妄想ジャンキー。

だいたい朝ドラやら大河ドラマやらNHKスペシャルの話。たまにドラゴンボールの話、たまに介護の話。

『シン・ゴジラ』 30,000字のネタバレ作戦

2016-08-07 13:56:10 | ▲この映画みた

2016年7月末、『シン・ゴジラ』を観てきました。
というわけでネタバレ作戦を展開してみます。








■この町は生きている。


( ゚д゚)
 ↑
あるポイントからずっとこの顔をして、気が付いたら泣いていました。
「なんで涙が止まらないんだろう」っていう状態。


感想をどうにか伝えようとするも、うまく語彙がはまらない。

「東宝の制作班、頭おかしい」

「イケオジ最高!会議最高!」

「作品そのものがヤシマ作戦」


「心を殴られた」



帰り道に東京駅で乗り換えるのですが、時間もあったので丸の内口に出てみました。

命がそこにある。
この町は生きている。


涙が溢れました。



■正常性バイアス


映画冒頭。
東京湾羽田沖で無人のプレジャーボートが発見されます。
海上保安庁が調べるも、遺留物はあるけれど人がいない状態。

頭に「?」が浮かんだそのとき。
大量の水蒸気噴出、アクアライン浸水。

避難経路のあのらせん滑り台を楽しんでいるかのように見える人々。
海ほたるで噴出する水蒸気を眺めている人々。

これきっと、『正常性バイアス』なんだろうなって。
逃げ惑っている群衆の中の1人、前田敦子(役名は避難民)が浮いているようにさえ見えました。





■読ませる気のないテロップ


アクアラインの一報を受け取った東京。
ここでメインの登場人物が登場します。

・矢口蘭堂 内閣官房副長官(長谷川博己)
・志村祐介 内閣官房副長官秘書官(高良健吾)

2人はまず、首相官邸地下の危機管理センターで情報収集に奔走。
局地的地震なのか、あるいは海底火山の噴火なのか。
情報が少なく、まさに「何が起きているの分からない」という状態で、東京湾が封鎖されます。



続いて、首相官邸・総理執務室
閣僚たちが集まり、対策を協議します。

・大河内清次内閣総理大臣(大杉蓮)
・東竜太内閣官房長官(柄本明)
・赤坂秀樹内閣総理大臣補佐官(竹野内豊)
・花森麗子防衛大臣(余貴美子)
・柳原国土交通大臣(矢島健一)
・河野総務大臣(浜田晃)
・関口文部科学大臣(手塚とおる)←この人の不安っぷりが素晴らしい。

もっといっぱいいるのですが割愛。
役職名はあまり覚えなくても問題ないですし、テロップも気にしなくても余裕でイケます。
ていうか読ませる気のない字幕テロップ。


とりあえず大杉連が総理大臣で、柄本明が官房長官。
竹野内豊が総理補佐官、余貴美子が防衛大臣ってのをなんとなーくニュアンスでとらえておけばいいかと。
(あとでもう一人凄いの出てきます)

で、この会議シーンがまた軽妙なんですよ。

踊ってるの?踊ってないの?
絶妙なカメラワーク。
あっちで盆踊り?こっちでワルツ?と思いながら、一斉にロケットダンスしはじめたり。

おっこの音楽は……

とにかくこんなワクワクする会議シーンは初めて。
ポリティカルアクションを邦画で、しかも怪獣映画『ゴジラ』で見れる日が来るとは。




■気持ち悪い!!


そんなこんなで海底火山なの?地震なの?と混乱している閣僚たち。
その中の矢口が「巨大生物だ!」と言い出すんですが、赤坂から「ないわ」と言われる始末。
(矢口が巨大生物を言い出したのは、ネットにあげられた動画から)

とかなんとか言っているうちに、つけられたテレビの中継映像にでっかい尻尾が登場。
このシッポゴジラがゴジラの第1形態らしいです。

「矢口の『夢』の話」のはずだった巨大生物がいた。
現実だった。


水蒸気を噴き上げながら船を、橋を破壊する。
そして東京都大田区の呑川河口付近から、遡上を開始。

これがまた気持ち悪い。
後ろ足だけ生えて、尻尾がやたら長い。
ギョロっとした目で、なんかキメてんじゃないのって表情で呑川を遡上してくる。

ポニョゴジラ、第2形態。


■上陸するの?しないの?


「なにこれ上陸するの?しないの?」

緊急に集められたのは海洋生物を専門とする有識者3人。
この3名がまた滑稽です。
(絵的に宮崎駿らに寄せてるのが面白かったwww)

「見たことないからわからない」

有識者はっきりせい。
言質を取られないようにってのはわかるけど、しっかりせい。


とりあえず「上陸はないと思うよ」で見解が一致したとき。

そこに現れました。
尾頭ヒロミ環境省自然環境局野生生物課長補佐(市川実日子)。
肺魚のような足があるかもしれない。既に歩行をしている可能性がある。

「上陸するかもしれない」

この尾頭ヒロミも「あんた話聞かせる気ないでしょ」ってレベルの早口。
早口だからかどうかはともかくとして、「有識者は上陸しないって言ったんだから」と、尾頭の話は受け入れられません。

とりあえず、このポニョをどうにかしなければ、と大河内首相は緊急記者会見を開きます。

そのとき防災服に着替えるシーンがあります。(生着替えじゃないよ)
扮装統括の柘植伊佐夫さんのインタビューによると、完全に本物を再現したとのこと。
しかしこの防災服に着替えるタイミングやフル装備なのかどうかは、現実ではまちまちであると。
そこで取られたのは「防災服を用意してくれ」という総理の一声でした。




