住職のひとりごと

広島県福山市神辺町にある備後國分寺から配信する
住職のひとりごと
幅広く仏教について考える

読経のすすめ

2017年06月11日 16時08分13秒 | 仏教に関する様々なお話
毎朝四時四十分に起きます。洗面を済ませ、本堂に御供えする三十五ヶ所分の仏飯、お茶湯の準備をして、午前五時の鐘を撞きます。はじめに一つ撞き始めの鐘を撞き、余韻の終わる間隔を空けながら五回撞いて庫裏に戻ります。仏飯を乗せたお盆を本堂に運び、次に衣を着て御茶湯を接ぐ薬缶を持って本堂に参ります。各所に御供えをして、燈明に火を入れ、点香してから、四十分ほどのお勤めをいたします。常用経典である理趣経の前後に讃を唱えたり、偈文を唱えたり。その日該当する月命日の檀徒戒名を読み上げ馨を鳴らして追善といたします。それが、土日祝日にかかわりなく、國分寺の毎日の習慣となっています。

僧にあってはごく当たり前のことではありますが、こうして毎日続けるということは誠によきことであって、それを毎日しなくてはいけないという受け取り方ではなく、お寺に住まうことで良き習慣に自らの生活が守られていることは誠にありがたいことであると思うのであります。

そして、特に毎日のお勤めの中で経文を読誦するということは格別に功徳多きことであって、ほんとうは誰もが家の仏壇に向かって、読経し、仏様御先祖様方に供養のまことを捧げることは大事な勤めでもあります。読経は、仏前勤行次第をお唱えいただきましても、また時間の限られたときには般若心経だけでもよいのです。とにかく毎日声を出してお唱えするということが大切であり、明るく健康な生活を送る上でも欠かせないことであろうかと思います。

読経は、姿勢を正し、お腹をふくらませて息を吸い込み、声を出しながら長く息を吐くことになります。これは一つの呼吸法であって、またありがたい経文をお唱えするわけですから、余計なことを考えることなく、心清々しく、落ち着いた心をもたらすものです。
ところで、座禅の要諦に調身、調息、調心があります。調身とは、背筋を伸ばし安定した姿勢を保つことです。調息とは、お腹をふくらませて息を吸いお腹をへこませて息を吐く、それをリズミカルに行うことです。調心とは、一つのことに心を集中させることです。実は読経は、この三つの座禅の肝心なことをすべてクリアしてしまうものだという研究結果があります。

脳内ハピネス神経と呼ばれるセロトニン研究の第一人者有田秀穂先生によれば、座禅も読経も脳内の変化は同じことが起こるのだそうで、声を出す呼吸法が読経であり、声を出さないのが座禅であるということです。読経中、字を一生懸命追いかけるということは、想念がそこから湧いてくることはなく、読むことに集中していなくてはなりません。難しい漢字をリズムよく読むことを繰り返すことは、ひたすらに読むこととなり、それはつまり自然と集中した精神状態を作り出すことになるというのです。

読経は、なんの想念も湧かないリズミカルな集中であり、集中してやる呼吸法の一番楽な方法であるともいいます。そのことによって、すっきり爽快な意識をつくり、平常心を維持し、交感神経を適度に興奮させ、痛みを軽減させて、よい姿勢を維持する。よいことずくしの幸福感をもたらすセロトニン神経を働きを高める効果があり、だからこそ読経するとさわやかな清々しい心持ちとなるのです。

同じ声を出すならカラオケがいいとお考えになる方もあるかも知れません。が、歌詞があると言語脳が働いて、セロトニン神経の活性には繋がらないのだとか。毎朝仏壇に御供えし、金を叩くだけでなく、十分程でも良いので、読経を毎日の習慣にしていただきましてはいかがでしょうか。読経して、是非幸福感一杯の毎日をお過ごしいただきたいと思います。

(参考文献 瞑想脳を拓く 有田秀穂・井上ウィマラ 佼成出版社)


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (蓮の花)
2017-06-13 23:22:55
座禅の要諦に調身、調息、調心ー三位一体ですね。
呼吸のとりかたが詳しく書かれているので、一人でも練習できそうです。
記事の内容が清々しく、仏教の知識に重苦しい感じがしないですね。

追伸:坐禅と座禅は違うのでしょうか?
蓮の花様へ (全雄)
2017-06-18 18:49:37
お越しくださり、コメントを残してくださってありがとうございます。

難しいことはわかりませんが、坐禅も座禅も同じことと思います。インドでは坐禅とは言いませんでしょうから。
Unknown (Unknown)
2017-06-28 20:57:49
初めて来訪しました
内容も解りやすく非常にためになります
日々の更新楽しみにしています
unknownさまへ (全雄)
2017-07-08 09:52:50
はじめまして。お越しくださり、コメントも残してくださりありがとうございます。

なかなか毎日というわけにはまいりませんが、定期的に更新してまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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