおすすめしたいです、笑える!



「パニくるな」とか
思わず繰り返したくなるような良い言葉ですね、
あと、表紙のマッコウクジラの謎もとけた。

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町田康の小説に
「パンク侍、斬られて候」って笑える小説があるんですけど
笑いの感じがなんか、それに似ている気がしました。
読んだのかな、町田康。


読み終わった人、ちなみに
「answer to life, the universe and everything」
をグーグルで検索してみると…
(と、人から知ったことを自慢げに記しておきます)


おすすめ、SF作家短編集。

2006-01-09 02:13:53 | おすすめの本。
『フェッセンデンの宇宙』  エドモンド・ハミルトン

・短編集
フェッセンデンの宇宙
風の子供
向こうはどんなところだい?
帰ってきた男
凶運の彗星
追放者
翼を持つ男
太陽の炎
夢見る者の世界

作者はエドモンド・ハミルトン、
1904年(つまり今から、102年前)生まれのSF・スペースオペラの巨匠
代表作は「キャプテン・フューチャー」シリーズ
…のようです、つまり要はすごく有名な人って事らしい。
私はSFは数える程しか読んでないのでよく分からないのですが、
キャプテン・フューチャーはなんだか聞いたことがありますね。
映画化もされてるよう。

SFって読みづらい、更に外国文学も訳されてるせいか、
日本語文学よりも読みづらい
と思ってきたんですけど、これはとても読みやすくって面白かったです。
あとがきで「奇想を情感たっぷりに語る」事が得意、
と書かれているように、ロマンチック(?)かもしれません。


表題作の「フェッセンデンの宇宙」は
(この惑星達が滅ぼされていくのを知っていても)
こんな美しい惑星が宇宙にあるかもしれない…という想像が胸を熱くさせるし、
だれもが想像した事があるような惑星同士の戦争が出てきたりして…
宇宙を作った男の話、ちょっと苦味のあるストーリー。
その他の小説もそれぞれ毛色が違って飽きない、
好きなのは「追放者」と「夢見る者の世界」
「夢見る者の世界」の
アラビアン・ナイトみたいな野蛮で色鮮やかな世界の描写には、
読んでいてワクワクしました。

読んでいて思ったんですけど、この本の人間を皮肉ったようなオチは、
星新一のショート・ショートに似ているなぁ、と。
特に「追放者」と「帰ってきた男」
今までの書き方だと、誤解されちゃうかもしれないんですが、この本は
情感に溢れているんですけど、決して甘ったるくはなく、
すっきりとした書き味がスマートな感じ。
どの話も違った面白さがあるし、読みやすいので、
ちょこちょこ暇を見つけては好きなところから読んでました。

ちょっと使い古されたような設定じゃないか?なんて思ったりしたけど
これは使い古されたんじゃなくて、その後みんなが使いまわしたんだ、
という事に気付く。

きっと、名作なんだろうなぁ。



今じゃありえないような科学的間違いもご愛嬌。


おススメの本。

2006-01-05 13:50:39 | おすすめの本。
『デッドエンドの思い出』   吉本ばなな

・短編集
幽霊の家
「おかあさーん!」
あったかくなんかない
ともちゃんの幸せ
デッドエンドの思い出  

題名どおり、デッドエンド、辛かったり切かったりする思い出の、
五つの話の短編集。
デッドエンドと言うけど、読み終わってちょっと幸福な気分になる。
すごく、あるいはちょっと、切ない気持ちになるんだけど
読み終わった後、力のベクトルが外に向く感じ…
昨日の夜中、思い立って読み直していたら
「おかあさーん!」がすごく悲しく感じられて泣けてしまった
今まではそうではなかったのに、涙目になりつつ読んだ。
(夜中に一人で、馬鹿みたいでちょっと恥かしいけれど )
あの主人公のなにがなんだかよく分からないけど、
なんかいつも辛くないようでいて実は辛くてだるい感じ、
自分をだまして無理している気分
イライラして大泣きしたくなる気持ち。
自分の人生の辛かった時期の気持ちが思い出されて泣けた
(本当にばななさんが言ったみたいに)。
そしてその涙によってちょっと癒されます。
五つもあるからどっかどれか一つその人にあう話があるんじゃないか?なんて思ったり。
この本に関してあまりに素晴らしい感想文を読んで感動してます。
辛かった出来事って本当に辛いんだけど、でも何か得るものがあって
不思議と「こんな事無ければよかった」とは思いがたくって
きっとそう思ったぶん何か意味があったんだな、って思うと救われる気がしますね。


