□「トランプ氏の通商政策、真の問題は通貨」-保護主義では貿易政策を改善できない(WSJ日本語版:1月27日)
by JOHN D.MUELLER
◆ トランプ大統領も彼の経済顧問も誰一人として耳にしたことがないと思われるのが「トリフィンのジレンマ」だ。
このジレンマに対する解決策を見出さなければ、トランプ氏の経済・通商政策は失敗するだろう。
トリフィンのジレンマとは基軸通貨に固有の、国内政策と国際金融秩序との矛盾である。
◆ 金本位制の下では、金融システムを通じて財政赤字を賄うことができない。
金本位または銀本位制の下では、米国史上、長期にわたるインフレを経験してこなかった。
本格的なインフレ(またはデフレ)は紙幣のみによって引き起こされてきた。
◆ 貴金属からの離脱は1世紀以上前から始まった。
英国の専門家たちは1922年のジェノア会議で、第一次世界大戦中の債務を金で償還するのを未然に防ぐために、
外国為替準備を勧奨することに成功した。
ここで、百年戦争を経て1440年にジェノアで生まれた国際金本位制に終止符が打たれた。
◆ 自国通貨が準備通貨と結びついている国にとって、ドル準備の購入がインフレ(売却がデフレ)を引き起こすことになる。
さらに、信用の複製が準備通貨国の物価上昇ベースを速め、財の競争力低下を招き、世界の債権国から債務国への転落につながる。
第二次世界大戦後のブレトン・ウッズ体制(金ドル本位制)は1968~71年に崩壊した。
71年以降、国際決済は主にドル紙幣で行われてきた。
◆ 他国の純輸出と米貿易赤字の関係
この結果、トリフィンのジレンマが生まれた。
経済学者の多くは全世界の順輸出額の合計がゼロになると誤って仮定している。
実際には国際金本位制に参加する国々の純輸出額の合計は、世界の金準備の増加額の合計に等しかった。
(その額は世界の金輸出額に等しかった)
このため、世界の金融政策は景気に対して反循環的だった。
世界の財の価格が下落すれば、金採掘から得られる利益が増大したのだ。
◆ トリフィンは、外国で(例えば)ドル準備が獲得されると、それが財で変換されなければならないため、準備通貨に基づく
金融システムが持続不可能であることを示した。
言い方を変えると、ドル準備の増加額は世界の他の国々の純輸出額と等しくなり、米国の貿易赤字とも等しくならねばならない。
米国の貿易赤字と財政赤字は、金融改革よりも貿易に焦点を当てたトランプ政権のいかなる取引からも影響を受けることはないだろう。
◆ トリフィンのジレンマの解決策として、主に三つの案がある。
一つは、現在のドル本位制の下でなんとかやっていくことで、これは忍従する外国人と郷愁にふける一部の米国民によって支持されている。
二つ目は、国際通貨基金(IMF)を、準備資産(SDR)を発行する世界の中央銀行にするkとだ。
欠点は、IMFが財を生産していないため、こうしたタイプの基準が非常に政治色の濃いものとなり、SDRの分配がどうしても恣意的になることだ。
◆ 金本位制の現代版
三つ目は、近代化された国際金本位制を採用することだ。
トリフィンのジレンマを放置することのリスクは大きい。
もしトランプ氏がトリフィンのジレンマを無視すれば、クリントン財団が従属国家から得た巨額の資金を貯め込むの使った世界的な
クローニー・キャピタリズム(縁故資本主義)を必然的に後押しすることになるだろう。
トランプ氏お気に入りの保護貿易主義は、分かり易いが簡単に論破される誤った考え方だ。
関税で輸入を抑制できるにしても、貯蓄と投資のバランスには影響しないため、貿易収支を改善させることはできない。
それどころか自国通貨の価値が高くなりすぎ輸出が減少する。
◆ 1971年から2015年まで、米国の経常赤字は対GDPで93%になった。
原因はトリフィンのジレンマだ。
ドル準備高の増加は他国の貿易黒字(米国の赤字)と等しくなる。
途方もなく重い準備通貨としてのドルの役割を終わらせ、米国と世界の歴史で昨日してきた唯一の通貨基準である金に
