つぶやき、或は三文小説のやうな。

自由律俳句になりそうな、ならなそうな何かを綴ってみる。物置のような実験室。

腎虚

2017-07-07 19:27:31 | 文もどき
猫の話である。
腎を悪くすると貧血気味になり、血の巡りが弱くなると冷えやすい。すると周囲の温度が高く感じられ、さらに涼もうとするものらしい。そうして益々、体が冷える悪循環に陥るとのことだった。
なるほどそうしたこともあるものかと感心して、我が身を思う。疲れと蒸すのとで薄着で一晩を明かし、常ならば極寒の如く感じられるはずの仕事部屋が、一日中快適に感じられたのであった。面妖なこともあるものだと、長湯をして至極良い気分で目蓋を閉じた。どうして、翌日の仕事部屋は北極もかくの如く、である。
それを聞いた来島は一口茶を啜ると、ははあ、と訳知りに呟いた。
どうりで、鍋島さん、猫に似ていらっしゃる訳だ。
したり顔でみたらし団子に伸ばそうとする手から皿を遠ざけ、いささか爪の伸びた己が手を見下ろす。なにが、ははあ、だ、と憮然とする気持ちの奥底に、やはりそうか、という安堵のような心持ちがへばりついている。
それではひとつ、化けてみるかな。
言い置いて、恨めしそうな顔をしている来島の前でみたらしの最後の一本を攫う。
どこかで物憂げに猫が鳴いた。
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