印象派の大画家ピエール=オーギュスト・ルノワール初期の重要な代表作『桟敷席』。
1874年の第一回印象派展に出品され、批評家たちから好評を博した数少ない作品の中の一点である本作に描かれるのは、当時の女性らが最も華やかに映える場所のひとつであった劇場の≪桟敷席(劇場で正面に対して一段高く設けられた左右の席)≫での男女の姿で、ルノワール初期の表現様式が良く表れている。
「鼻ぺちゃ」とも呼ばれた当時の画家お気に入りのモデルであるニニ・ロペズと、ルノワールの弟エドモンをモデルに描かれる本作で最も注目すべき点は、白黒を色彩の基調としながら柔和で瑞々しい筆触による多様かつ輝くような洗練された描写にある。