■これと同じ光景を観たことがある


そして、大河内首相の緊急記者会見。
最近ではすっかり見慣れてしまったL字テロップのテレビ画面に、首相が登壇します。

このとき民放テレビ局各局の右上、時刻表示の隣に天気と気温が表示されていました。
東京、曇り時々晴れ、最高気温15℃
邦画らしさとも言える『季節感』が徹底排除された世界観の中で、ここだけが季節を現しています。
東京の最高気温が15℃、11月か3月かくらいの設定でしょうか。


さて首相緊急記者会見。
「巨大不明生物の上陸はありません」って言った直後に入った一報。

「巨大不明生物が蒲田に上陸しました」

破壊されていく蒲田の街並み。
水の飲み込まれていく車、建物、人。

──これと同じ光景を観たことがある。
2011年3月11日、あのときは黒い波でした。
それが今、異形の巨大不明生物になって人を、命を、生活を食べていく。


首相官邸が対策に翻弄される中、とにかく絵的に気持ち悪いポニョゴジラは品川方面へと移動していきます。
『巨大不明生物』とは言い得て妙だなと。



■余貴美子と國村準


巨大不明生物が『散歩』をしているのは東京都大田区です。
その首長、小塚東京都知事(光石研)。
「霞が関は何をしているんだ」と、自衛隊の治安出動を要請しました。

かといって官邸が何もしていないわけでもなく、がっつり会議

武力攻撃はどうする?
防衛出動する?
でもやったことないのにどうするの?
捕まえるの?
生きてる状態で?

やっちゃってもいいの?
ねえ!だからどうするの?!


巨大生物襲来という想定外の事態。
捕獲・駆除などの方向性、自衛隊出動の是非などの問題から政府が具体的な対応をとれずに、会議は踊ります。

しかしひとり踊っていないのが余貴美子さん演じる防衛大臣。
凛とした存在感がオッサン連中の中で光ってました。


『純と愛』のサトさん……
あの火事の後いつのまに出世されたの……。


余貴美子が防衛大臣役。
これ絶対小池百合子氏をモチーフ/モデルにしてるんだろうなあと思っていたら。
エンドロールにがっつり名前ありました。
メイクの仕方とか絶対イメージしてるんだろうな、特にアイライン

しかしおっさんの中の女性大臣ひとり、どこかで最近みたなあと思っていたら、初代ゴジラの永田町シーン。
1954年の『ゴジラ』での菅井きんさんが演じる女性議員でした。



余貴美子演じる花森防衛大臣。
彼女は小池百合子モチーフで、菅井きんオマージュなのかなと。



矢口、赤坂、東らが災害緊急事態の宣言を大河内首相に迫ります。
首相、苦渋の決断。
自衛隊初の防衛出動が決まりました。

そこへやってきたのが財前統合幕僚長(國村準)

余貴美子防衛大臣と國村準統合幕僚長。

……安定感パネエ。
これいける。


チチウエ…チチウエ……(『平清盛』の話だよ)



■兄ちゃん、ゴジラなんで電車壊すん…?


そのころ、例の巨大不明生物は南品川で立ち止まっていました。
休憩?とおもったら。

『シン化』

見覚えのあるあのゴジラの、あの姿。
モゾモゾと動いていた第2形態から、二足歩行で街を闊歩していく第3形態へ。

振り回されるその長い尾で破壊される京急北品川駅と京急の赤い車両。

兄ちゃん、ゴジラなんで電車壊すん…?



■伝言ゲームオペレーション


そのとき、対戦車用のヘリコプター隊が作戦展開区域の上空へ到着します。
住民が避難完了したとの報を受け、花森は「決断を!」と大河内に迫ります。

首相の決断、花森、財前と伝言ゲームのように伝わっていくオペレーション系統。
射撃開始が告げられた時。

ヘリコプター隊の前、踏切に逃げ遅れていた老夫婦。
まだ人がいる、と。

「国民を守る自衛隊が、国民を傷つけてはならない」と大河内首相は攻撃中止を命じました。
(中止のオペレーションは早いのな)

そのとき巨大不明生物は赤く発光、咆哮をし、そのまま二足歩行で東京湾へ向きを変えます。
天王洲運河を経て、海へ帰っていきました。




■大河内首相と東官房長官


大杉蓮演じる大河内首相。
確かに優柔不断な態度や決断ミスとも思えるシーンがあります。
というより、「首相、落ち着いて」と言いたくなるシーンが少しずつ増えてくる。

その混乱により出遅れた一手が、その過信が、致命的なミスとなり甚大な被害を招いてしまう。

「国民に不安を抱かせるわけにはいかない」という言葉もある通り、平時は有能な首相なのでしょう。
しかし緊急事態における伝言ゲームの混乱の中では、パニックになりかねない。
それが致命的なミスになる。


その首相を支える女房役が柄本明演じる東官房長官。
手塚とおる演じる文科大臣が不安を煽るようなことを言っていたり、中村育二演じる特命大臣らが少しふざけたことを言っている中、
この東官房長官はわりとまともなことを言って、首相の決断を支えています。

それにしても、源兵衛さん……出世も出世。エクストリーム出世。(『ゲゲゲの女房』の話)

ちなみにこの中村育二さんが、「パッと見で甘利元大臣によく似てる」って噂の方。
最近だと『あさが来た』の倉掛さんを演じられていました。
(まさか和歌山のみかん農家と同時に日本国家も守ってたなんてなあ)



■巨災対というパワーワード。


100人以上の死傷者を出した巨大生物の襲撃。

矢口は、保守党政調会長・泉(松尾諭)にあることを依頼し、次なる襲来に備えて対策チーム「巨大不明生物災害対策本部」を編成しました。
縮めて巨災対、うーん何とも強そう。

