キサラギ・ジュンの税務小説

『黄金武将』翻訳『天皇財産と課税』『SCOOPED』ニュージーランド活劇『大統領になれなかった男』『NORADテープ』

グローバル企業と課税ーグーグル課税・アマゾン課税

2017-06-25 11:15:14 | 国際税務研究ブログ
  1. 村国際税務研究所


  2. □問題の所在

  3.  米国のインターネット通販大手「アマゾン・コム」(本社米国シアトル)の関連会社、アマゾン・コム・インターナショナル・セールス社(本社米国シアトル)が、東京国税局(外国法人部門)の税務調査を受け、日本国内の事業をめぐり、2003、2004、2005年12月までの3年間について、140億円前後の追徴課税処分を受けていたことが共同通信の記事(2009/07/05)でわかりました。

  4.  アマゾン側は法人所得決定処分を不服として異議申し立てを行い、審理に先立ち、日米租税条約による米国歳入庁と2国間協議を申請したというものです。
  5.  外国法人の日本支店に対する法人税の課税は、その企業が自主的に帳簿を書き、その利益に基づき確定申告が行われる「自主申告」が原則です。アマゾンの場合は、世界中でインターネットを介して販売している電子グッズについては、それを買った消費者の国に、「店舗」・「事務所」・「販売場」あるいは、注文を受け付ける社員、「アフターサービス拠点」(アマゾン独自のもの)、「物流拠点」(アマゾン直営のもの)などが存在しないため、帳簿を書く「日本支店」が存在しない・・ので、確定申告はしていないということです。店舗などのことを国際的には「恒久的施設」(英語でPE(ピーイー))といい、租税条約が結ばれている国との間には「恒久的施設なければ課税せず」の原則があり、互いに相手国にPEがあるかないか争われることがあります。アマゾンドットコムはアメリカ法人ですから当然、この原則が働くわけで、しかし、課税当局の現場(東京国税局)は、アマゾンのPEはある、と「事実認定」したようです。




  6. 1.インターネット・クラウド社会とは

  7. 情報社会(IT)が社会に及ぼす影響を考えるうえで絶対におさえておかなければならないことがあります。インテル創業者、ゴートン・ムーアが1965年に提唱した「ムーアの法則」です。IT産業は40年たった今もこのムーアの法則に相変わらず支配され続けており、これから先もかなり長い間、支配され続けるだろうということです。(『ウエブ進化論―本当の大変化はこれから始まる』(梅田望夫 ちくま新書 2006)

  8.  ムーアの法則とは、「半導体性能が1年半で2倍のスピードで増加することからその値段が劇的に下がっていく」、いわゆるチープ革命を指しています。

  9.  第一次インターネットバブルの崩壊の時代(2000年春)には何も変化が行らなかったように見えましたが、情報が氾濫し、玉石混交だったネット社会の中から秀逸な情報をみつける検索技術(WEB検索)、あるいは万人のニーズは万様なので、そのニーズに合った情報をコンピュータの力で提供する技法(ネットサーフィン)なども開発されてきました。

  10.  これは駅中の本屋の店先に陳列されているものの中から目的物を探すという現実社会から、インターネットの検索を通じて、世界本屋(そこには数百万冊が用意されている)から書籍を電子媒体にダウンロードするか、大和宅急便でその日のうちに配送させるという行動に変化していくことを示しています。なんという時間の節約でしょうか。印刷業、著作業、出版社、流通業、テナント、交通システムそしてコンピュータ産業自身も整理淘汰されていくわけです。

  11.  複雑系経済学の研究家、ブライアン・アーサーという人がおります。その人が言うには(1)われわれが想像もしなかった完全に新しい産業が勃興する。(2)IT技術革新は18世紀の産業革命をしのぐ強烈な革新であるということです。

