遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

福島第一 全電源喪失は津波が主因との日本の公式見解へ

2014-01-09 23:37:15 | 東日本大震災
 福島第一の事故を招いた、全電源喪失について、原子力規制委員会が調査報告書をまとめ、早ければ月内にも国際原子力機関(IAEA)に提出するのだそうです。
 IAEAは規制委の報告書を受け今年中に包括的な報告書を作成するのだそうですが、規制委の報告書は「日本の公式見解」として活用される見込みなのだそうです。
 

福島第1事故で規制委 全電源喪失「津波が主因」 月内にもIAEA報告 (1/9 産経)

 原子力規制委員会が、東京電力福島第1原発事故を分析した調査報告書をまとめ、早ければ月内にも国際原子力機関(IAEA)に提出することが8日、分かった。規制委の報告書は「津波が主因で全電源を喪失」となる見込みで、国会の事故調査報告書が指摘した地震による損傷の可能性を否定
する記述になることも判明。IAEAは規制委の報告書を受け今年中に包括的な報告書を作成する。(原子力取材班)

 IAEAは現在、5つの作業部会を設置し、事故の経緯や影響、復旧状況について調査している。専門家がたびたび来日しているほか、日本からも規制委の更田(ふけた)豊志委員がIAEAの議論に加わるなどして、事故報告書の作成に当たっている。
規制委の報告書は、「日本の公式見解」として活用
される見込みだ。
 事故分析の中で焦点の一つは、1号機4階にあった非常用復水器(IC)が地震か津波のいずれで破損したかだった。ICは原子炉内の蒸気を冷やして水に戻す重要な装置で、震災後から機能せず、炉心溶融(メルトダウン)を招いたとされる。
 すでに公表されている政府や東電など3つの事故調査報告書は地震による破損に否定的な見方だったが、
国会事故調は、地震直後に作業員が1号機の原子炉建屋内で出水を目撃したことから、「地震による損傷の可能性は否定できない」と判断。耐震設計の見直しにつながる重大な要因とみられた。しかし、規制委は現地調査やコンピューターによる再現解析などから、地震による損壊を否定し、出水は「5階の燃料貯蔵プールの水があふれた」
との記述にする。

 これとの関連で、
国会事故調は施設に大きな損害を与えた津波の到達時刻は平成23年3月11日午後3時37分とし、1号機の発電機は津波到達前の3時35~36分ごろに停止と指摘。規制委は津波の到達時刻は3時36分で、電源設備が停止した時刻と矛盾はなく
、津波が原因で全電源喪失に至ったと結論付ける。

 さらに4号機では、定期検査のため炉心に燃料はなかったため、水素爆発した原因が問題となった。規制委は「3号機から発生した水素がダクトなどを通じて4号機に流れ込んだ」とみなした。建屋に蓄積した水素量は少なくとも約400キロになると初めて試算している。


 福島第一原発の事故調査委員会としては、国会事故調(東京電力福島原子力発
電所事故調査委員会)、政府事故調(東京電力福島原子力発電所における事故調
査・検証委員会)、民間事故調(福島原発事故独立検証委員会)、東電の事故調(福島原子力事故調査委員会)といった、4つの委員会がありました。
 遊爺は、事故の根本原因は、「単線路線のエリート」たちにとって、前例を踏襲すること、組織の利益を守ることが、重要な使命となり、国民の命を守ることよりも優先され、世界の安全に対する動向を知りながらも、それらに目を向けず安全対策は先送りされたとし、この事故が「人災」であることは明らかと明言。更に、歴代の規制当局と東電との関係においては、規制する立場とされる立場の「逆転関係」が起き、規制当局は電気事業者の「虜(とりこ)」となっていた。その結果、原子力安全についての監視・監督機能が崩壊していたとも指摘した、国会事故調の報告が最も信頼できると考えてきていました。
 
国会事故調 報告書 要約版 | 国会事故調

 4つの事故調の比較を、経産省がまとめています。
 
福島第一原発事故と 4つの事故調査委員会 | 経済産業調査室・課

 4つの事故調の報告書の段階では、事故原因については、事故炉近辺は放射線レベルが高く詳細な調査は不可能で、各報告書とも事故の直接的原因の解明は出来ていませんし、再現実験による事故の検証も行われていませんでした。放射線レベルが高く、調査が不可能な場所があることは今でも変わっていません。