このメンツがね、またいいんですよ。

首を簡単に縦には振らない骨太の奴ら。
出世とは無縁、吹き溜まりのようなオタクメンバーたち。

厚労省から森(津田寛治)、文科省から安田(高橋一生)、前述の環境省から尾頭(市川実日子)。
資源エネルギー庁から立川(野間口徹)、骨太な専門家として城北大学准教授の間(塚本晋也)、他。
そして志村(高良健吾)と矢口(長谷川博己)。

のっけから「もうちょっと情報ないの?!」だの。
「採取したサンプルこっちにもちょうだい」「ごめんもうない」だの。
基本的に『好きに好き放題やってそうな人たち』。

風貌も内閣の面々とはかなり違っていて、役職も課長や課長補佐あたりまで。
その中でとにかく高橋一生がめちゃくちゃ可愛いし尾頭さんがカッコいい。
しかし貝原さんの場合は出世なのかどうなのか。

そんな理系オタクの智の結集により、被害地域に放射性物質による汚染が生じていることが判明します。
あの巨大不明生物の体内には原子炉のような機関があり、エネルギー源は核分裂である可能性が示唆されます。

またサンプル解析から、ヒトよりも巨大なゲノムサイズがあること。
一個体で進化を続ける「完全な生命体」であることが判明します。




■米国からきた女、米国から来て消えた男


米国大統領次席補佐官が極秘裏に来日。
大統領特使のカヨコ・アン・パタースンが矢口に接触を図りました。

しかしまあ石原さんの英語がネイティブなこと。
矢口の下の名前は蘭堂なのですが「ヤグツィランドゥー」と流れるように発音しちゃうくらい。


カヨコは、「牧悟郎」という男を探してほしいと矢口に依頼します。
元城南大学統合生物学教授、日本から追放されるように渡米。
その後米国で研究をすすめていたようですが、7日前に成田に降り立ったまま行方知れずという牧。

なんでこんなときに、とブツブツ言いながらも牧を探し当てた矢口たち。
それは冒頭に描かれていた無人のプレジャーボートの持ち主でした。

その無人のプレジャーボートの名前は、GLOWRY-MARU。
1954年の初代ゴジラで最初に『巨大不明生物』に遭遇したのは「栄光丸」という貨物船でした。
これは単なるオマージュなのか、いやそれとも。


ともかくそのプレジャーボートに遺された遺留品。

そこに遺されていたのは「私は好きにした。君らも好きにしろ」というメッセージ。
「呉爾羅」という走り書き。


カヨコの話で、「呉爾羅」とは米国エネルギー省(DOE)によるコードネーム「Godzilla」であると判明します。



また呉爾羅とは、牧の故郷・大戸島で「神の化身」を意味する言葉でした
60年前、各国が大量の放射性廃棄物を海洋投棄していた時代。
それを食したゴジラは放射線影響下でも生存できるように進化していったという牧の仮説。

以降、巨大不明生物は『ゴジラ』と呼ばれることになります。



■リアルな現代史の上に作られたゴジラ


そう、ここで初めて呼ばれたんです。

これまで和製ゴジラは、「1954年にゴジラが日本に現れた」という、いわばゴジラ史の上に作られたものでした。
それが今回は、「201X年の日本に巨大不明生物が現れた」という現代史の上に出来てるんです。
歴代ゴジラとは異なる世界観の作品。

前述の「有識者しっかりせい」でもそうでしたが、知ってる人がいない。
唯一知っている人だった牧博士がいない。

よくあるじゃないですか、やたら詳しい専門家や博士的な人。
そういう人が政府に協力して、事態を解決に導いていく。

それもできない。

特殊兵器もない。
オキシゲンデストロイヤーもない。


あるのは『2016年の日本にあるもの』だけ。



■「私は好きにした。君らも好きにしろ」


初代ゴジラとは違う世界観の上にある、とはいうものの。

「私は好きにした。君らも好きにしろ」という牧博士の言葉は、どうしても初代ゴジラを思い出させます。
「人間の身勝手によって生み出された怪獣は、また人間により消えた」、そんな初代ゴジラ。

前述の余貴美子花森防衛大臣は、菅井きん演じる小沢議員のオマージュ、もそうでしたが。
岡本喜八演じる(というか写真)牧悟郎は、芹沢博士のオマージュなのかもしれないなあと。


ちなみに牧元教授のこの言葉。
後半に、対照的な言葉が登場します。

「この国で好きを通すのは難しい」
なんとも意味深なフレーズ。




■ガッズィーラ問題


カヨコを演じる石原さとみ。
流暢な英語で彼女が言うのは「ガッズィーラ」

ガッズィーラで思い出すのは、2014年のハリウッド版ゴジラ(ギャレゴジ)のあの名シーン。
渡辺謙演じる芹沢博士が「ガッズィーラではなくゴジラ」と宣言した名シーン。
ゴジラは日本で生まれたものだから、「ガッズィーラ」ではなく「ゴジラ」を呼ばせてほしいと、渡辺謙さんが製作スタッフに訴えたとか何とか。

同じようにカヨコは途中で「ガッズィーラ」から「ゴジラ」に言い換えます。
このへんはギャレゴジへの、というより渡辺謙のオマージュなのかなとも。




どうでもいいでんですが、2014年のギャレゴジ。
渡辺謙さんが芹沢博士役ってんなら、そこは1954年の芹沢博士に倣って眼帯して伊達政宗になってほしかったなあって。
(そういう問題じゃない)