  12. 情報ハイウエイ構想が内外で叫ばれています。「ITインフラ」といわれる現象です。ITインフラは光ファイバーの普及で情報の伝達スピードを飛躍的に速くし、だれにでも届くように末端をチープに提供するというものですが、実際にはITインフラばかりが拡大したのではなく、「Iインフラ」が飛躍的に拡大しているのです。Iインフラとは情報そのものの生産、加工、抽出を行う「情報発電所」の建設です。その情報発電所は今までは、私たちのパソコン上にも存在し、細々と発電していたのですが、今ではITインフラの向こう側、クラウドの世界に存在するようになったのです。それがクラウド社会と称するものです。

  13.  具体的に見てみましょう。
  14.  世界的IT企業といわれるグーグル社は実はIT企業ではなく、I企業だったのです。グーグル社は先進コンピュータソフトウエアメーカー(たとえばマイクロソフト社)や世界規模情報小売業(たとえばアマゾン、楽天)などのビジネスモデルを展開するIT企業を超えて、情報そのものを生産・加工・抽出する技術を開発していきます。シリコンバレーにある巨大な施設で、あるいはアイルランドの先端企業優遇特区で数万台の小型コンピュータを使い、情報の超集中、超分散を繰り返しているのです。それだけではありません。グーグル・アマゾンのトータルな世界納税額を最小化するタックスプランを周到に用意しているのです。グーグルやアマゾンはもはや、単独の政府を相手にしていません。国境を越えたあるいは国境を意識しない超空間でビジネスを展開してるからです。彼らの「真の企業利益」を本当に納税すべき国はどこなのでしょうか?アメリカですか?EUですか?日本ですか?




  15. 2.Amazon課税http://www16.ocn.ne.jp/~zeek3333/clip_image0052.jpg



  16. Amazon.com創設者・CEO ジェフ・ベゾス

  17. 1995年、アメリカ・シアトルで現CEO のジェフ・ベゾスがAmazonを設立し、当時黎明期にあったインターネットでの物品販売をいち早く開始しました。現在ではアメリカのほか、カナダ、イギリス、日本、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、中国の9ヵ国に開設しています。全世界での売り上げは、合計481億ドル(2011年)を超え、インターネット通販のグローバルカンパニーとして多くのお客様に支持されています。Amazon では「Day One」という言葉がよく使われます。そこには毎日が常に新しい1日であるという意識を持ち、新しいことに挑戦していこうという精神が込められています。Amazon は、これからも世界中の皆様にご利用いただけるよう、常に「Day One」の精神で新しいことにチャレンジしていきます。

  18.  アマゾンの発電所はアメリカ、カナダ、イギリス、日本、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、中国、インド、ブラジルの世界11ヵ国に展開中です。

  19.  日本では、Amazon.co.jpは現在、東京、札幌カスタマーセンター、仙台カスタマーセンターのほか、市川、八千代、川越、常滑、堺、大東などのFC(フルフィルメントセンターの略、倉庫および配送センター機能)を拠点にビジネスを展開しています。 (2013年2月1日現在)

  20.  PE課税―国際インターネット事業者の場合


  21. 世界の本屋、アマゾンンは米国法人です。いわゆるITビジネスモデルは米国で開発しました。「地球上で一番早く、クライアントに品物を届ける」がモットーです。日本へは商品を流通させる倉庫(デイストリビューション・センター)を作り、日本法人の配送業者に運営させます。商品を内外の企業から仕入(輸入)れて消費者に売却し、手数料を取る現地問屋(これは販売業でも卸売業でもありません、仲介業です)も作りました。メンテナンス・返品・クレーム処理などに対応する日本法人に委託します。

  22.  そして、肝心のアマゾンの日本支店みたいな拠点はこの国に置かないことにします。電子社会では、ヒト・モノ・カネを投資国に投入しなくても、消費者と商品を売る者との契約は通信(インターネット・サーバー)を経由して商売ができるからです。むろん、情報収集や宣伝広告、系列社員訓練などは日本で行われますが、それらは「補助的業務」とみられ、日本で所得が発生する事業行為ではありません(2015年改正で一部は所得が発生することになった。⇒事業の所得について「帰属主義」への改正。物流倉庫にしてもアマゾンの本店のため、本の品ぞろいをすることは本店事業を補完する「内部取引」とみられ、内部取引から「国内源泉所得」は発生しません(⇒帰属主義への改正に伴い所得が発生する場合がある)。

