ミスドる

　わが家は毎日毎日、家事・育児でバタバタです。
　育児は３６５日、２４時間休みがありません。
　初めての育児に悪戦苦闘、試行錯誤、五里霧中の父ちゃん母ちゃんは、日々時間の余裕も心の余裕もありません。

　ももちゃんが生まれる前は、父ちゃんの休日には二人でゆったりと、カフェやランチを楽しんでいました。
　今は、そんな懐かしい記憶を辿る暇もありません。

　ほとんど唯一の心のオアシスは、土日の家事・育児の合間に、１０分間ほど父ちゃん母ちゃんで「ほっ」と一息をつける「おやつの時間」程度でした。

　それ以外は、特に母ちゃんは、まさしく息をつく暇もありません。

　母ちゃんは寝不足とストレスが溜まっているのです。

　そんなとき、ミスター○ーナツの広告を見た父ちゃんが一言、
　「ミス○行きたいなあ・・・」
　と呟きました。

　ものすごい光速で台所仕事をしていた母ちゃんの手が、ふと止まりました。
　「行こう！　ミス○へ！！」

　え？　と顔を上げた父ちゃんの視線の先には、炎の背景を背負った母ちゃんの決意に満ちた顔がありました。

　「で、でも、台所仕事があるんでしょ・・・」
　気迫に圧倒されながら、父ちゃんがようよう声を出すと、

　「行くのだ！　行きたいのだ！！」
　目から炎を立ち昇らせた母ちゃんが、尚も宣言しました。

　そうなのです。母ちゃんは、気分転換がしたかったのです。
　
　「よし、行こう！」

　父ちゃんも立ち上がりました。
　父ちゃんも気分転換がしたかったのです。

　決死の覚悟で出発する父ちゃんと母ちゃん、そしてももちゃんは、お出かけできて嬉しそう。

　もし、ももちゃんがミス○で泣き叫んだら、ドーナツだけ買って即座に帰宅する。
　そう誓い合って、車で１５分ほどのミス○に猛進したのです。

　店内に入ると、比較的空いており、レジ待ちのお客さんもいません。

　秒単位でドーナツの種類を決めてトレイに乗せ、レジへ。
　即座にテーブルを占拠、３人で囲みます。

　ももちゃんは？
　おお、ご機嫌！

　ニコニコしながら、隣のテーブルの若い姉さん二人組みに愛想を振りまいています。
　「かわいい」
　姉さんから手を振ってもらい、ももちゃんさらにご機嫌。

　おお、行ける行けるぞおおお！

　父ちゃん母ちゃんは、ドーナツをむさぼり食べます。

　食べ終わった父ちゃん母ちゃん。「ほおおおお」と大きく息をつきます。
　久しぶりの外でのカフェタイムで、大いに気分転換が図れました。

　結局、ももちゃんは終始ご機嫌。

　滞在時間は３０分弱でしたが、一度もぐずることもなく、帰りの車の中でも上機嫌でした。

　案ずるより何とやらですね。
　ももちゃんにとっては、お出かけのひとつに過ぎません。
　散歩に行けば上機嫌のももちゃん。

　父ちゃん母ちゃんは、心配しすぎていました。

　これからは、もっと積極的に外出しないとダメだなあ、と父ちゃん母ちゃん。

　父ちゃんの呟きで、思いがけずリフレッシュできた一日でした。