もっとどうでもいいんですが、石原さとみさん。
最近では『てるてる家族』の冬子でお馴染なのですが……

だめだ、冬子がこのあとエクストリーム出世するように思えてくる。




■生物には生物由来の兵器を


ストーリーに戻ります。
巨災対がとった次なる手は、ゴジラの分析でした。

あの赤い大きな背びれ、そこから放熱をしている可能性は高い。
しかしそれはあくまで余熱調整であり、メインの冷却期間は血液循環そのものではないか、と。
ならばその血液循環をとめてしまえばいい。

どうやって?
血液凝固剤。

どこから?
口からしかないでしょう。


そうして血液凝固促進剤の経口投与を目指す矢口プランが発案されます。


序盤に「生物ならば生物が倒せるはずだ」というセリフがありましたが、まさにそのとおり。

生物を倒すならば生物由来のものを使えばいい。
それが血液凝固剤。
それが矢口プラン。



■つかの間の平和が突然終わる


カヨコの来日、矢口プラン発案に前後して、つかの間の平和が訪れます。

再開される学校。
動き出す経済。
修復される道路。
街を歩く人々。

わずかな時間ながらも平和のありがたみが描かれたのが、妙にリアルでした。


そのせいでしょうか。



さらに巨大化したゴジラが相模湾に現れたときの絶望感を、より大きなものに感じたのは。

第4形態となったゴジラは稲村ケ崎から鎌倉へ上陸。
小町通り上空を尾で掠めて、市街地を駆け抜けます。



■タバ作戦



このままの速度では3時間以内に都内に到達するゴジラ。
都内侵入は絶対に食い止めなければならない。

首都防衛を決断する大河内首相。
絶対防衛線と定められたのは東京と神奈川の境・多摩川でした。

丸子橋の橋梁周辺、多摩川河川敷を主戦場とした『タバ作戦』が展開されます。
三沢基地、木更津駐屯地、立川駐屯地から戦車などの重機が到着します。

このタバ作戦、詳しい人が見たらかなりテンションたぎるところかと。




フェイズ1は空中戦。
機関砲滞空射撃、30mm機関砲射撃、対戦車ヘリによる誘導弾の一斉発射。

全弾直撃するも、ゴジラにはまったく効いていない。
全弾直撃したのに、ゴジラは無傷。


「総理の命令があれば我々は徹底的にやります!」
力強い花森防衛大臣と財前、それからピエール瀧演じる西郷(タバ戦闘団長)が救いでした。




そして大河内が武器の無制限使用が許可されたフェイズ2。
それは地上戦でした。

多摩川の東京側に並んだ地上部隊が、川崎側のゴジラに向けて一斉射撃。
富士駐屯地からもMLRSが砲弾を浴びせます。

ようやくゴジラの進行が止まりました。




さらにフェイズ3。
F2によって投下されたJDAMがゴジラを直撃。

これでどうにかなるか……








と思いきや。

舞い上がる煙の中、武蔵小杉の高層ビル群や丸子橋を破壊するゴジラ。

そして絶対防衛線を突破。


地上部隊を潰して進行していきます。
その中には第1戦車中隊長・池田(斎藤工)も。

西郷らのいる前進基地(多摩川浅間神社)や大きく破壊されてしまいますが、ここピエール瀧が微動だにしないのがすごい。
まさに作戦隊長。

そんな力強い西郷隊長が逆に皮肉にも見えました。
これほどの人が、これほどの部隊が、これほどの戦力が一切何も抵抗できないなんて、と。




■破られた絶対防衛線


ゴジラは目黒区内へ侵入、いよいよ危機が迫る中、東官房長官が記者会見を開きます。

それとを中継する家電量販店のシーン。
多くのテレビ局各局が緊急記者会見を中継しています。
が、ひとつだけ安野モヨコのアニメ番組を放送している局がありました。
……テレ東か?いやTOKYO-MXか?
このへんもリアリティ追求してるなあって。
(さすがにテレビ東京はご当地だし中継したんじゃないかなあとも)


東官房長官より、日米安保条約に基づく駆除協力を在日米軍に要請したことが知らされました。
が、米軍の攻撃範囲が予想以上に広いのが大問題。

攻撃範囲内に住む都民が脱出しなければならない。
そうしている間にもゴジラは迫ってきます。

逃げろ。
一刻も早く逃げろ。


子どもを抱えて走る人。
列車に飛び乗る人。
身動きの取れない車列。

逃げろ。
一刻も早く逃げろ。


ゴジラはあのときの自衛隊ヘリのように待ってはくれない。
逃げるしかない。

息をのむ展開が襲い掛かります。



■運命の分かれ道


東京の中枢に近づくゴジラ。
首相官邸もまたその予想進路内に入ります。


大河内首相は退避を進言されるも、「都民の避難が済んでいないのにそれはできない」と最初は拒否。
しかし内閣総理大臣が守るべきは都民だけではない、と東や矢口らが説得します。

幸いにも東京都庁は予想進路から外れていました。
「避難中の少しの間だけ、都知事に任せましょう」の言葉で退避を決意した大河内首相。

まだ記憶に新しい話。
「46道府県には関係ないわー」って思ってたけど。
何らかの形で『東京都』が危機に陥ったとき、『日本を守る東京』を指揮するのは一地的に東京都知事になるときがあるんだなあと。


巨災対も避難することに。
物が持ち出され、人がいなくなって。
そこに残ったのはくるくる回っている回転椅子。

退避先は立川。赤坂が先に向かっています。
大河内、東、花森ら閣僚たちはヘリで移動。
矢口、志村らは陸路を車で移動することが決まりました。



■圧倒的絶望


米軍のゴジラへの攻撃が開始されます。

鳴り響く防災無線
「地下に避難してください」


地下街、地下鉄に溢れかえる人たち。
東京ならではの光景です。


地下って大事なんだなと思いました。
そりゃ増水のときなんかは怖いですけど、こういうときは地下。
そうだよね、防空壕とか地下だもんね。


地中貫通型爆弾がゴジラの頚部を直撃。
効いたか?