小説を読んでいて、楽しいことはよくあるけど本当に「心動かされる」事ってあまりないので。
よしもとばななの小説はそこのところいつも凄いと思うし、
そうゆうのが小説なんだなぁ…と、思ったりしました。



あけましておめでとう。


おすすめ、本

2005-12-13 18:30:32 | おすすめの本。
最近『夢十夜』をくり返し読んでます。

夢十夜は、夏目漱石の「夢」を題材にした短編集で
その名の通り十夜の分の夢がかかれてます
でも短くていっこ2~3ページくらいです
(長くても10ページいかないくらい…?)
この本は、瀬尾まいこの「図書館の神様」にも出てきて
主人公が、文藝部の生徒に勧められて読んでるんです
それで気になって読んでみました
(瀬尾まいこさんの本は面白いです)

一番すきなのは、第一夜と第六夜と第七夜です。
夏目漱石(というか近代文学全般)は難しくてあまり好きじゃなかったんですけど
これを読んで「漱石、悪くないじゃん」と思うようになりました
なので「漱石って何いってるかよくわかんなくて、嫌い」
とか思ってる人などいかがですか?
わかりやすくておもしろいですよ

あと、読みやすいといえば
この本の訳し方(日本語でもそういうのでしょうか)
現代人には読みやすくて良いなーと思いました
私もいくつかの全集とかで読んでたんですけど
厳しかったです。
アマゾンでも「初心者向け、容易」と書かれてたし
表紙の絵もイラストではあるけれども、中々好きです。
なにか選ぶ際はどうでしょうか?
草枕
―<智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい>ってやつですね
も入ってるし。 
あ、でもこれ青空文庫でも読めますね

本当に文学的、これこそ文学!と思うような小説で
幻想的で、不思議な落ち着きのある夢が
最後の一文字まで無駄のない美しい文章で
切り取ったかのように描写されてて
ほんとうにすごく面白いのですが
この本のよさがどうやっても自分の文じゃ説明できないので
百聞は一見にしかず、ともいうし
気になったって方いましたら
どうぞまず読んで見てください。



―それにしても、どーして運慶が今の世に生きてるのか分からない。

「ウォッチャーズ」について。オススメ小説

2005-11-13 23:27:48 | おすすめの本。
ウォッチャーズ ディーン・R・クーンツ

『孤独な男・トラヴィスが森の中で出会った犬の目には知性のようなものが…?』

この作品が名作であることは独断においてもう、絶対間違いないんですが。
どのように名作かというと、
ものすごくバランスのとれた名作だと思います。
謎があってドラマがあって恐怖があってそして愛がある、
アカデミー賞をそうなめして受賞したような…(決してカンヌとかでなく)
映画のようなスピード感がある(そういう意味でもアカデミーっぽいかも)
この小説には冒頭部分からいっきに引き込まれました
得体の知れないもののせまってくるシーンの臨場感、
トラヴィスに思わず「逃げて!!」って叫びたくなる…
その後、同時に三つのストーリが展開していく上巻、
それはどこかしら謎で、魅力的、
そしてどれもどこか潜む不気味さ、どきどきする。
そして読み手は「アウトサイダー」の気配を感じると
登場人物に警告を発したくなる…
「だめ!行ってはいけない!!」と
それぐらい、怖い。

熱のこもった後半部分とは別に
後ろの数ページはおそろしく、悲しい。

この物語の主人公が二人いると思ってるんですけど(多分普通とは違った意味合いで)
いつもこの二人の関係についておもうと泣きたくなります。
「ウォッチャーズ」…「見守るものたち、見張るものたち」
見守られたものと、見張られたもの…
あ、ダメだなんか泣けてきた。

