真理の探求  ― 究極の真理を目指すあなたへ by ぜんぜんおきなわ

本が出ます。
タイトル:「神の子への手紙」
2017年8月1日 刊行

第五十九回 心は物を触知している(その一)

2017-07-12 12:05:08 | 思索
能の金春禅竹(1405-1471)は、一休さんと親交があり、大きな影響を受けたという話があります。

私は歴史学者ではないので、それが厳密な史実として本当にあったか否かは知りませんし、特に調べてみようとも思わないのですが、そういうことがあったとしても不思議ではないと思います。

「禅竹」という名の、「禅」や「竹」は一休さんの人生におけるキーワードですし、能の世界における礎(いしずえ)となった金春禅竹の心が、一休さんという「狂狷(きょうけん)」に触れていたとしても、私は特に違和感は感じません。なお、一休さんが竹林の近くで幼少期を過ごしたのは本当のようです。

禅竹が一休さんと禅の話をして、そこで培われた教養が能の礎を築くのに役に立ったというよりも、何気ない附き合いや、どうでもいいような普段の会話が、禅竹の心に触れたのではないかと思うのです。

「影響を受ける」と言うと、ある大きな風によって、小さな心が動かされ、その風に染まるような印象がありますが、不立文字を生きるある人が、また別のある人を目の当たりにするということは、そうした染色という意味合いよりも、「心が物に触れる」という瞬間だと言う方が、私は正確だと思うのです。

この点、池田晶子(1960-2007)はこう言います。

以下引用

究め尽くさねばやまじという不屈の志によって、人生を考え、自ずから窮理へと至るそのような者の人生、その「人間」を思うことこそが、歴史を思い、歴史と出会うことなのだとは、しかし、これ以上どう説明しようがあるものだろうか。

しかし、心を素直に人生に向かうなら、誰もがそんなことは知っていることなのでもある。学問上の諸学説より、学者の顔の方がよく見えることがあるが、学問上の学説とは別の、家庭にあったり友人と付合ったりする時のその人の、人となり、それを誰もがある種の触覚によって必ず触知している。

心は物を触知している。

言行の不一致を見れば怪しく思い、一致を見れば信頼する。そういう自分の心の動きに敏感であろうと努めれば、人間の真贋がそのまま学問の真贋であるとは、自ずから知られるはずである。

その人は必ずしも聖人のように現われるとは限らないだろう。変人であったり奇人であったりする方が多いかもしれない。

しかし、究め尽くさねばやまじという稀なる志が、そのような形で現われる方がむしろ自然であろう。孔子が、「君子」の次に「狂狷」を良しとしたのは、まさにこの事情を指すものである。

引用おわり
(新・考えるヒント 講談社 199-200頁)

「究め尽くさねばやまじという稀なる志」と池田晶子は表現しておりますが、彼女のこうした表現が出る二千年前に、孔子は「朝に道を聞かば、夕べに死すとも可なり」と表現しております。

結局、真理の探求とは、「真理」という言葉のレッテルを突き破って、その向う側に行くエネルギーのことに他なりません。

それは勉強としての探求とは次元の異なるエネルギーで、そうしたエネルギー体が人間の形をしてこの世にあらわれたものが「狂狷」なのでしょう。

狂狷を見た金春禅竹は、破戒僧あるいは風狂禅師と呼ばれた一休さんに比べれば、品行方正な人だったのかもしれません。

しかし、外見は破れかぶれであっても、一休さんの「姿」には能の美しさに通じる美があった。「天才は天才を知る」という言葉がありますが、やはり狂狷は、鏡を通してそこに狂狷を見たのでしょう。

日本語の場合には、「物」は物質的なものを指すにとどまらず、「もののあはれ」や「物思い」といった言い方があるように、「物」は有形、無形を問いません。

心がそうした有形、無形の「物」を触知するというのは、宇宙における最大の奇蹟とも言えます。これから数回にわたって、このテーマをもとに、言葉を広げていきたいと思います。
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