妄想ジャンキー。202x

あたし好きなもんは好きだし、強引に諦める術も知らない

完結作品の安定感、『BEYOND』、『Queen』。

2015-02-05 12:58:03 | 漫画いろいろ

comico作品の紹介シリーズ。
今回は、完結済作品のうち『BEYOND』、『QWEEN』の2作品をご紹介します。




週刊連載、しかも人気が落ちてしまったら打ち切りの可能性もある連載環境の中で、伏線を敷くというのは実は難しいことではないでしょうか
小説にしても漫画にしてもそうですけれど、プロットの段階で「ここでこの話を入れて、ここで拾って…とするとだいたいこれくらいかかるかな」と想定されていることと思います。
予想外に人気をとれずに本来語るに必要とする話数(ページ数)がとれない場合、慌てて回収していくしかありません。

あの王道・週刊少年ジャンプも、読者アンケートのランキングで下位の作品は、いくら大御所のものでも打ち切ると聞いたことがあります。
実際に「えっここで終わるの?!最初に言ってたアレはなんだったの?」と尻すぼみ感が否めない作品もありました。
逆に、「初回で広げた風呂敷をよくもまあうまく畳んだなあ」とうならされる作品もあります。
後付けや深読みなら「なんだ勘違いか」と納得できるのですが、伏線という形で広げられていたものがそのまま、あるいは荒唐無稽なこじつけで終わる、
というのは読み手側からしても『後味が悪い』ものです。

とはいえ漫画連載も娯楽であると同時に商業・営利でもありますから、読者ランキング下位になってしまったものを続ける、というわけにもいきません。
だからこそ連載中の作品は怖い、というのが本音です。
圧倒的な人気を得ていればいいのかもしれませんが、もし万が一に廃れてしまったら、バッシングがひどかったら、それは『打ち切り』になってしまうのでしょう。
仕方のないことかと思います。
仕事ですから。
逆に、そんなリスクがあるのは仕方ないとして、ならば良作を作る、そんなプロの作家さんたちの仕事には惚れこむものがあります。

そんな連載中作品のリスクを潜り抜けて、完結した作品は「安心して」読むことができます。
webの無料漫画サービスで始まったcomicoも、上記のジャンプ手法然り、ランキングが如実に現されています。
新手法の連載方法、しかも新しいサービスってだけで不安定なのに、なおかつランキングシステムのある週刊連載。
そのプレッシャーは推して測れないものだったのだろうと思います。

だからこそ完結作品には安心感、安定感があるのではないのでしょうか。
「大丈夫、この物語は『完結』する」
ということがわかってるからこそ、余計なことは考えずに物語そのものを楽しめるのかもしれません。




だいぶ前説が長くなってしまったのですが、comicoの完結作品のうち、勇夢将士さん『BEYOND』と、さんぱちさん『Queen』のご紹介です。

なお完結作品は、web版トップページでは、【公式完結漫画一覧】から参照できます。
アプリ版では各曜日、下のほうに表示されています。


以前
読み応えがあって生半可に読み返すととんでもにことになるcomico作品5つ。
こちらでも紹介させてもらいましたが、今回はもうちょっと掘り下げてみます。





【完結してるからこその安定感、広げた風呂敷畳みます『BEYOND』、『Queen』】


●勇夢将士さん『BEYOND』(月曜連載)

スマートフォンから広まる謎と恐怖。海沿いの町を舞台に繰り広げられる本格モダンホラー。


舞台は日本一平和な町と言われる・鏡ヶ崎。
そこの高校生・宇多方羽雲は、学校内でSNSサービス・BEYOND(Twitterを模していると思われます)が流行ってることに戸惑いつつ、どこか空っぽの日々を送っていました。
クラスメイトからすすめられてBEYONDをはじめてみるものの、そこで知ったのは「カカ」という怪物が人を攫って、事件や事故そのものをなかったことにする、という都市伝説でした。
そんな日々の中、ハプニングがあってクラスメイトの川原みなもと交わした会話から、羽雲は一連の事件に足を踏み入れます。

序盤の主な登場人物は
・宇多方羽雲
・川原みなも
・黒石曜子

中盤から
・高木藍
・沢渡洋太
・富長文
といったあたりでしょうか。

物語のキーワードである「カカ」もそうなのですが、羽雲の秘密、みなもとの関係、黒石曜子の秘密などなど序盤で謎がばらまかれます。
「いなくなった人たち」はどこへ行ってしまったのか。
そしてそれを調べようとするとなぜ命を狙われるのか。
羽雲自身はいったい何者なのか。
少しずつ謎が明らかになり、また新たなキーワードが出されます。
その中でまた事件が起こり、また人が消えてしまいます。

中盤から物語は畳みかけるように、敷かれた謎の回収にかかります。
メッセージの秘密、鏡ヶ崎の民俗、そしてまた人が消える。
「いなくなった人たち」を探して行きついた世界で何が起こるのか。

そして羽雲は周囲の人たちの協力を得ながら、すべての謎を解き明かしていきます。
BEYONDに関連した一連の事件の主犯、その動機は意外過ぎるもので、見覚えのあるものでした。

