読書の醍醐味っていろいろとあるとは思うのだけれど、人に薦めるってのもその楽しみのひとつだと思います。
自分のお気に入りの作品を、その人の人となりを知っている知人に読んでもらって、その感想を聞くことですね。
薦めるときに「どう説明するかな」って自分が編集者になった気分になれるし、もらった感想も肉厚なものに感じられます。
本を読んでいてよかったなあと思える瞬間です。
恩田陸作品は私は中学時代から好きでして、かれこれ10年以上前になるのでしょうか。
「私、読書好きだ」と自覚したのもそれくらいの年ごろだったので、恩田陸作品との付き合いは読書史と共にあるのかもしれません。
その恩田陸作品なのですが、過去エントリーでいくつか紹介している通り、いろんなジャンル・バリエーションがあります
いろんなバリエーションがあるので、「どれから読めばいいのかって聞かれても悩む」という状態に陥りました。
なので様々なジャンルの中の「これぞ」をオススメしてみましょう。
関連リンク
・恩田陸『黒と茶の幻想』、『球形の季節』、『光の帝国』などなど
・恩田陸『三月は深き紅の淵を』とはなんだったのか。
■恩田陸作品の歩き方
素直な感動ものといえば「光の帝国」。
10の連作短編には「常野の一族」と呼ばれる人たちが登場する。
超能力を持ちながら、ひっそりと平和を愛し穏やかに生きるている一族。
お祈りのシーンは性根腐ってても号泣できるレベル。
恩田陸の恋愛モノなら「ライオンハート」。
エリザベスとエドワードの時空を超えた愛の話。
ノスタルジーの神様らしく、切なさと優しさが同居してる恋愛小説。
「いつもあなたを見つける度に、ああ、あなたに会えて良かったと思うの」の台詞が、グイッと物語の世界に引き込んで行く。
デビュー作で多分知ってる人は知ってる「六番目の小夜子」も恩田陸作品。
青春ノスタルジーも充分あるのだけれど、それよりも集団心理の怖さが秀逸。
臨場感たっぷりのホラーで、脳内演出家が自動的に生成される。
怖いのいけるならオススメ。
学園モノといえば、次作の「球形の季節」も霞まない。
地方都市と高校生の閉鎖性の怖さとノスタルジーを同居させるからすごい。
サブタイトルにそれぞれの章で使ってる一節を用いているのがまたいいのだが、その選び方も秀逸。
怖さで言うなら「Q&A」と「ユージニア」。
Q&Aはその手法も秀逸なんだけれど描写力!未だに混雑したショッピングモールは怖い。
ユージニアもそうなのだけれど、日常的にありうるだろうっていう怖い描写があるのでトラウマになる。
(ユージニアは装丁も味わってほしいので出来ればハードカバー)
少し違う怖さを味わうなら「月の裏側」。
柳川が舞台なんだけれど、描写が美しくもグロテスク。
タイトルの意味がわかったらもう世界に引き込まれてるよ。
短編集なら「図書室の海」。
中でも「イサオ・オサリヴァンを探して」はシリアスな舞台設定ながら、イサオの穏やかなカリスマ性というのがよく表現されている。
「茶色の小瓶」はぜひ読んでみて。
楽しみ方のひとつ、作品間リンク。
常野物語シリーズ「光の帝国」「蒲公英草紙」「エンドゲーム」で楽しむのもいい。
麦の海シリーズでもいいし、三月シリーズで追いかけるもよし。
登場人物は同一人物とは限らないのが重要ポイント。
学園ものでの共通点を探るもよし。
舞台の特徴は?
世界観は?
読めば読むほど味がでる。
楽しみ方もうひとつ。カリスマ性のある女性。
例えば『木曜組曲』の時子や『不安な童話』の倫子、
『六番目の小夜子』の小夜子といい、恩田さんの描くカリスマ性は追随を許してない。
恩田作品のエンディングの手法には好き嫌いはあると思うから、最初の一冊が肝心なんですよね……でも「光の帝国」はおまえら何も言わずに黙って読んでほしい。
— ゆずず (@yuzu0905) 2017年1月19日
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