  23.  こういう風にビジネスモデルを構築する結果、日本ではアマゾンの尻尾(日本で儲かった利益)が見えないステルス(Stealth)なPE「恒久的施設ゼロ作戦」が行われているのです。これを東京国税局が問題としたのです。


  24. □アマゾンの世界展開―機能集中と機能分散

  25.  アマゾン・コム社の2008年度の年次報告書などによると、課税された関連会社は「アマゾンドットコム・インターナショナル・セールス」(本社・米シアトル・外国法人)で、同社は販売問屋業務を「アマゾン・ジャパン」(日本法人・東京都渋谷区)に、物流業務を「アマゾンジャパン・ロジスティク」(日本法人・千葉県市川市)に委託し、それぞれ手数料を払っていますが、顧客(消費者)との販売契約や商品仕入契約はセールス社と直接行なっており、日本では支店等(PE)をおいて営業活動をしていないとされています。





  26. 3.IT・クラウド社会の国際課税の在り方

  27. (1)電子商取引の発展と税制とのかかわり

  28.  テキスト ボックス: 経済取引への影響テキスト ボックス: 税の側面テキスト ボックス: 流れ

  29. 出所:『電子取引と国際税制』(国際課税京都フォーラム世話人会代表 金子宏・立命館大学社会システム研究所所長・中村雅秀編・清文社 2002)資料4.「電子商取引:課税の基本的枠組」(平成10年10月OECD租税委員会報告書)24p.

  30.  インターネット社会、クラウド社会、超クラウド社会と進展していく今日、各国が独自の租税制度・徴収制度・調査執行をしていた時代はおわりました。サイバーな社会の反対側、われわれが住む現実の社会にも変革の波が押し寄せているのです。もっとも、国際課税の場面では、20世紀的発想の国際協調という意味合いのOECDの取り組みがありました。そこでは二国間の租税条約、あるいは多国間の租税協定や徴収共助などのツールを利用して「二重課税の調整」、「自国民の権益保護」、「相互に税の特典の供与」、「相互情報交換」、「特定の徴収共助」、「共同研究」など時局に対応した各改定・創設は行われてはいました。最近では、タックスヘイブン対策、あるいは世界IT企業への課税攻勢として多くの宣言がなされているのは皆さんの知るところです。

  31.  ところで国際課税とはなんでしょうか?今までは「国境を超える二国間の取引」のことを指していたのですが、今では「国境および相手国を意識しない超空間での取引」も含まれることになりました。
  32. (a)国際課税の原点―進出企業(外国法人)の利得に法人税、所得税を課税する方法論

  33.  進出企業(外国法人)の利得に課税する法人税法(138条)、所得税法(161条)は進出企業(外国法人)の「事業体が日本に拠点をおいて事業を行っているか」→これを「PEの有無」、また、「その事業の所得が日本の拠点に帰属しているか」→これを「帰属主義の適用」といいます。そして、ちょっと難しい概念ですが、その拠点に事業所得が帰属したかどうかはその所得と拠点が「実質的に関連しているか」によります。たとえば、外国銀行や投資証券等が為替や証券を対象に「グローバル・トレーディング」を展開しています。そして、会計損益は本店(NY)で集計されています。そして日本には日本支店が売り買いに関与した度合いに応じた日本利益を配賦してきます。実際の日本利益は日本支店の帳簿上で算出された利益であるべきですが、本店から見ると本国でかかった諸々の経費を年度末に一気に送ってくる(本店配賦経費)ので日本利益が大幅に減額される要因となります。

  34. それでも日本の拠点(日本支店や事務所)があるので、事業の所得を申告しなければなりません。
  35. ここで問題です。「それじゃ~拠点をなくせばいいじゃない」、「アマゾンやグーグルのように」という声が聞こえてきそうですね。
  36.  外国銀行や外国投資証券が日本に拠点を置かないで日本営業を行うことはできませんが、IT企業ならば可能なわけです。


