よのなか研究所

多価値共存世界を考える

わが国のノーメンクラツーラ、

2011-06-15 00:04:07 | 組織

                    (トプカピ宮殿の軍楽隊、イスタンブール)

ひと昔前、マスコミをにぎわした言葉に「ノーメンクラツーラ」というのがあました。「能面蔵面」ではありません、ロシア文字キリル文字номенклату'раと書くそうです。当時のソヴィエット連邦の官僚機構を指していました。辞書的な意味は、ソ連における指導者選出のための人事制度を指します。それがやや拡大して当時の社会主義国におけるエリート・支配層階級、またそれを構成する人びとを指します。判り易く言えば「特権階級」のことです。

この言葉は本来、ラテン語の”nomenclatura”(名簿)から来ているようです。つまり党機関が役職につける人物の承認や罷免のために用いた一覧表を指す言葉でしたが、やがてその一覧表を用いた制度や、承認された人物やその縁者を指す言葉として用いられるようになったようです。これに似た制度や組織や人物は世界中にわんさとあります。西欧社会でいう「エスタブリッシュメント”establishment”」に近いでしょうか。

 

今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い、わが国にも「ノーメンクラツーラ」に匹敵する特権階級が多数存在することが徐々に明らかにされてきました。上級役人、その退職者の公益法人への天下り人種、民間企業へ天下りしてさしたる仕事もないが社会的通念からにすれば法外な報酬を得て恬として恥じない人びとを指します。彼らが官界、産業界、時に学会、軍事や科学技術に繋がっていることもあります。

その人びとの仕事といえば、自分の出身省庁と企業や団体との間に立って橋渡しをすることですが、その人物がいなくても特に支障を来たさないところに特徴があります。つまり、無くともだれも困らない、という点が共通項です。

現在問題となっている原子力発電にまつわる各種組織・団体は以下のとおり二十数団体に及んでいるそうです。

 

()原子力安全基盤機構 (JNES)、()日本原子力研究開発機構 (JAEA)、()原子力環境整備促進資金管理センター (RWMC)、()原子力安全研究協会(NSRA)、()原子力安全技術センター(NUSTEC)、()原子力国際技術センター (JICC)、()日本原子文化振興財団 JAERO)、()原子力研究バックエンド推進センター(RANDEC、()日本原子力文化振興財団(JAERO)、()原子力発電技術機構(NUPEC)、()原子力国際協力センター(JICC)、()原子力環境整備促進・資金管理センター(RWMC)、()原子燃料政策研究会(CNFC)、()日本原子力産業協会(JAIF)、()日本原子力学会(AESJ)、()日本原子力技術協会(JANTI)、()火力原子力発電技術協会(TENPES)、(認可法人) 原子力発電環境整備機構(NUMO)、原子力委員会(JAEC)(内閣府)、原子力安全委員会(NSC)(内閣府)、原子力安全 保安院(NISA)(経済産業省)

 

はっきり言って区別が難しいですよね。これらに役人が毎年天下っているようです。また専業の職員も何をしているのか良くわかりません。 

庶民感覚としては、これだけのいろいろな組織が存在し、そこに慧智が集まっていながら何故事故を防ぐことができなかったのか、もし防ぐことは困難であったとしても、せめて事故の可能性を指摘できなかったのか、という疑念が生じます。一つくらい、大きな地震や津波で事故がおこることを指摘する組織があってもよかったのではないか、というのは後知恵でしょうか。もしそうなら、これらの自称エリート諸氏は普段は何をしているのでしょうか。

 

ソヴィエット連邦は階級の存在しない社会であることが建前とされました。また民主主義社会では、役人は「公僕(public servant)」ということになっていました。しかし実際には多くの国で、統治は選挙によって選出された政治家ではなく役人によっておこなわれています。共産党による一党独裁制度の元では政治に携わる人物は全て党の任命と承認を受けた人物である必要がありました。そのため党が役職と役職に就く候補者の名前を一覧表にして用意するシステムが行われていました。それはそれで意味がありました。

しかし、日本は曲がりなりにも民主主義国と認め、認められている国です。そこで、実は巨大な官僚機構が組織保存のため、勢力拡大のため、さらには自己の身分と報酬を確保すめたるに働いている、ということを知ったら国民はどのように考えるでしょうか。また、どのように行動するでしょうか。

現実には、たいしたことは起こりません。今も起っていませんね。その昔の絶対君主がいた時代の話しではありません。せいぜい政党や、一部の有力政治家の欠点を論うことで、マスコミも国民も満足しているようです。

 

日本という国が良くなることに異存のあるひとは少ないと思います。だが、その思いを行動で示す人が少ないとは思いませんか。自分の日頃の行いを反省することの多い昨今です。

(歴山)

 



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