……できるだけネタバレしないようにしたのですがどうでしょうか。
少し言い訳しますが「ネタバレやんけ」でも大丈夫です。
絵の演出が多分それを上回ります。
こちらも縦読みをフルに生かしてる作品です。(読み飛ばしとかが出来ないので)
(当方ホラー映画などには慣れているのですが、深夜に読んだことを本気で後悔した回がいくつかありました)

面白さのピークを迎えるのは、後半部分です。
謎の巫女さんが出てきて説明してくれるのですが、前半で羽雲も読者も抱いた謎や疑問を回収していきます。
と同時にまた新たな謎が敷かれます。
「いなくなった人たち」は戻ってこれるのか、真犯人は誰なのか、その人物はなぜ──。
と、綺麗に回収されていく流れはお見事としか言いようがありません。
無理矢理こじつけや、荒唐無稽な終わり方ではなく、スマートなエンディングです。

途中ちょっと怖いところがありますが、ちょっとだけです。
ちょっと怖いだけ。
ちょっとだけだから全然大丈夫。


作者の勇夢将士さんですが、同じく月曜連載にて、今度はスポーツアクションの作品を描いておられます。
雪合戦を模した「スノーウォーズ」、こちらも最新話で3Dプリンタが登場していたので近未来が舞台なんですね。
ストーリーは上記『BEYOND』とは一転、人も消えないし怪物も出てこない……らしいですよ。
(なんか出てきそうなフラグがすごい立ってますけど、気づかなかったことにしよう)

→連載中作品『スノーウォーズ』





●さんぱちさん『Queen』

”お前の味方は敵だ”FBIアカデミーで起きた奇妙な殺人事件。


comicoの中でもレジェンドと化した作品を紹介するのは、緊張します。
木曜の連載陣はこちらの「Queen」含めて「とにかく続きが気になる『実力派』作品」が多く、こちらの作品も当初はランキング中盤くらいでした。
それがストーリーが進行するにつれてぐいぐいと票を伸ばし、本編最終回には1位になったのが記憶に新しいです。

話の内容は、FBI捜査官を育成する専門学校?・FBIアカデミーで、ある学生が変死体で発見されたことから始まります。
そこに通う日本人学生・斎藤ひふみは日々の学生生活に奮闘していましたが、どうにもこうにも猟奇殺人が苦手。
憧れの捜査官・ジョーカーはいますが、彼女には遠く及ばない日々。
さらにかつて幼少期に自分をいじめていたクエスト・クラウンと再会しますが、そのクエストがなぜか女装をしています。
肝心の殺人事件の捜査が進む中、ひふみ、クエスト、それからクエストを慕うテン・シーらは共に行動をするようになり、独自の捜査をはじめます。

教官や捜査官などに翻弄されながら、やがてもう一つの事件が起こります。
犯人はいったい誰なのか。
ひふみはなぜ猟奇ものやホラーものが苦手なのに、FBIを志願しているのか。
クエストはなぜ女装をしているのか。
捜査官たちは何を隠しているのか。

ひふみたちは幾度かの危機に襲われながらどうにか立ち向かい、一つの真実にたどり着きます。
犯人は意外な人物で予想すらしていなかった動機でした。
またひふみやクエストの幼少期の秘密も明らかになります。

とまあ推理物のストーリーなのですが、何がいいかってキャラクターの個性が立ってます。
おっさん風なひふみ、潔癖症で女装のクエスト、格闘技に長けた微笑j・テン、明らかに見た目男なのに実は女のジェイ少佐……
挙げたらきりがないくらい、すべての登場人物に詳細な履歴書があるのではないかと思えます。

1話の冒頭に『恋愛状態とは快感の伴う強迫性神経症である』というモノローグがあります。
これが後半になっていったいどういうことなのかが明かされます。
また、ひふみが猟奇殺人遺体を毛嫌いするときに、必ず現れるとある男の遺体。
これも後々のエピソードに深くかかわってきます。
そして1話『潔癖症ポニィテイル』、本編最終話35話『潔癖症ポニイテイル』
これが何を意味するかは、ご自身で読んでお確かめください。
とにかく序盤に何気なくおかれた伏線が「えっ、あれこれだったの?!」と回収されていきます。
それがまさかタイトル名やキャラクターの名前にまであった、とは思いもしませんでした。

レジェンドになっただけの価値はある、一読といわず再読の価値がある作品です。

本編が終わった後、脇役で出ていたスペード捜査官が主人公のスピンオフも掲載されました。
そちらも大変大人気。
もともとスペード捜査官そのものの人間性も魅力的でしたし、本編のメインキャラクターたちが成長した姿が描かれています。
本編に比べて短い話構成ですが、スピード感のある演出で十分楽しめます。



さんぱちさんの次作品が『怪盗ロットワイラー』なのですが、これもまた初回にモノローグがあるんですよね。
今のところまだ想像もつきませんが、どんな謎がばらなかれて、どうやって拾われていくのか、楽しみです。

→連載中作品『怪盗ロットワイラー』





気になった方はぜひ本編をご覧ください。
また随時追加していきます。


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