 その状況の中で、国会事故調が原因について、異なる見解を出しているものに、1号機4階にあった非常用復水器(IC)が「地震による損傷の可能性は否定できない」としている点でした。
 それを、今回の規制委員会の報告では否定して、津波の影響だとしているのですね。現地調査やコンピューターによる再現解析などから、地震による損壊を否定し、出水は「5階の燃料貯蔵プールの水があふれた」と結論付けているのだそうです。
 4つの事故調が報告の中で提案したことが、何処まで実行されているのか、遊爺には追跡出来ていません。ただ、規制委員会は、事故調が設置を提案(国会事故調は国会内への設置を提案)して出来たものですから、これまでの4つの事故調の報告を引き継いでいるものと考えてよいのかと思ったりしますが、理解できていません。
 
原子力規制委員会の組織理念|原子力規制委員会について|原子力規制委員会

 地震対策については、国会事故調、政府事故調、民間事故調共に程度の差はありますが問題があったと指摘していますね。東電だけが問題ないといったニュアンスです。今回の規制委員会の結論は、この辺りをどう解釈したのでしょう。各事故調ではできなかった「コンピューターによる再現解析」が出来たことは進歩した調査結果と言えますが、現地調査は放射能レベルが高くて近づけないといっていたこととは関係なく調査出来たのでしょうか。
 東電の調査報告に近い回答に見え、東電の「虜」からの脱却はできているのか心配になるのは遊爺の考えすぎでしょうか。

 事故原因が人為的とされた理由は、このあたりの断定の仕方が、事業者側の都合に有利なものであったことと、東電以外の事故調は程度の差こそあれ指摘していたのでした。
 繰り返しますが、3つの事故調は、福島第一の地震対策には問題があったと指摘していたのです。
 「非常用復水器(IC)」との関連性は、素人の遊爺には理解しようもありませんが、国会事故調が指摘する「地震による損傷の可能性は否定できない」とする見方での追及姿勢は必要だと考えるのですが、素人考えなのでしょうか。
 事故を経験し、対策を施した日本の原発は安全性が高いと信頼して、日本の原発の導入を検討している国々に対しても、とことん安全性を確認したものが必要と考えるのですが...。



 冒頭の画像は、福島第一を襲った津波



  この花の名前は、オニユリ  (撮影場所;六甲高山植物園 2013年 8月 撮影)


↓よろしかったら、お願いします。








Fotolia






コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 1月8日(水)のつぶやき | トップ | 1月9日(木)のつぶやき »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ケン・ボーイ (RYU)
2014-01-10 08:45:30
東電の息のかかった、いわゆる原子力ムラとは違い、新たな事故調による判断という事で、一線を画しそうです。

ご指摘のように、「単線路線」による、企業文化と体質の継承、均質な人材の生産と統括というのは、官僚制の基盤である日本の「公教育」の生産システムと同質のものがあると思います。原子力とは、先端技術であり、リスキーなので、常に新たな発明や技術革新を受け入れる企業体質が必要なのに、そうではないと。
「伝統」の継承、秩序と安定を好む日本型企業には、危険度の高い原発に比すれば、ローテクな再生可能エネルギーの方が、向いているように思います。原発に繋がる高度技術を、単一企業のルーティンで扱う、というぬるま湯のような経営感覚と、労働意識の麻痺が、このように、問題を大きくするまで、技術更新や、改革を起こさなかった構造的な原因ではないでしょうか。

アメリカエンロンでは、企業文化がもっとハチャメチャで、新たな技術革新やサービスを取り入れる姿勢が、少なくともあったと思います。それが、利害重視と、経営陣(ケネス・レイ、通称ケン)の独裁的手法によって、粉飾決算に塗れますが、電力部門は誠実にやっていれば、回るのですが、金融デリバティブなど、多角経営によって儲け最優先に走らなければ、中核となる電力事業は無傷で済んだはずです。リベラルな土壌の新進企業であるのが良いか、日本のように、官僚的な保守企業であるかは、一長一短であり、だから、原発は、反対派が唱えるような地震が多い、という単眼的なものではなく、精神的風土として、再考の余地があると思います。松永や正力の時代とは違うのです。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

東日本大震災」カテゴリの最新記事