アリスのさすらい弐番館

映画とナチュラルライフの雑記帳

『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』はヨルゴス版ギリシャ悲劇

2018-02-05 | 映画 さ行
聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア
The Killing of a Sacred Deer
 
心臓外科医のスティーヴン(コリン・ファレル)は美しい妻(ニコール・キッドマン)と2人の子供たちとともに郊外の豪邸に暮らしている。彼は時々マーティン(バリー・キオガン)という名の16歳の少年と会っているが、マーティンの存在によりスティーヴンの一家に不穏な影が忍び寄る・・
『籠の中の乙女』『ロブスター』の奇才、ギリシャ人監督ヨルゴス・ランティモスの新作です。
IMDbのユーザーレビューでも10点満点中1の最低評価がズラリと並ぶ本作
ファンタジーな要素が入ってくるし、不条理極まりないサイコロジカル・ホラーな仕上がりのため
一般受けしないことは確かでしょう。
 
最初私も、抑揚のない言葉のやり取りや、マーティンが画面に現れると必ずかかるホラーテイストの音楽に笑いそうになるくらいだったのだけど、マーティンとスティーヴンの関係が明かされるあたりから俄然惹きこまれました。
 
意味不明だったマーティンのある言葉が現実になっていくことに緊張を禁じ得ないのですよ。
鑑賞後に知ったことだけど、本作は『アウリスとイピゲネイア』というギリシャ悲劇を基にしてるとのこと。
原題の「sacred」というのは「聖なる」と訳されてますが「生贄」という意味もあります。
予言した悲劇が起きるシーンを非常に高いところからとらえるカメラワークは「神の視線」のごとし。
印象的なのはスティーブン演じるコリン・ファレルが劇中「手が美しい」と何度も褒められること。
しかしその美しい手をじっくり映し出すわけではなく、
逆に冒頭などは、手術後の血のついたゴム手袋を脱ぐシーンで始まるのですよ。
劇中、彼が息子に語る自身の過去のエピソードからも、むしろ彼の手は汚れていると示唆してるのでしょう。
妻役のニコールが情報を得ることの引き換えに、やはり手を使ったあることをする。
(ニコールさまが!!)
手は時に欲望の権化と化すのだということでしょうか。
マーティンを演じるのは『ダンケルク』のバリー・ケオガン。
一見人当たりのいいマーティンの言動が次第に異様なものへとシフトしていくのが不気味でした。
 
怪作です。


映画データ
製作年:2017年
製作国:イギリス・アイルランド
監督:ヨルゴス・ランティモス
脚本:ヨルゴス・ランティモス/エフティミス・フィリップ
出演:コリン・ファレル
   ニコール・キッドマン
   バリー・コーガン
 
『映画・DVD』 ジャンルのランキング
コメント (12)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 【映画】圧巻!!『グレイテ... | トップ | ペンタゴン・ペーパーズ/最高... »
最近の画像もっと見る

12 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
バンビは殺さないで (松たけ子)
2018-02-06 21:49:57
こんばんは!
「ロブスター」面白かったので、この新作も楽しみ!でも、評価は低かったのですね~。ギリシア神話とか、ちょっと私には難しそう…
この映画でもコリン、でっぷりしたおっさん風でしょうか。カッコいい熟年になったコリンに会いたいんだけど…ニコールさんが手で何するのかも楽しみにしてます。
バリー・ケオガン、顔が怖い…
Unknown (pu-ko)
2018-02-06 23:07:54
>松たけ子さん
あ、批評家は高く評価していて、評価自体は低くないんですよ。ただ多くの一般視聴者からは理解されない感じ。
ギリシャ神話は私にも敷居が高いんですが、元となるお話を知って、最初からファンタジーとして観れば理解しやすいと思います。
コリンはぶよってますよねw
でもニコールと二人作品のトーンをよく理解した演技でよかったです。
バリー君、、お顔がちょっとねぇ(汗)

Unknown (LAGUNA)
2018-02-07 00:30:57
「籠の中の乙女」も「ロブスター」もちょっとついていけなかた私・・・(^^; 大丈夫かなぁ・・・
鹿殺し?そういえば「籠~」でも殴りつけるシーンとか、「ロブスター」では犬を殴り(蹴る?)殺すようなシーンがあって(涙)
ニコールさまが手を使ったあること?(笑)気になる
Unknown (pu-ko)
2018-02-07 07:56:07
>LAGUNAさん
この監督さんの前二作も一筋縄ではいかなくてストレートには解釈も難しいですよね。
その点、本作の方がファンタジー部分を受け入れれば理解はしやすいと思います。
今回は動物に対する暴力はないんですが、、
余計悪いというかなんというか・・
おお!昨日言ってたのこれね! (みーすけ)
2018-02-09 22:04:58
昨日Twitterで教えてくれてのこれね。
おお、賛否両論?
癖のある怪作なのか。
わたしロブスターがまだ観れてないのだ💧
好きな人が物凄く絶賛してるんだよね、あれ。脚本がたくさん受賞してなかったっけ?
このバリーくん。物凄く個性的な顔だよね。ダンケルクであんなに若いイケメンが勢揃いってみんな沸いてるのに、わたしゃートムハとその次に印象に残ったのこの子だったわ。
コリンにニコールが主演ね。3月を待つ!
じわじわとまた映画の世界に戻ります。よろしくね🎵
Unknown (pu-ko)
2018-02-09 23:31:18
>みーすけさん
そうそう、昨日言ったのこれ。
監督の前2作観てると、ある程度の覚悟はできるのだけど、全然だと面食らうかも。そりゃークセの強い監督よ。
最初は奇をてらっただけなのかと思ったけど、意外と中身は深い。
バリー君もそれはそれは気持ち悪いです(笑)
多くは説明できないので、観てね。
映画の世界におかえりー。
という私はしばらくお留守になるよー(淋)
Unknown (einhorn2233)
2018-02-11 09:03:01
まだ予告編も出回っていないので、どんな映画なのか見当がつかないのですが、ギリシャ悲劇とか神の視点といったキーワードがちょっとハードル高そうな予感です。凡人には、わけのわからない話に見えちゃうってことは娯楽度も微妙なのでしょうね。これは劇場に足を運ぶかどうか迷う映画です。
Unknown (yymoon)
2018-02-12 11:35:34
最近、無精していてこの監督のことも作品が注目されていることも知りませんでした。
3月に日本公開なので観て見たいと思いま~す。
Unknown (chaco)
2018-02-13 09:32:59
コリン・ファレルとニコキ様が夫婦役って、う~んシックリこねーぞ。
ニコキ様なら同じコリンでもファースの方がお似合いかと。

って、私がキャスティングしてどーする?だよね。
「手」が鍵なんだ!!ちょっと意味深で興味深いな!
私も多分偏食派だから、きっとこーゆーの好きかも!?
あ、褒めてるのかけなしてるのか???(笑)
Re:Unknown (pu-ko)
2018-02-14 01:52:27
›einhornさん
そうですね。そのキーワードを無視しても大丈夫なんですが、途中「??」になること必死。
ちょっとしたファンタジーなハネケという風合いなので好みは分かれるかもしれません。
私は面白くみました。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画 さ行」カテゴリの最新記事