キサラギ・ジュンの税務小説 『日本人のパナマ文書リスト公開ー住所別』『NORADテープー撃墜した戦闘機』

『イミテーション・ゴールド』『微風のマニラから』『天皇財産と課税』『ナピサン』『大統領になれなかった男』

フスト右近 微風のマニラから キサラギ最終版

2016-10-12 12:28:03 | 微風のマニラから

フスト右近

挿絵 320*239

□ コレヒドール
自衛隊出の田辺は億万長者である。正確に云うと田辺のオヤジさんが超資産家なのだ。
埼玉の某駅の前に貸しビルを所有している。パチンコ屋やフィリピンパブが入居している。カネはいくらでもあるが、その長男がフィリピンでカネを使い果たすか盗まれると「親父金送れ」の口で、市会議長上がりのオヤジには頭が上がらない。
Nは埼玉の大工だ。昔からの請負大工なので、税務署へ申告に行くときはカレンダーの裏に1月から12月までの売り上げを20万円と鉛筆書きしてもって行く。他は何も持たない。それで通る。その給金をもらう都合上、このオヤジ(92)のフィリピン戦記を百回も聞いた。コレヒドールの悲劇などは耳にこびり付いている。

□ フィリピン・トレンチ

西側は日本の南岸から琉球諸島、台湾、フィリピン群島にかけて、東側は伊豆諸島から発し、小笠原海嶺、マリアナ海嶺、ヤップ、パラオに達する一連の海嶺によって幅およそ千キロ、南北に長く菱形に伸びた海域がある。フィリピン海だ。
菱形の西の壁は沖縄の南西諸島、台湾、そしてフィリピン群島で形成されている。フィリピン群島、サマール沖北東部からハルマヘラ(インドネシア)北東部に向かって薄いレンズ状の海の溝がある。全延長に渡って深さ平均6千米、ミンダナオ東岸は8千米以上1万米に達する世界で最大級の深い渕である。これを「フィリピン・トレンチ」という。     難破した船はこの海域では発見されることはない。まずいことにこの海嶺をなぞって台風が北上する。南の厚い体温が日本を直撃するのだ。その中でも一旦、日本海へ抜けた台風が対馬暖流の加勢を受けて、再び北海道や東北北部を襲う洞爺丸台風〈昭和29年)やリンゴ台風〈1991年)は甚大な被害をもたらしたことで知られる。
「なんて名前だ・・お父さんは・・・」とニガワラが傍らの置屋から来た少女に津軽弁で聞く。多分18歳はいっていないかも知れない。16歳ぐらいか。こちらでは17歳以下の少年少女との「恋愛」は見つかればその哀れな観光客は死刑である。ただし、美人局を演出されてつかまった場合は賄賂があれば見逃される手はずになっている。身代金は50万円ぐらいだ。置屋経由の場合はその置屋を警察幹部の情婦あたりが経営しているので、地元の警察は現場には踏み込まないことにしている。

□ハヤシタダシ

少女は笑いながらもルソン北東部のたどたどしいピジョン英語で答えた。「ハヤシ・・・ハヤシタダシ・・・」
「どうせ本名だかどうだか分かったものじゃね~ぜ」
「(その男は)やり逃げだからな」とニガワラ。
それでも少女は屈託なく笑う。

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