嘘だ。こんな事があってたまるか。
俺は目の前の光景を見ても、一切現実感が感じられなかった。まるで映画かゲームを見ているかのようだった。
俺は皆を無事に脱出させるためにここまで来たんだ。走るゾンビに追い掛けられ、銃もないのに前田に立ち向かい、そしてリサさんと一緒に巨大蜘蛛を倒した。
なのに、こんな展開はないだろ?
文字通り俺は血を流し、戦ってきた。何度も死にかけた。時には人間相手に戦い、今だっ . . . 本文を読む
俺は泣き続けた。泣いて泣いて泣いて、気がつけばとっくに陽は沈んでいた。
やがて街灯が次々と点りはじめた。発電所がまだ生きているから、自動で点灯したのだ。
そしてようやく涙が出なくなった。腕時計を見れば、すでに深夜12時を回っていた。
実に5時間以上泣いていたのか。その間、ゾンビには一回も襲われなかった。もしかしたら、この辺りで生きている人間は俺だけで、ゾンビすらいなくなったのかもしれない。
. . . 本文を読む
陽が上り始めた青い空に、乾いた銃声が響く。
排出された空薬莢が地面に落ち、小さく音を立てた。
続いて、どさりと何かが倒れる音。
倒れたのは、今まさに俺に食らいつこうとしていたゾンビだった。
「だから言ったろ、ライン。俺が倒すから『無駄だ』って」
俺は今まで入っていた墓穴からはい出た。それはまるで、昔の映画に出てきたゾンビのように。
今、俺は一度死んだ。
さっきまでの弱く、自殺 . . . 本文を読む
1年前、2011年の5月1日に世界は崩壊した。わたし達が当然のものとして受け入れていた平和と安全は、自ら勝ち取るものに代わった。
わたし、秋山《あきやま》 恵理《えり》も1年前に、この地獄に放り込まれた。世界は死者が歩き回る場所と化した。
幸いなことにわたし達の高校があるこの地域には、ゾンビはあまりいなかった。わたし達は高校を避難所にして、この一年を過ごしてきたのだ。
この地域は悲しいか . . . 本文を読む