その役割を譲るには、恐らく米国建国の父、アレクサンダー。ハミルトン級の交渉人が必要になるのかも知れない。
by JOHN D.MUELLER
◆ トランプ大統領も彼の経済顧問も誰一人として耳にしたことがないと思われるのが「トリフィンのジレンマ」だ。
このジレンマに対する解決策を見出さなければ、トランプ氏の経済・通商政策は失敗するだろう。
トリフィンのジレンマとは基軸通貨に固有の、国内政策と国際金融秩序との矛盾である。
◆ 金本位制の下では、金融システムを通じて財政赤字を賄うことができない。
金本位または銀本位制の下では、米国史上、長期にわたるインフレを経験してこなかった。
本格的なインフレ(またはデフレ)は紙幣のみによって引き起こされてきた。
◆ 貴金属からの離脱は1世紀以上前から始まった。
英国の専門家たちは1922年のジェノア会議で、第一次世界大戦中の債務を金で償還するのを未然に防ぐために、
外国為替準備を勧奨することに成功した。
ここで、百年戦争を経て1440年にジェノアで生まれた国際金本位制に終止符が打たれた。
◆ 自国通貨が準備通貨と結びついている国にとって、ドル準備の購入がインフレ(売却がデフレ)を引き起こすことになる。
さらに、信用の複製が準備通貨国の物価上昇ベースを速め、財の競争力低下を招き、世界の債権国から債務国への転落につながる。
第二次世界大戦後のブレトン・ウッズ体制(金ドル本位制)は1968~71年に崩壊した。
71年以降、国際決済は主にドル紙幣で行われてきた。
◆ 他国の純輸出と米貿易赤字の関係
この結果、トリフィンのジレンマが生まれた。
経済学者の多くは全世界の順輸出額の合計がゼロになると誤って仮定している。
実際には国際金本位制に参加する国々の純輸出額の合計は、世界の金準備の増加額の合計に等しかった。
(その額は世界の金輸出額に等しかった)
このため、世界の金融政策は景気に対して反循環的だった。
世界の財の価格が下落すれば、金採掘から得られる利益が増大したのだ。
◆ トリフィンは、外国で(例えば)ドル準備が獲得されると、それが財で変換されなければならないため、準備通貨に基づく
金融システムが持続不可能であることを示した。
言い方を変えると、ドル準備の増加額は世界の他の国々の純輸出額と等しくなり、米国の貿易赤字とも等しくならねばならない。
米国の貿易赤字と財政赤字は、金融改革よりも貿易に焦点を当てたトランプ政権のいかなる取引からも影響を受けることはないだろう。
◆ トリフィンのジレンマの解決策として、主に三つの案がある。
一つは、現在のドル本位制の下でなんとかやっていくことで、これは忍従する外国人と郷愁にふける一部の米国民によって支持されている。
二つ目は、国際通貨基金(IMF)を、準備資産(SDR)を発行する世界の中央銀行にするkとだ。
欠点は、IMFが財を生産していないため、こうしたタイプの基準が非常に政治色の濃いものとなり、SDRの分配がどうしても恣意的になることだ。
◆ 金本位制の現代版
三つ目は、近代化された国際金本位制を採用することだ。
トリフィンのジレンマを放置することのリスクは大きい。
もしトランプ氏がトリフィンのジレンマを無視すれば、クリントン財団が従属国家から得た巨額の資金を貯め込むの使った世界的な
クローニー・キャピタリズム(縁故資本主義)を必然的に後押しすることになるだろう。
トランプ氏お気に入りの保護貿易主義は、分かり易いが簡単に論破される誤った考え方だ。
関税で輸入を抑制できるにしても、貯蓄と投資のバランスには影響しないため、貿易収支を改善させることはできない。
それどころか自国通貨の価値が高くなりすぎ輸出が減少する。
◆ 1971年から2015年まで、米国の経常赤字は対GDPで93%になった。
原因はトリフィンのジレンマだ。
ドル準備高の増加は他国の貿易黒字(米国の赤字)と等しくなる。
途方もなく重い準備通貨としてのドルの役割を終わらせ、米国と世界の歴史で昨日してきた唯一の通貨基準である金に
その役割を譲るには、恐らく米国建国の父、アレクサンダー。ハミルトン級の交渉人が必要になるのかも知れない。