あるニヒリストの思考

日々の思いを綴る

深層心理と表層心理の関係

2015-03-04 16:27:28 | 思想
現在、パソコンやスマホが普及し、ラインなどを使って、親しい人、知人、見知らぬ人と、短文で連絡を取り合っている人が多く存在する。確かに、多くの人と簡単に連絡を取り合うことができると、色々な人から、色々な情報や考え方を得ることができ、また、自分の存在を知ってもらうことができるので、楽しく感じられる。特に、見知らぬ人と知り合いになるのは、なおさら、そうである。しかし、ここに、落とし穴がある。つい先日も、ラインに書かれた自分についての文章に怒り、それを書いた女性を殺害した女性がいる。二人は、互いに、相手のことを知っていなかったようである。しかし、ラインに悪口を書いた女性も、殺人を犯した女性も、特に、異常な女性ではない。ラインに限らず、面と向かって話さない場合、常に、このような事件が起こる可能性がある。私たちは、どんなに優しい人でも、どれだけ親しい人に対しても、嫌な気持を抱くことがある。父や母が自分に愛情を注いでいることを知っている子供でさえ、時には、憎しみや恨みを抱き、幾度か、「お父さん(お母さん)は家に帰って来なければ良いのに。」とか「別の家に生まれれば良かった。」とか思い、時には、それを面と向かって言いたいものである。しかし、当然ながら、大抵の子供は、それを言わない。それを口にすれば、必ず、父(母)が、怒って、復讐したり、叩いたりするのがわかっているので、自分自身を抑制したのである。この、「父(母)が家からいなくなれば良い」や「自分は別の家に生まれたかった」という思いが湧き上がり、それを言いたくなった気持ちが、深層心理である。そして、父(母)の怒りや復讐や暴力を避けるために、その言動を抑制したのが、表層心理である。このように、私たちの日常生活の感情は、全て、深層心理から生まれて来る。そして、その感情には、常に、ある具体的な行為が伴っている。しかし、この行為をそのまま実践するか、それを他の行為に変えるか、その行為をやめるか、迷いの中で佇んでしまったままでいるかは、深層心理と表層心理との兼ね合いで決定される。深層心理が生み出した感情は、自分の意志に関係なく、生まれて来る。勝手に、心の奥底で生まれて来る感情だから、深層心理と名付けられたのである。深層心理が、つまり、自分の心が、勝手に、判断し、ある感情とある行動の仕方を作り出すのである。愛情や憎しみや怒りや恨みなどの感情は、もちろんのこと、全ての感情は深層心理から生まれて来る。そして、この感情は、常に、ある具体的な行動を指示する。つまり、人間は、怒ると、怒りの感情が湧いて来るだけではなく、殴ってやりたいなどの欲望が伴うのである。同様に、愛情を感じた時には、愛の感情が湧いて来るだけではなく、愛の告白したい、抱きしめたいなどの欲望が伴うのである。しかし、大抵の場合、そのまま、行動するようなことはしない。表層心理は、殴った後の刑罰や復讐を考慮して、深層心理を押しとどめ、実行しないのである。表層心理は、愛の告白をしたり、抱きしめたりした後で、相手に受け入れてもらえなかったり、嫌われたりして、自分の心が傷つくことを恐れ、深層心理を押しとどめ、実行しないのである。しかし、時には、深層心理が強すぎて、表層心理が抑えられないことがある。そのような場合、当然、殴ったり、愛の告白をしたり、抱きしめたりする。つまり、殴ったり、愛の告白をしたり、抱きしめたりするのは、そこに、強い深層心理が存在していることを意味しているのである。犯罪は、常に、表層心理が深層心理が抑えきれられなかった時、あまりに、深層心理が強すぎて、表層心理がほとんど機能しなかった時に起こる。ストーカーも、深層心理が強すぎる人の一人である。ストーカー殺人を起こして、自殺する人が多く存在するのは、その人の表層心理は、殺人行為の後の非難や刑罰を知っているが、深層心理を押しとどめることができず、深層心理の言うがままになって、罪を犯してしまうのである。そして、犯罪の後、社会的な非難や刑罰が待ち受けているのがわかっていて、それらに堪えられそうにないから、自殺するのである。だから、ストーカーは、自分の行っていることは、不正な行為だとわかっているのである。しかし、深層心理が強すぎて、表層心理が止められないのである。マスコミは、よく、ストーカーの行為を、精神異常者の行為のように言うが、そうではない。深層心理を克服できなかったり、回避できなかったりした者たちの悲劇なのである。誰しも、失恋しても、すぐには、相手を忘れることができず、未練が残ってしまう。つまり、誰しも、深層心理は、ストーカーの心情に陥るのである。しかし、ほとんどの人は、表層心理がそれを抑制するから、ストーカーの行為を起こさないのである。そうしているうちに、自然と、徐々に、冷静に現状を認識できるようになると共に、相手に対する愛情が冷めていくのである。しかし、深層心理は、悪い要素ばかりを持っているのではない。良い要素も多分にある。感動や同情心も、深層心理が起こしているのである。誰しも、自然の風景に感動して、歓声を上げることがある。この、感動、歓声も、深層心理がもたらしたものである。表層心理は、歓声を上げても、周囲に迷惑にならず、非難されない場合は、これを抑圧しない。日本人は、日本のサッカーチームがゴールすると、感動して、大きな声を上げたくなる。もちろん、それも、深層心理のなせる業である。そんな時、サッカースタジアムにいれば、周囲の人と一緒に歓声を上げるが、家やアパートにいれば、表層心理が、近所の人の迷惑や非難を考慮して、声を低めたり、声を出さないようにしたりする。また、大震災の被災者に同情して、義援金を出したいという気持ちも、深層心理の思いである。そして、表層心理が、自分の経済状況を考慮して、金額を決めたり、時には、出さなかったりする。