物語の最後にはとても重大なものが失われます。
アメリカのものってよく勧善懲悪っていわれるけど
これはそうじゃないです
「みんな生きてる」

小説が好きな全ての人に読んでもらいたい、
本当に素敵な本です。



アガサ・クリスティーの傑作といわれる…

2005-11-07 23:23:07 | おすすめの本。
「ナイルに死す」

金持ちでとびきり美人、そして頭も良い、社交界の花-リネット・リッジウェイ。
その新婚の夫、サイモン・ドイル。
そしてサイモンの以前の婚約者でリネットとは学生時代からの親友だった、ジャクリーン。
ナイルと、ピストルと、貴婦人。
ポアロと個性豊かな登場人物の乗った客船は事件とともにナイルの川を滑っていきます。
完璧な動機と完璧なアリバイをもった容疑者。
次々と起こる殺人。
事件は二度も三度もひっくり返り、そのたび読者はポアロ(とレイス)と一緒にうなります。
誰が殺したのか?全員違うとも思えるし、逆に全員犯人とも思える…。
そんなどんでん返しの頻発するミステリー。
読み終わると同時に息をついてしまいます。
いやはや、もう見事としか言えません。
アガサ・クリスティー本人も言っていましたが、まさに素晴らしい『逃避文学』
あまりに自然にエジプトの雰囲気に引き込まれていたので忘れていましたが、
この作品、すばらしい『外国旅行物』でもあります。
行ったこともないのに、この当時のエジプトをポアロと一緒の旅客船に乗って旅している気分になりました。

外国文学らしいしっかりとした文体と、
なんか密につまった感じがミステリー感が高まって好きでした。
リネットの完璧な女王様ゆえの無神経さ、とか
サイモンの男ならではの単純なまでの単純さ、とか
人間くさい部分が巧みに描写されてて、
登場人物の性格や言動にイライラして時々つっこみいれたくなりました。
(だって「太陽がでたときの月みたいなもんでね。彼女の存在が薄くなったんです。」なんて言うんですよ!むかつく!)
そこもまた、魅力かも。
ちょっと言うとすれば、厚い本なんだけど、ちょっと余分な描写があるかな?
ってとこでした。まぁ、でも進むときはいっきに進むんで、良いんですけどね。
アガサ・クリスティーの初心者の私ですけど、とても楽しめました。
厚い本なのでたっぷり楽しめるし、
時間のある暇つぶしの時なんかとてもいいんじゃないかな。
古典(というっていいのか?)らしい上質で、
サスペンスなんだけど全編にどこか落ち着いた、上品な空気がして、
ポアロのいた時代がとてもロマンチックに感じられました。




 最後に作中から、

「問題は未来であって、過去はどうでもいいのである。」

リリーフランキーって面白い!

2005-10-31 18:47:22 | おすすめの本。
『増量・誰もしらない名言集』 リリー・フランキー

―ここにある「名言」は、別に特別な場所で、特別な人から出てきたものではなく、僕が生活していく中で自然に友達になった人や、知り合った人達から採集した言葉です。―

ヒーヒーヒーもう可笑しくってたまらない。
リリ・フランキーってイラストレーターらしいエロイおじさんぐらいにしか思ってなかったけど。
あんた面白いよ!そしておかしいよ!
トリッキーな人々のなかにあえて踏み込んでゆくその勇気…そして成果。

―人間というモノに上下はなくても左右はあるのです

すごい振れ幅だ…世の中にはまだまだ知らない事がいっぱいあるんだなぁ。
別段、実感したくはないけれど。
読む分にはいいでしょう、「すげぇ」名言の数々。


学校で知り合いから「落ち込んだとき元気が出る」といいながらかしてくれんですけど。
下品で馬鹿でエキセントリックで想像を超えてます。
あー面白い。
いいなぁ。また借りようと思います。

あ、どうゆう内容かというと、
鍵を閉め忘れて家に帰ったら知らない男がベッドの上にいた「アンタ!勝手に人の部屋入り込んで何してんだ!」と声をかけたら返ってきた言葉(名言)は…
ってよくかんないですねー
自分で読んでみるときっと、面白いですよ。
秋の夜長にオススメします。

さぁー続きよもー。

感想メモ

2005-10-22 19:50:17 | おすすめの本。
「レキシントンの幽霊」  村上春樹

・短編集
レキシントンの幽霊
緑色の獣
沈黙
氷男
トニー滝谷
七番目の男
めくらやなぎと、眠る女



留守番をあずかる事になったレキシントンの邸宅での不思議な出来事  「レキシントンの幽霊」
小さい頃から庭に生える木から出てきた「私」に求愛する緑の奇妙な生き物  「緑色の獣」
氷男に出会った「私」と氷男の出会ったもの 「氷男」
たくさんの服をあつめる妻とトニー滝谷  「トニー滝谷」
幼い頃遭った海難事故に記憶について語りだす七番目の男  「七番目の男」
耳の悪い従兄弟と病院について  「めくらやなぎと、眠る女」


「沈黙」がとても面白かった