  37. ①事業体の認識

  38. 事業体を認識されたくない多国籍企業はそれをクリアすべく「ハイブリッドな事業体」を地球上にばらまくようになりました。超空間取引では、ITインフラを駆使して地球上の有利な地点(たとえばタックスヘイブン所在のSPC)のサーバー拠点から取引(売買)を発信します。製品(情報)の製造(加工)はアイルランドの現地子会社へ、ノウハウのグループ間提供サービスはバミューダSPCへ、決済・運用などの金融取引はオランダBVへ、アジア流通はシンガポールPLCへというグループ企業の分散が進むサプライチェーン構想・・といった業種が2000年ごろから出現し始めました。そして本来のビジネスモデルを開発したオリジネーターは姿を隠していきます。課税されてはたまりませんから。

  39. ②事業の展開場所

  40. 「PEなければ課税せず」型の税制の下では、物理的ツール(ヒト・モノ・カネ)を使う事業が進出国内で展開(carry、ずっと保持していく)されていなければなりません。そしてIT産業の中枢、サーバー(記憶装置)の所在地はPEと認定されます。→WEB運用者やポータルサイト、プロバイダーは今のところ、(代理人)PEとはなりません。

  41.  国境を越えて事業活動、投資活動を行う場合に相手国にどのような事業体、拠点を置くか、税の節減を考えた場合の「拠点づくり」が租税戦略(タックスプラン)の中心課題でした。

  42.  多様な事業体(Diversified Entity)の中からその国で有利(所得に課税されず、あるいは本国送金に課税されない)な法的組織を選び、もっとも効率的な拠点をその国に置く(あるいは置かない)ことが拠点づくりだったのです。

  43. (b)国際課税の原点―消費税を課税する場合
  44.  日本の消費税は、課税事業者が国内において開業し、帳簿を書いていて、消費税申告書を提出するのを前提としています。アマゾンやグーグルは、日本の消費者との間で「インターネットを通じて販売される電子コンテンツ」にかかる消費税については局外者(国外事業者)なので、申告をしていません。平成27年度改正で一部改正されています。詳細は別途、掲載します。

  45.  日本の消費税法で云えば、国内において譲渡した製品、貨物、サービスは課税事業者が消費者から受領して国へ払うことが義務付けられ、その一方、国内で仕入れた製品貨物・サービスの消費税を購入先へ支払うものと規定されています。モノ・サービスの輸入については、引取り時内国消費税を払い、輸出では免税となります。また、国外における譲渡・役務の提供は不課税となります。電子的コンテンツをインターネット経由で外国からダウンロードした場合にもサービスを輸入して提供を受けていることになるので引き取り時課税が適用される余地はありますが、実際に通関はしておらず、国際郵便局も経由していないため把握できません。→対価が1万円以下の輸入郵便物(サービス)は関税施行令で関税を含め消費税が免除されています。 ⇒平成二七年消費税改正は別のブログで「今さら聞けない消費税改正」リバース・チャージ方式の導入。
  46. 5.「国境、相手国政府を意識しない超空間での取引」への課税

  47. ところが、物理的拠点を必要としないIT・クラウド社会が出現すると「拠点課税」の基礎が揺るぎ始めます。モノ・サービスの契約・提供・アフターサービスはインターネットを経由して地球上の最も有利な場所でコントロールする、消費者国へは物理的拠点を置かない、BtoC取引(ビジネス2コンシューマー)が可能となったためです。課税される国に物理的拠点を置かない「ゼロPF作戦」が展開されていきます。

  48.  超空間取引はどうなっているのでしょうか。実は超空間取引に対する国際課税のルールといったものは法制化されていません。しかし、IT企業が特にアメリカのIT企業がインフラを駆使して好き勝手な場所から商売を始めだすと消費者国の政府がおかしさを感じ始めます。企業ビジネスの利益の根源(源泉)はキャッシュフロー(課税ベース)が流出(浸食)した消費者国にあるという考え方です。OECD参加国は、初めは、おそるおそる「ITサーバーのある場所」に電子プロダクツの利益を課税するといっていたのですがそれでは追いつかなくなり、最近ではフランスのサルコジ元大統領が取引高に着目した販売税構想をぶち上げ、ドイツはキャッシュフローに代替されるプログラムの流量を高速道路を利用する運転手からのゲートインカム(通行税)構想を述べるなどしています。