と思いきや。

放たれる火炎放射。

火災旋風のような火焔が立ち上り、吹き飛ぶ高層ビル。




──これは東京大空襲なのか。それとも関東大震災なのか。


火炎放射は放射熱線へと変わり、熱戦は米軍の戦略爆撃機Bー2を撃墜。
放射熱線は口からだけではなく背部からも放たれ、飛行する物体を次々と撃墜。

その中には大河内、東、花森らの搭乗したヘリコプターもありました。

放射熱線が破壊したもの。
米軍ヘリ、丸の内の高層ビル群、官庁街、そして政府の中枢。
みんな死んだ。


しかしキャスティングの妙技でしょうか。

大杉蓮、余貴美子、柄本明たちのいる内閣。
また國村準、ピエール瀧、斎藤工のいる自衛隊。
彼らならば勝てるんじゃないか、と思わせてくれる豪華俳優陣。

それが負けた。
圧倒的な絶望感が胸にこみ上げます。


──もうどうにもならないんだ。

涙が出ました。
なぜ涙が出ているのか分からないけど、口をおさえながら涙を流しました。

これは映画なんだから。

そう言い聞かせても、なぜか涙は止まりませんでした。




■闘え。前も向いて進め。


ゴジラは東京駅構内の線路上で活動を停止しました。



東京駅、プラットホームの数が日本一多い駅です。
在来線が地上5面10線、地下在来線も9面18線。
他にも新幹線、地下鉄など含めたら東京ドーム約3.6個分に相当する広さがあります。

ちょうど在来線地上ホームの真ん中、ゴジラが停止しています。


内閣総理大臣ら多くの閣僚の死が発表されました。
閣僚・政治家だけでなく、霞が関永田町を直撃したということは数えきれない犠牲者が出たことも容易に想像がつきます。
多くの関係者家族も命を落としたことでしょう。

しかし生き残った者たちが死を悼んでいる暇はありません。
今はすべきことがある。


巨災対のメンバーの大半も地下に避難しており無事でした、が。

津田寛治演じる森。

彼には家族がいました。
しかし2回目の上陸、首都壊滅のあと、連絡が取れていない様子。
そして矢口の言葉に下唇をかみしめる森。

つまり森の妻子は犠牲になった可能性がある。

森の家族が劇中に登場したわけではありませんし、森が連絡を取ろうとしていたシーンがあったわけでもありません。
序盤、森が開く「スマートフォンのロック画面の待ち受けに妻子の写真」が登場。
そのあと、巨災対が再び集まった時、同じく森のスマホの画面で「5回妻に発信するも受信していない画面」が数秒描かれるだけです。
二度目観たときにこれを確かめ、思わず涙が出ました。


官邸機能は立川の広域防災基地内災害対策本部予備施設に移されました。

臨時の内閣総理大臣に指名されたのは里見農林水産大臣(平泉成)でした。
先ほどまでの大杉蓮・余貴美子らに比べたら、日米会談に通訳をつけていたり、「ラーメン伸びちゃったよ」となんとも老獪な感じ。

足立先生…!
足立先生までエクストリーム出世!!





■映画なら、この先残る。


被災した3区の住民が東京を離れていきます。
迎えたのは西日本や、北関東に作られた避難所。

──この光景はみたことがある。

──ああそうか、あの日の大津波でもあり、同時に福島第一原発でもあるんだ。
──避難や被害の規模こそ違えど、それを意味しているんだ。

日本列島各地では避難所が作られました。
その地名がテロップで流れるのですが、ある地名が流れたときに涙が噴き出ました。

埼玉県加須市。

2011年の東日本大震災、福島第一原発の事故で被爆した福島県双葉町が一時的に移転された地です。
年月が経つにつれ、東日本大震災や福島第一原発事故の記憶自体が薄れる中、双葉町もその例外には漏れません。
双葉町が埼玉県に一時移転したということも、この先薄れてしまうかもしれません。



しかし、映画ならこの先に残る。
初代ゴジラが62年残ったように。
62年後も残る。





■それがニューヨークでも同じことをするだろう



矢口は巨大不明生物統合対策本部副本部長、赤坂は官房長官代理として巨災対の活動が再開されます。
幸いにも巨災対のメインメンバーは命をとりとめていました。

東京駅で停止しているゴジラ。

巨災対の分析調査の結果、ゴジラの無性生殖による個体増殖の可能性が明らかになります。
それが群を成し小型化、そして翼を持つようになり、やがては米国西海岸へ──

カヨコは米国が核兵器の使用を考えていることを矢口に明かしました。
国連多国籍軍の名のもとに、日本に3つ目の核を投下する。


もちろんそれは避けたい、避けるべき状況です。
しかしそれができれば、の話。

「そこがニューヨークでも同じことをする、と彼らは言っていた」と赤坂。

これに困惑を隠せない巨災対メンバー。
「選択肢としてはありだけど、選んじゃいけないだろう」と頭を抱える安田。

里見臨時首相は赤坂にあることを頼みます。
日本も当事国として多国籍軍に協力することになる、「そのための判断」を首相に一任できる法案を立ててくれと。
ようは里見の判断が東京に核を落とすことになるということ。

「こんなことで歴史に名を残したくなかったなあ」

のびる里見臨時首相の声に、赤坂官房長官代理はわずかな抵抗をみせます。
ここまで理想主義者?の矢口と対照的に、徹底的な現実主義者として描かれてきた赤坂。
必要なのはわかっているけれども、それでも核は嫌だ、と。



