真理の探求 ― 究極の真理を目指すあなたへ by ぜんぜんおきなわ

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第五十五回 不立文字(その七)

2017-07-08 11:17:48 | 宗教
前回、ベルクソンは禅僧ではなくフランスの哲学者だと言いましたが、それは半分ホントで、半分ウソです。

確かに外見や肩書だけを見れば、ベルクソンは間違いなく禅僧ではありません。

しかしそれで終わってしまっては、「かんじんなことは目では見えない、心の眼で見るんだ」というキツネに笑われるだけです。

頭をまるめて、何百年続く禅寺で修行し、結果そこの住職になったとしても、そのお坊さんが本当に不立文字であるかは、わからないものです。外見だけかもしれません。

それに比べたら、ベルクソンのようにまったく禅寺という組織と関わりのない孤高の哲学者の方が、中身はよほど禅僧だと言えるかもしれません。

つまり、不立文字というのは、禅仏教という狭いカテゴリー内の専門用語で終わるものではないのです。仏教組織とまったく関係なく、ただひたすら不立文字を生きている人もいるわけです。

もちろん、ベルクソンの哲学と禅仏教が、まったく同じだということを言いたいのではありません。しかし、

禅VS哲学
東洋VS西洋
鈴木大拙VSベルクソン

というカテゴリー分けをして、互いにまったく別物であるとする視点からは、「対象を抱きしめようとして永遠に満たされない欲求」しか残りません。

たくさん本を読んでも欲求不満が解消されない人がいるなら、それはその人が真理と一体化していないことを意味しています。

分析による欲求不満を、分析によって解消しようとしても無駄です。だからベルクソンは「直観」だと言ったわけで、そのことを「対象の内部に身を移すための同感」と言ったわけです。

ベルクソンは「知る」と言っても、「相対」を知ることと、「絶対」を知ることとは、まったく違うのだと、繰り返し言っております。例えば次のように言います。

以下引用

哲学の定義と絶対の意味をそれぞれ比較すると、哲学者のあいだに、一見相違があるにもかかわらず、物を知るのに非常に違った二つの見方を区別する点ではぴったり合っていることに気づく。

第一の知り方はその物のまわりを回ることであり、第二の知り方はその物のなかに入ることである。

第一の知り方は人の立つ視点と表現〔表象〕の際に使う記号〔象徴〕に依存する。第二の知り方は視点には関わりなく記号にも依らない。

第一の認識は「相対」にとどまり、第二の認識はそれが可能な場合には「絶対」に到達すると言える。

引用おわり
(思想と動くもの ベルクソン 河野与一訳 岩波文庫 249頁)

ひたすら対象を分析し、視点をたくさん増やしたとしても、それだけでは、人は真理を抱きしめることはできません。確かに分類は便利な道具です。しかし、道具を使うのではなく、使われているようでは、道はひたすらに遠いのです。

確かに、哲学、宗教、詩、絵画、音楽・・・それらの外見はまったく違います。

顔だけで判断すれば、それらはまったく別物です。しかし常識は、「人を見た目で判断してはいけない」というあの古いフレーズを何度も我々に語りかけます。

「心の眼で見るんだ」

これはサン・テグジュペリに言われるまでもなく、誰もが心の奥底で感じていることです。言われる前から感じているからこそ、サン・テグジュペリにそのように言われて、「ああ、そうだ」と思うことができるのです。

古典とは、誰もが考えたことのない新しい思想を述べた書物ではありません。我々が心の奥底で知っていることを指摘する書物なのです。我々は、知ってはいても忘れているのです。

禅が指差す月の光も同じです。我々は月光の美しさも、その神秘もよく知っている。しかし、すっかり忘れてしまっているのです。

不立文字の目的は、我々に難解な禅の教理を勉強させることではありません。

その真の目的は、心の地中の奥深く、忘れ去られた心眼を、我々自身の手で発掘させることなのです。
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