このように、私たちの日常生活での行為の全ては、深層心理に始まり、深層心理と表層心理の兼ね合いで決定される。さて、ラインのことであるが、ラインの怖さは、相手が自分のそばにいず、互いの声が聞こえず、互いの表情が見えないところにある。その怖さは、フェイスブック、ツィッター、チャット、ブログ、ブログのコメントなど、メール形式全てのものに及んでいる。相手が見知らぬ人であっても、見知った人であっても、そばにいれば、相手の反応を直接に知ることができるから、それを見て、自分の言動を修正することができる。しかし、相手がそばにいないと、見知らぬ人の人の場合であっても、見知った人であっても、相手の反応が、現在、直接に自分の身に及ぶ可能性が無いから、表層心理が、自らの言動を強く抑制しようとはしない。そんな場合、往々にして、深層心理の独壇場になり、言いたい放題の状態に陥る。そして、こちらが言いたい放題に言えば、相手も言いたい放題に言うようになる。言葉の激しい応酬が始まり、挙句の果てに、それは非難合戦にとどまらず、殺人事件に繋がることがあるのである。また、相手のそばにいないと、誤解を生じやすい。例えば、相手が見知った人であっても、こちらが、相手を軽くたしなめるつもりで、「バカだなあ。」と言っても、相手は、本当に馬鹿にされたと誤解し、こちらを罵倒してくることがある。そうすると、こちらも、激しく言い返す。そうして、後々まで、しこりが残り、これまでの仲の良い関係が簡単に壊れることがある。だから、メール形式のものには、深い注意が必要なのである。韓国の俳優で、自分のブログのコメントに、多くの批判文が書き込まれ、自殺人がいる。その人は、真面目に捉えすぎたのである。ブログのコメントは、大抵の場合、見知らぬ人が書き込むので、書き込み者には、表層心理の抑制が無く、深層心理の思いのままなのである。つまり、言いたい放題に言っているだけなのである。だから、ブログのコメントなどは、軽く読み流すか、最初から読まない方が良いのである。また、ラインなどをする場合、自らの言葉にひたすら注意し、相手から失礼な言葉があっても、あまり真剣に取り合わないことである。そのような失礼な言葉は、表層心理の反省や抑制の無い、深層心理だけによる、無責任な、思い付きの言葉だからである。また、子供は、社会性が乏しく、表層心理の抑制や反省の成長が遅れているので、深層心理のままに言ったり、行動したりすることが多い。よく、「子供は正直だ。」と言われるが、この現象は、簡単に評価すべきではない。正直であるとは、深層心理のままに言ったり、行動したりすることだからである。だから、時として、子供は、大人以上に残酷なことをする。その最たるものが、いじめである。大人の世界にもいじめは存在するが、子供の比ではない。残酷な事件は、自分の心に正直に行動した時に、つまり、表層心理の抑えが無く、深層心理の言うがままに行動した時に、起こるのである。だからと言って、嘘を言うことを推奨しているのではない。もちろん、正直に言えば、相手を傷つける場合は、嘘が言った方が良い。つまり、何事も臨機応変に捉え、正直にこだわってはいけないのである。しかし、このように、確かに、深層心理には、厄介な要素が多分にあるが、それぞれの人の深層心理には、それぞれの傾向があるから、その傾向を掴めば、それに対処することができる。自分の深層心理の傾向を掴むと共に、自分の周囲の人の深層心理の傾向、そして、人間一般の深層心理の傾向を掴む必要があるのである。深層心理の別名が、性格である。例えば、感情の起伏の激しい人は、必ず、周囲に存在する。時には、自分自身がそうだったりする。感情の起伏が激しいとは、深層心理が強いことを意味する。大声で笑う人は、例外なく、大声で泣く。また、深層心理の強い人は、自らの心情に正直に言動したり、行動したりすることが多い。そのために、魅力的に見えることがある。そして、友人や恋人に、そのような人を選んで、手痛いしっぺ返しを受ける人が多い。深層心理の強い人は、感情の起伏が激しく、精神的に不安定な時が多く、相手の思惑を気にせず、言動したり、行動したりするからである。しかし、深層心理の無い人は存在しない。そのような人は、何の感情も抱かず、何の行動もしない。だから、人間である限り、強弱はあっても、必ず深層心理を持っている。そして、深層心理の強弱は、生まれつきのもの、所謂、先天的なものである。だから、誰しも、自らの深層心理を強くしたり、弱くしたりすることはできない。私たちにできることは、深層心理が産み出した気持ちと行動の仕方を、表層心理で、どのようにコントロールしていくかを学ぶことである。例えば、ストーカーに陥るのは、ほとんど男性であるが、男性は、恋愛関係に入る前には恋愛に憧れを抱かず、恋愛関係に入ってからは、万が一の失恋を予想して、深層心理の虜にならないように、常に、表層心理が深層心理を警戒することが必要である。女性の場合、失恋すると、相手の男性を憎悪し、軽蔑して、相手の男性より上位の立場に上ることができるから、深層心理の言うがままになることは少なく、ストーカーになる可能性が小さいのである。さて、私たちの一日は、深層心理と表層心理の兼ね合い、葛藤から始まるのである。まだ寝ていたいという深層心理と、このまま寝ているわけにはいかない、起きてしなければいけないことがあるという表層心理の、兼ね合い、葛藤から始まるのである。そして、深層心理と表層心理の兼ね合い、葛藤が連続し、そして、一日が終わるのである。人生も、また、この繰り返しである。これが、ニーチェの永遠回帰の思想に通じている。問題は、私たち一人一人が、この現象をどのように捉えて、生きていくかである。


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