■被爆三世


立川モノレールそば。カヨコは自身が被爆三世であることを矢口に明かしました。

「ガッズィーラ・ゴジラ」のところでも述べましたが、ギャレゴジの芹沢博士もまた原爆の悲劇を提督に訴えていました。
このへんも渡辺謙のオマージュなのかなとも。

渡辺謙がハリウッドで「ゴジラ」を主張したことをふくめ、台本2ページ分くらいに及ぶ原爆の悲劇を訴えたシーンの熱演へのリスペクトなのかなとも。




■カウントダウン、はじまる


多国籍軍の熱核攻撃を容認することになった日本政府。
人道的配慮により都民の避難を優先する、とも。

「避難するということは今迄の生活を捨てるということだ。簡単に言わないでほしいなぁ」

里見臨時首相がぽつりともらした言葉が印象的でした。

多国籍軍の推定するゴジラの活動再開は360時間。
2週間。


ついにカウントダウンがはじまります。



■逃げろ


逃げろ。
一刻も早く逃げろ。

西へ、北へ。

逃げろ。


都民360万人の大疎開です。

上野のバスターミナルには高速バスに乗り込む人々が殺到。
名古屋方面へ向かう高速道路の入り口には、その高速バスが殺到。
船で逃げる人。
(新幹線の描写はありませんが、東海道新幹線はおそらくまだ新横浜駅止まりかと)

「また疎開か」と避難する1954年初代ゴジラとは少し異なる光景です。



■話の内容判らせる気ないだろ。


矢口は、例の矢口プランの再開を決意しました。
血液凝固促進剤を日本全国のプラントで生成。
その量672キロ。

また、牧の遺した解析表が巨災対の間によって解析されます。
折れ線グラフのように見えていたそれは折り紙、細胞膜御分子構造図でした。

ゴジラは「原子炉のようなものを体内に持っている」とされてましたが、それが徐々に明確になっていきます。

熱核エネルギーを栄養に変換する器官を内蔵している混合栄養生物ではないか、と。
ならばその器官によって血液凝固促進剤も無効化される可能性も高い。
それは回避したい。

とその矢先、例の解析表は細胞膜の活性を抑制する極限環境微生物の分子構造であると判明しました。
この抑制剤を血液凝固促進剤と共に投与すれば、血液凝固剤の性質は維持可能となる。


すいません、このへん何言ってんのか自分でもよくわからないです。
というか会議シーンのテロップよろしく、制作側もわからせる気はないと思います。


でも、言いたいことは分かる。
でも3人寄れば文殊の知恵というか、火事場の馬鹿力というか。
これならどうにかなるんだな、というか。
最後の希望なんだな、というか。



<精一杯頑張った解釈>
血液凝固剤でゴジラの体液循環を止める。
ゴジラはその原子炉システムでは、自身の冷却が不可能となる。
生命維持のため自己制御システムを停止させる。
動力源を失ったゴジラの体熱は低下し、最終的に冷却・凍結状態となる。



ともかく、血液凝固促進剤の経口投与を主軸に据えたヤシオリ作戦が実行されることになりました。



■タイマーを、とめる


ゴジラ凍結のための準備が始まって10日。
多国籍軍によるゴジラ熱核攻撃開始の最低ラインまで残り2日。


その間、ゴジラ(まだ停止中)の調査は進んでいます。
しかし無人ドローンによる接近は、全て熱線で破壊されてしまう。
どうやら飛行物体を全て撃墜してしまうようです。

さらに血液凝固促進剤は確保できても、抑制剤の製剤が間に合いません。
凝固剤だけ投与しても無効化してしまい、今度こそ──


そこで動いたのが政府でした。
いったんカウントタイマーを止めよう、と。


政府が働きかけた先は、原子力に大きな興味を示していたフランス。
極秘資料でフランス政府に働きかけ、国連を動かす。
そうしてタイマーを止める。

『生物には生物を』をゆくヤシオリ作戦ですが、その裏で外交交渉も行われている。
それはつまり、『人間には人間を』。



カヨコもアメリカ政府に訴えます。
巨災対の凍結プランを促進すべきであると。
(ここで米国国務長官?の顔を映さないのがお見事)
カヨコは矢口に米軍との共同作戦を提案しました。

必要最低限の抑制剤が確保され、ついにはじまります。

矢口は立川から移動し、北の丸公園科学技術館の屋上にやってきました。
指揮官は前線に立つな、後方で指揮をしろと泉に止められるのですが、矢口は前線も前線、一番前に発ちます。

しかしその表情がアップに抜かれることはありません。
ほとんどが防護服と防護マスクで隠されていて、目元しか映ることがないからです。
他の人物も同様でした。

これはおそらく冒頭会議シーンの顔アップにつぐ顔アップとの対比なのでしょう。


日米共同の対ゴジラ総力戦。
ヤシオリ作戦がはじまります。





■ヤシオリ作戦



作戦が開始されます。

まず西(東京駅からみると南)から姿を見せたの、700系新幹線2台
もちろん無人です。



白い車体がゴジラを直撃します。
設計上の最高時速は340キロ。


ゴジラを直撃するも、跳ね返される700系。






しかしこれは陽動作戦でした。
ゴジラが新幹線に気を取られる隙に、米軍無人爆撃機が接近・攻撃。


前述の通りゴジラは接近する飛行物体に徹底的に熱線を浴びせます。

攻撃しながら撃墜される無人爆撃機。
放たれ続ける熱線。

攻撃する無人爆撃機。
口から放たれる熱線。

撃墜される無人爆撃機
背中からも放たれる熱線。

それでもまだまだ無人爆撃機。
尾からも放たれる熱線。


そしてゴジラが熱線を全て出し切ったかに見えたとき。





周囲の高層ビルが次々と倒れていきます。

あのときゴジラが破壊した東京中枢の高層ビルが、今度はゴジラに襲い掛かります。
東京駅の北側・東側から倒れた高層ビルが大きな壁となり、ゴジラは身動きが取れなくなり……

その足元に米軍によるミサイル攻撃。
ゴジラ転倒!