  49. IT企業側は相手国政府に捕捉されない宇宙空間からステルスPE機を使い、消費者国の超空間の戦場で政府軍と交戦状態にある?といったところでしょうか。


  50. (a)ゼロPE作戦(ステルスPE)

  51.  2009年7月、「本社機能の一部(日米租税条約で定める恒久的施設にあたるもの)が日本にある」として東京国税局から140億円前後の追徴課税処分されたことが報じられました。アマゾンン側は「米国に納税している」と主張し日本とアメリカとの2国間協議を申請。アマゾンンジャパンも「課税は不適切」とし、日本での納税義務は無いという立場でした。 2010年9月、日米当局協議の結果、日本の国税庁の主張は退けられ、国税庁は銀行供託金の大部分を解放しました。つまり国税側が負けたのです。



  52. (b) 機能の分散とアウトソーシング

  53. 新聞記事を読んでみて、アマゾン・ジャパンの日本語サイトから日本の書籍を注文しても、カードの支払いは外貨(米ドル)で外国法人名にされています。メンテナンスについても一考されています。WEBから指示された電話先(たぶん、国内の電話番号)でオペレーターは出ますが、居場所は特定されません。簡単な会話の後、オペレーターは故障品を、「後日お送りするEメールに記載されている住所へお送りください」とのことです。その送り先は国内のどこかですが「修理センター」となっており、特定の会社名はありません。「私たちは地球上で一番早くサービスを実行します。」の文字。

  54. (c)ゼロPE作戦 

  55.  PE認定すると、対日本売上から対応する経費を控除することになります。海の向こうの経費(今回の場合は、膨大なシステム構築等の費用のうち、日本対応分)はなかなか認められないので、勢い売上にマージン率(60%)をかけた金額が所得として認定される傾向にあり、その点が、移転価格課税に比べて厳しい課税につながります。
  56.  今回の場合、販売事業がインターネット経由ということなので、OECD等の議論に基づけば、国内に注文受け付けのサーバーがあり、それをPEに認定するというのが普通ですが、アマゾンほどの会社が、そんな「へま」をしないと思われます。インターネットによる販売業(電子商、B2B)で、注文を受ける企業の店舗・事業所・ヒトが国内になければ、商品の譲渡契約の相手先(セールス社)のサーバーに到達した瞬間に、サーバーの実在場所の国に課税権が生じると考えられています。→法律により規定されているものではありません。PEの認定のための便法です。→サーバーの所在場所にPEを認定するのであれば、この場合は多分、国外のどこかにあるので課税はできません。

  57. そこで、新聞記事のように、「委託された問屋法人が実質的に支店機能を果たしていた」と認定したようです。

  58. (e) 棚卸資産の譲渡契約

  59.  外国法人課税の上で、事業の所得(一号所得、物品・サービスの譲渡等による所得)が国内源泉所得に該当するためには、「譲渡に係る重要な契約(商談)が国内において事業を行う者(の社員)との間で締結されたか(合意に達したか)」にあります。これは対面型(ヒトとヒト)の契約を前提にしていますが、インターネット上の売買の商談は人を介して成立するのではなく、カタログを見て指定された電話先に買い申し込みをやっているようなものです。ヒトの意思を介する契約の場合は片一方が「ヒト」、もう一方が「機械」ということで成立していますが、どちら側にもヒトがいないケース、例えば株式のプログラム売買、どちらもプログラムが判断して株式の売り買いを行い、売買契約書はバックオフィスに翌日届くなんていうケースでは、売買契約の場所及び意思決定を重視する現状の外国法人課税税制はワークしていません。

  60.  株式売却益は、どの国で注文があり、どの国で売却したか、あるいはその国のトレーダー(ディーラー)が仕入れから売り上げまで関与したか、などのファクターで課税する移転価格的課税手法が外国法人日本支店に適用されています。

  61.  実務上は、株式の仕入地に資金コストを負わせ、売却地にキャッシュインさせますが、利益の配分は、投資会社の本店がある国で、グローバルブックをつけていて、各国のディーラー人件費の割合とか、資金負担の割合とかで世界拠点に割り振る「グローバル・トレーデング」手法をとっています。→譲渡損益の配分ファクターには様々な理論があって、移転価格課税、外法課税でもめる要素でありますが、大抵、本国に有利にシステムが組まれています。
  62. ○サーバーはPEか?

