キサラギ・ジュンの税務小説 『日本人のパナマ文書リスト公開ー住所別』『NORADテープー撃墜した戦闘機』

『イミテーション・ゴールド』『微風のマニラから』『天皇財産と課税』『ナピサン』『大統領になれなかった男』

海舟 微風のマニラから キサラギ最終版

2016-10-12 12:18:16 | 微風のマニラから

海舟

挿絵 101*151

□空港
ニノイ・アキノ国際空港(NAIA)の第二ターミナルに男が三人降り立った。
小太りの50代の津軽弁丸出しの「ニガワラ」、日本人ともフィリピン人とも結婚している重婚男の田辺、得体の知れない老人の吉田。
ニガワラは来比36回目、田辺は16回目、吉田は初めてだという。彼らの共通の目的は無論「恋愛」である。ニガワラは独身だから許される。
だが、どういうわけか現地妻はできない。というよりもフィリピ~ナとの結婚を避けているかんじだ。「次から次と湧いでくるんだ。もったいねべ」
田辺は日本に正妻がいるが、フィリピンにも家族がある。しかも複数の女と付き合っている。日本の法律においてもフィリピンの宗教においても彼は有罪である。
問題は老人、吉田。「オメナ!年取ってからフィリピンを知るとろくなことネ~ゾ」
といいつつも、吉田の懇願をニガワラが拒みきれるはずもなかった。つれてきてしまった。


 空港の狭い玄関口は仕事にあぶれて何かいいかもがいないかと鵜の目鷹の目の男たちや17歳を過ぎれば私たちの自由よ とばかり、擬似恋愛にいそしもうとする若い男女たちで一杯だ。日本とフィリピンを隔てた粗末な柵に群がって最後の日本人がいなくなるまで妖艶な視線を投げかけている。日本人用のウエルカムボードを高く掲げてうす汚れたマイクロバスの運転手が声を枯らして怒鳴っている。ホテル送迎バスだ。寡黙な日本人グループが黙々とバスに乗り込む。
玄関には警官が多数いる。ここでは空港警護の警官はヒーローだ。だが、パトロールには熱心ではない。日本人に親身に話しかける警官もいるにはいるが親切の目的は別にある。たまに、忙しそうに携帯で交信している警官は大抵、トランシーバーの向う側は彼女か奥さんで、そうでなければこの日本人たちのために女を世話する上司が経営するワーク・ショップ(置屋)と話しているにちがいないのだ。


□ 海舟

日本人専用ホテル、ネットグローバルの日本料理「海舟」の離れで日本人専用のカラオケ、プラスワンダーランドのタレント(みんな日本語を話す)3人をコンパニオンとして呼んで飲んだ。(呼んでもかならずカラオケに行くとは限らない)
ひとしきり飲むとニガワラの独演がはじまった。
ニガワラ「まず、かわいそうだからな・・・会う人間、会う人間みな貧乏だから、かわいそうだと思って救ったらまず、何ぼカネがあってもたんね~ど」と津軽弁独特のリズムとイントネーションを使う。これでは、多少日本語の分かるタレントの頭を素通りする。日本人でさえわかりゃしないんだから。それにニガワラの会話は主語がない。フィリピ~ナはしばしば「誰?アコ?イカウ?」とたずねることがある。ニガワラはたいてい一般論として説教するので「一般的にフィリピン人は・・・」という意味の主語が省略されている。
田辺が云う。「そうなんですよ。ニガちゃん。オレなんかかわいそうだと思って、家を買ってやったり、クーラー買ったりするけど、結局、プロビンシャ(田舎)へ持って帰って親にあげたというんだ」そんなわけね~よ、イナガ(田舎)に電気ね~。みな土間に寝てるんだデ」
「売っぱらう?それじゃその後どうするの?」と吉田が首をかしげる。ニガワラが田辺に変わって説明した。
「何ぼいっても(田辺は)訊かねだよな・・呆れじゃうよ・・それで、(フィリピ~ナが)あやまって来るがというと何も云わね
・・・(こっちのヒトは)“有る奴から盗れ”というのが常識だ」
つまり、カトリックの教えだ。フィリピンの人口の81%がカトリック(ローマン・カトリック)。9%がプロテスタント。そのほかイスラム5%、仏教3%である。
「カトリックは(一般的にフィリピ~ナは)コンドーム駄目ね。(それですぐ赤ちゃんができるが)できたら堕せね」
したがって、子供が数限りなく生まれる。
「次から次と子供ができるから兄弟10人というのがザラ・・・
男6人女4人の年齢が長女24歳、男23歳、22歳、20歳、19歳、女17歳、15歳、男7歳、2歳、1歳・・」
「つまり、(一般的にフィリピ~ナは)24年間、17歳から生み始めたとして40歳前後まで10人を生むのはザラだ」―実際は男の子7歳あたりから下はその娘のこども(孫)というのが普通かもしれない。
「肌の色は色々だ」
「中には日本人の子供も混じる」
「ジャピーノだな」

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