口元が露わになったそこへきたのが、ポンプ車。
すかさず凝固剤と抑制剤を注入。



10%…

20%……

30%………

っとゴジラが立ち上がって、放射熱線でポンプカーをなぎ倒す。

しかしゴジラは弱っている様子。





そこへまた南から来たのが、5台のE233系在来線。

山手線、京浜東北線、東海道線(上野東京ラインの可能性も)、中央線2台。
設計最高時速は、時速120キロ。

新幹線に比べれば遅いです。
しかし大きく違うのが、これは通勤通学に使われる在来線だということ。


そこにはいつも人がいた。
いつもなら先頭車両から最後尾まで人がぎっしり乗ってる満員電車。


でもその人たちはもういない。
だから爆弾を積んだ。

それが無人在来線爆弾。


大量に積まれているであろう爆弾がゴジラの足元を突撃。
爆音。
煙。

ゴジラは再びバランスを崩し転倒。


そこへ再びポンプ車がそろいます。
アームを伸ばし、凝固剤の再注入。


40%…

50%…

60%…

75%…


……必要最低量を突破!

90%…

100%!








突如ゴジラが起き上がります。

しかしそこには熱線も咆哮もない。

ゴジラの色がみるみる冷たいものになっていく。
体温、マイナス196℃。


凍結に成功したところでヤシオリ作戦は終わります。



■無人在来線爆弾っていうパワーワード


このヤシオリ作戦。
なにがすごいかってね。

日本がこれまで積み上げてきた技術がゴジラを倒したようなもんですよ。


例えば世界に誇る新幹線。
陽動作戦とはいえ、あの最高時速があるからこそゴジラを反応させた。


次に高層ビル。
コンクリートジャングルと揶揄される高層ビル群だけれども、ビルだって武器になる。
(丸の内駅舎のところは泣きそうになった)


最高だったのは無人在来線爆弾。
列車爆弾でも、無人電車爆弾でも、無人新幹線爆弾でもありません。

それは無人在来線爆弾。

無人在来線爆弾はかつては人々を乗せていたんです。

京浜東北線は、ゴジラが破壊した蒲田方面から来る京浜東北線から。
東海道本線・上野東京ラインは、同じように破壊してきた品川、武蔵小杉、鎌倉方面から。
山手線は、破壊された東京を守り続けてきた。

沢山の人の命を、生活をのせて首都圏を走っていた。
それが奪われた。


在来線の底力をみました。



最初の上陸時に潰された京急、丸子橋。
陽動作戦でつかわれた700系のみならず。

かつてのゴジラシリーズで破壊され続けた電車と、そこにいた人たちが一丸となってゴジラに突っ込む。
もう負けてはいられない、そんな在来線の底力。


しかしE231系をセレクトするのがいいなあと。
あれがもし6ドア車でしかも軽量化車両だったら、ああはいかなかったでしょう。
耐久性を高め、特に先頭車両・前面が強化されたE231系だったからこそ成し得た技だったのでしょう





■働く車はかっこいい


ゴジラの前にずらっと並んだポンプ車。
延びるアーム。
ゴジラに口に突っ込んで、凝固剤を一斉注入。

一度はやられたけれど、もう一度。
負けるもんか、と。


──ああ……これは2011年3月に原発に水をまいたハイパーレスキューのヘリだ。

はたらくくるまはかっこいいです。

在来線も、新幹線も、ポンプ車も。
机も、椅子も、コピー機も、電話も、ホワイトボードも事務用品もかっこいい。

ありとあらゆる日本の技術が闘ったんだなと。




■働く人はカッコいい


それを使う人、動かす人もかっこいいです。

大量の凝固剤と抑制剤を注入するには、途中でポンプ車のバルブを交換する必要がありました。
その交換する人の手元や足元は映りますが、顔は映りません。
映ったとしても役名はないでしょう。

でも彼らこそ現場の最前線に立って、闘った人間。

ポンプ車の交換手だけではなく、名もなき人たちが大勢いる。
このあと頑張っていく名もなき人たちが大勢いる。
そして、亡くなった人も大勢いる。

皆が主人公だった。
皆が懸命に闘った。



329名というかつて無い規模の俳優陣を擁した『シン・ゴジラ』。

なぜ最後にその俳優たちの顔を映さなかったのか。
主人公であるはずの矢口の顔も、このヤシオリ作戦ラストにはほとんどマスクに覆われています。

それはきっと主人公は、名も顔も知られた英雄的な人物ではないこと。
名もなきの人たちこそが、『シン・ゴジラ』における主人公、ゴジラに対抗できる力になるというメッセージなのかなあと感じます。






■エピローグ、プロローグ



そしてエピローグ。

尾頭がある分析結果を提示します。
それはゴジラの放出している放射能が2~3年で半減していくこと。
つまり除染、復興のめどがたつということ。

尾頭に笑みがこぼれました。

カヨコと話す矢口。
もしゴジラが活動再開をした場合、その3526秒後には核攻撃が行われることになってもいます。
「こうでもしなきゃ世界は納得しないだろう」と矢口。