  63. OECDの電子商取引(電子出版)の課税ルールの「PEの認定」については、業者がサーバーにアプロードしたことにより貯蔵され、消費者がインターネット上で「ワンクリック」して購入意思を示し、それがサーバーに達してサーバーから消費者の末端にダウンロードされた時点で契約が終了するという過程(誰も見たものはいませんが)から、サーバーのある場所で課税するという理論構成をとっています。ですから、頭のいいIT企業は、サーバーをタックスヘイブンにおいて、そこで契約が成立したと考えることにしているのです。

  64. ○ドメインヘイブン

  65. 「.tv」というドメインがあります。ツバルはオセアニアにある国家で、海抜が最高でも5mと低いため、海面が上昇したり地盤沈下がおこったりすれば、国の存在そのものが脅かれることになります。それで「.tv」という魅力的なドメイン(インターネット、サーバーの所在地国を示すアドレス:世界のドメイン:http://www.bio.nagoya-.ac.jp/~SugashimaMBL/harada/1237_toplevel.html)を世界に提供して、資金調達しています。つまり、インターネット・サーバーの避難地、タックスヘイブンだということです。→さすがにアメリカはこのような租税回避を許していないようですが日本ではどうなんでしょうか?→もし楽天が電子商売だけ別にしてツバルに引っ越してしまったら?津波対策もしっかりして・・・。このようにヒト・モノ・カネを物的場所を介さないサイバー空間の事業を今迄のように「PE」の事実認定と「PEなければ課税せず」の原則で課税を律していこうとする法制はそろそろ曲がり角に来ているといえそうです。http://atlas.cdx.jp/nations/oceania/image/ftuvalu.gif(ツバル国旗、ツバルはトップレベルドメインとして割り振られた “.tv” を米国カリフォルニア州のdotTV社に5000万ドルで売却。この売却益を元に、2000年に国連加盟を果たした。)



  66. 6. 移転価格課税との関係

  67.  資本系列50%以上の国外関連者間(外国親会社vs日本現地法人)の取引で、物流業務や問屋、バックオフィス業務の取り分が独立企業間価格(ALP)に比べ小さいというだけであれば、コミショネア問題(問屋としての業務サービスに対するコミッション料率はいくらが適正なALPであるか)として移転価格課税することになります。しかし、日本PEが存在しなければ国外関連者間取引がみつかりません。仮にセールス社の日本拠点が存在すると仮定すると、セールス社本店とセールス社日本支店の利益配分は、移転価格税制ではなく、外法課税のルールで利益(480)を分配することができます。→しかし、480が全部、セールス社の利益としてIRSに申告されているとは思われません。アマゾン社の世界戦略では想像ですが、バミューダ知財会社、オランダBV、アマゾン・グループの総本山(アマゾン・コム?)にも分散されているのではないでしょうか?


  68. 7.外国法人課税の制度(法人税)

  69.  法人税法第3編138条以下は外国法人の「法人税の課税標準と税率」、「所得税の源泉徴収の有無」、「確定申告義務」などが書かれています。


  70. (1)内国法人と外国法人の違い

  71.  内国法人は内外の法律に基づいて設立した法人で「日本に本店の住所を定めて登記所に登録した」法人。

  72.  外国法人は内外の法律に基づいて設立した法人で外国に本店の住所地があり、「日本に支店の住所を定めて登記所に登録した」法人。

  73. (2)外国法人の納税義務
  74.  内国法人は無制限納税義務者として「全世界の所得」に対して法人税の納税義務があります(法法4①)が、外国法人は制限納税義務者として、「国内源泉所得」に係る所得のみ法人税の納税義務があります(法法4②)。だだし事業の所得については国内源泉所得、国外源泉所得の区別なく、自分に帰属した所得はすべて課税されます。→事業の所得については外国法人にも内国法人にもほぼ、同様の課税体系になったのです。課税概念は図1のとおりです。

