真理の探求  ― 究極の真理を目指すあなたへ by ぜんぜんおきなわ

本が出ます。
タイトル:「神の子への手紙」
2017年8月1日 刊行

第六十二回 心は物を触知している(その四)

2017-07-15 09:57:25 | 思索
偉大な芸術家は、次の世代の芸術家に大きな影響を与えます。

モーツァルトがベートーヴェンに大きな影響を与えたことは音楽史研究において定説になっているようですが、モーツァルトがバッハから大きな影響を受けたことも定説となっているようです。

モーツァルトは、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685-1750)とは会ったことがありません。しかし、その息子には少年時代に会ったことがあります。

バッハの息子、ヨハン・クリスティアン・バッハ(1735-1782)は、イギリスで出世して、王室専属の音楽師範となりました。その時、父親と旅興行をしていたモーツァルト少年と出会い、かなり年齢の離れた親友となります。

クリスティアン・バッハは、バッハ一族の巨大な音楽体系をモーツァルトに教え、少年はその柔軟かつ鋭敏な感受性でその音楽を吸収したのです。

また、大人になったモーツァルトは、ウィーンで大の音楽愛好家、スヴィーテン男爵と親しくなります。男爵は数少ないモーツァルトの理解者の一人でしたが、バッハの楽譜を大量に持っておりました。大人になったモーツァルトは、そのスヴィーテン・コレクションを自由に閲覧することができたので、そこで第二のバッハ学習ができました。

こうして、モーツァルトのバッハ学習は深いものとなり、その音楽の礎となったのです。

しかし、バッハは後世の人達に影響を与えるために音楽を作ったわけではありません。彼はただ、物(もの)をつくっただけなのでしょう。リルケはこの点について、次のように言っております。

以下引用

芸術は結局、芸術家を創りだそうとは考えていません。

芸術はだれひとり自分の方へ呼びよせようと思っていません。そうです、芸術にとっては、影響を及ぼすことなどまるで問題にならないのだというのが、かねてからの私の推測なのです。

しかし、尽きない源泉のなかから押えがたくわきでた芸術の形姿は、奇妙に静かに、優越的に、事物(もの)の間に立っているので、その生来の無私と、自由と、力強さとによって、知らず知らず、あらゆる人間の活動にとっての規範となるというようなこともありうるのです。

引用おわり
(リルケ 芸術と人生 富士川英朗編訳 白水社 22頁)

リルケの言うことは、芸術家だけにとどまらず、宗教家や哲学者にもあてはまると思われます。

イエスや仏陀は、自分たちの信者が20億人になることを目標に活動をしたわけではないでしょう。イエスは自分のことをキリスト教の開祖だと思ったことはないですし、仏陀は自分のことを仏教の開祖だと思ったことはないでしょう。

彼らの死後、信者たちが集まって大きな宗教団体となってしまっただけです。それはイエスや仏陀の意図したことではなく、ましてや世界中の葬式をとりしきる専門家になって欲しいと思ったことはないでしょう。

「俺が死んだ後、おまえたちは立派な坊さんになって、葬式をたくさんやってどんどん稼いでくれ」と彼らが遺言をのこしたわけではありません。

彼ら開祖と言われる人達は、ただ、心に触知した「もの」について語っただけで、誰一人、自分の方へ呼びよせようと意図したわけではありません。

ただ、彼らの形姿は、奇妙に静かに、優越的に、事物(もの)の間に立っていたので、その生来の無私と、自由と、力強さとによって、知らず知らず、あらゆる人間の活動にとっての規範となってしまったのでしょう。

彼らは「空(くう)」である人間です。そして、芸術作品は「空(くう)」である事物(もの)です。それらは共通しています。その静けさと無私は、誰も呼びよせなくとも、様々な人を引きつけます。我々の心がそうした「空(くう)」を触知するからです。

誰も呼ばない声が、最も我々の心に響く声です。心は物を触知している。

我々が無私や静けさに惹かれるのは、心自身が無私や静けさという故郷を懐かしむからでしょう。
『スピリチュアル』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 第六十一回 心は物を触知し... | トップ | 第六十三回 心は物を触知し... »

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。