■ゴジラとは何だったのか


初代ゴジラは反核のメタファーとして描かれていました。
しかし『シン・ゴジラ』におけるゴジラはなんだったのか。

もちろん天災・災厄のメタファーの側面もあるかと思います。
何を思い出すと言うまでもなく、否が応でも東日本大震災を思い出します。



しかしそれだけではないような気もします。

思えば、ヤシオリ作戦のラストシーン。
ゴジラの咆哮は泣き叫んでいるように感じました。
「痛いよやめて、もう海に還るから」って。

落ち着いて考えたらゴジラ、何をしたわけじゃない。
散歩をしていただけ。

ただその体があまりに大きすぎた。
その力があまりに強すぎた。

だって神の化身だから。
完全生命体だから。



不完全な人間たちは、完全生命体を恐怖と感じた。
神の化身を畏れて、自らの知恵を絞って攻撃をした。

──ゴジラは、ゴジラだ。



■?!



ネットで話題のラストカット。


東京駅のそばに立ったまま氷漬けとなったゴジラ。
アップに映し出されます。


その尻尾の先。
ゴジラと同じ背鰭を持つ人型をした謎の異形。


「?!」

ここで幕が閉じられ、エンドロールを迎えます。
いかにも庵野作品らしいなと思わされる結末。

人の形がある、ということは人を飲みこんだわけなのでしょうけれども。
だとしたら誰を?

『シン・ゴジラ』の中だと、それになりうるのは牧博士しかいないはず。
牧博士が放射能を恨んだ研究の末、行方不明になった牧博士。

「私は好きにした。おまえたちも好きにしろ」の意味が、「私はゴジラと同化することにした。おまえたちもやれるだけやってみろ」の意味なのだとしたら。
あの解析表もプレジャーボートも納得がいくあたりです。

『シン・ゴジラ』のゴジラに、人間が取り込まれている可能性はかなり高いでしょう。
人間が恐竜を着ているような着ぐるみ怪獣。



造形を担当されたの竹谷さんのインタビューによると、
ゴジラに関しては「自己分裂していく生物なので、尻尾の先には形成不全といいますか、まだ出来かかってる感じの歯や骨が生えている」と。
尻尾の部分に関しては「完全生物ですから、すべての生き物が入っているという解釈ともとれます」とのこと。
さらに庵野監督は「人間の要素も欲しい」とのことで、竹谷さんは『歯を人の形に見えるように』したと。
(パンフレットにはもっと詳しく書いてあります)





しかし気になるのが、その『しっぽ人間』が何かとても苦しそうな表情をしていたところ。
しかも一人だけじゃない。

牧博士だけじゃない。もっといる。

じゃあ他に誰がいるんだ。


前述の『初代ゴジラは反核のメタファー』、『シンゴジラのゴジラは天災・災厄のメタファー』であることを考えると。
ゴジラに取り込まれているのは、原爆や核や原発事故など、あるいはそれに近い災厄で命を奪われた人たちなのではないのでしょうか。

彼らは死者として海に還り、それをゴジラが食べた。
それが『神の化身』『完全生命体』たる所以なのではないかとも。


ならばゴジラはこの先どうなるのか。

いずれにしても、結論を出すのは難しいラストシーンです。





続きはこちら。
『シン・ゴジラ』ネタバレおまけ、30,000字じゃ語り切れなかったこと






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観てきました (ヨーコ)
2016-08-06 16:41:34
この夏、ゴジラが公開されるなんて知らず、こちらの渾身の記事を拝読して即シネコンへ行きました。
「ニッポンVSゴジラ」、でした。
ゴジラの通ったエリアはどこも見慣れた所だし、東京駅が決戦の場で、無人電車が次々に体当たりをかますのに、言葉に変換できない思いがしました。
ゴジラの第4形態を見て、「・・痛そう」と感じました。なんだか、全身黒い瘡蓋と傷口みたいで。焼けただれながら変態を繰り返してるような?
何で生まれたのか本人も解らないだろうし、何も考えない・感情も無さそうな風情がなぜかリアルでした。
お見事! (パタリロ)
2016-08-11 02:21:16
見事に、見事過ぎるまとめ!
これ以上でもこれ以下でもない、完璧なまとめ、ありがとうっ!♡!
Unknown (bucchi)
2016-08-28 10:37:39
シン・ゴジラにやられてしまい、いろんな解説ブログを読み漁ってますが、この記事はとても素晴らしいです。
五回観ましたが、この記事を見て、まだ見逃してるところが多くあったことを知りました。
私としては、第二形態がとにかく印象的でした。初めて見た時、何故かものすごい罪悪感を感じてしまったのと、とても残酷なものを見せられている気がして、この表現は日本人にしか出来ないと思いました。
放射熱線の絶望感も相当でしたが、第二形態を見た時のあの感覚はまだ消えません。
細かい事ですが・・・ (こたろー)
2016-09-04 00:47:24
血液凝固促進剤の量は「672キロ」では無く、「672キロリットル(=67万2000リットル)」です。
(もし、1リットル=1キログラムとするなら、67万2000キログラム)
ちなみに、大型タンクローリーのタンク容量ですが、一般的な物は20キロリットル程度。
国内最大の物で30キロリットルです。(法律上の規制等でこれが国内では限界です)
なので、一般的なタンクローリーをかき集めてヤシオリ作戦を実行すると、最低でも34台必要となります。
予備等も含めると50台程度用意したんじゃないかと個人的に思ってます。
(細かい事を言ってすみませんw)
在来線爆弾について (がっずぃーら)
2016-09-08 22:34:00
面白かったのですが一つ間違えていたので。劇中ではテロップにあったとおり、中央線と京浜東北線はE233系です。

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