  75. (3)恒久的施設

  76.  外国法人の日本における活動拠点を「恒久的施設(PE)」といいます。次の三種類に区分され、恒久的施設のない外国法人を四号外国法人といいます。

  77. ○ 恒久的施設の区分


  78. 一号該当外国法人

  79. 「支店PE」

  80.  国内に支店、工場その他事業を行う一定の場所で政令[1]で定めるものを有する外国法人


  81. 二号該当外国法人

  82. 「建設PE」

  83.  国内において建設、据付、組み立てその他の作業又はその作業の指揮監督の役務提供(「建設作業等」)を一年を超えて行う外国法人(前号に該当するものを除く。)


  84. 三号該当外国法人

  85. 「代理PE」

  86.  国内に自己のために契約を締結する権限のある者その他これに準ずる者で政令[2]で定めるもの(「代理人等」)を置く外国法人(第一号に該当する外国法人を除く。)


  87. 四号該当外国法人

  88. 「日本にPEなし」

  89.  前三号に掲げる外国法人以外の外国法人

  90. (4)国内源泉所得

  91. 《略》 

  92. (5)外国法人に係る法人税の課税標準

  93.  恒久的施設ごとの課税標準

  94.  外国法人に係る法人税の課税標準は「恒久的施設(PE)」の区分ごとに「国内源泉所得」に係る所得(対価)の金額が異なります。

  95.  各恒久的施設(PE)の法人税が課税される国内源泉所得の範囲は以下のように規定されています。

  96. ○ 恒久的施設と法人税が課される国内源泉所得、国外源泉所得との関係


  97. 一号PE

  98.  事業の所得は帰属主義の適用(帰属する全世界所得)、その他の所得には全ての国内源泉所得に所得税が課税されます。


  99. 二号PE

  100.  事業の所得は帰属主義の適用(帰属する全世界所得)、その他の所得には全ての国内源泉所得に所得税が課税されます。


  101. 三号PE

  102.  事業の所得は帰属主義の適用(帰属する全世界所得)、その他の所得には全ての国内源泉所得に所得税が課税されます。 


  103. PEのない外国法人

  104.  事業の所得は計算できるとしてもPEがなければ課税できない。ただし、特定の国内源泉所得(たとえば、国内企業の買収、M&Aなどによる利益、国内埋蔵物の発見による原始取得)は申告課税される。


  105. ○法人税基本通達の課税表

  106. 外国法人に対する法人税及び源泉徴収に係る所得税の課税関係の概要


  107. □所得相応性基準 

  108.   米国では、1986年に無形資産取引に対する特別ルールである所得相応性基準というユニークな基準を導入し、当該問題に本格的に取り組んでいる。
  109.  そこで、本研究では、この所得相応性基準について、①法令上の位置づけ、②無形資産取引形態別適用方法、③判例における取り扱い、④実務上の適用状況と課題という観点から分析を行った上で、同基準を日本に導入することの意義について考察することを目的とする。
  110. [1]米国租税法上の無形資産の評価の実情と日本に対する示唆― 所得相応性基準の分析を中心として ―http://www.nta.go.jp/ntc/kenkyu/ronsou/49/asakawa/hajimeni.htm

  111. この所得相応性原則は、国際的に無形資産が移動した場合に、将来の利益の源泉が動いたとして、その時点で巨額のキャピタル・ゲインがあったとしてオリジナルな開発国で課税しようとする試みで、アメリカでは90年代からあった。日本もようやくこのことに気が付き、移転価格税制・タックスヘイブン対策税制(コーポレート・インバージョン税制)などに取り込み始めている。また、国際的には、営業権評価・時価譲渡・国際三角合併、三角株式譲渡、非適格合併、分割の道具としても頻繁に利用されるので注意が必要である。
  112. 以下次号

  113. 平成27年3月11日現在


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