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白い死神~創作物語~ 第三話

2017-07-16 23:43:57 | 日記

次の人がいる場所に着くまで、
私が死神を質問攻めにしたのは言うまでもない。
死神は、意外と丁寧に私の質問に答えてくれた。

しかし、何もかもを知っているという訳でも無さそうだ……
と言うより、わからない事のほうが遥かに多かった。
やっぱり、詳しい事は、自分で思い出すほかはないらしい。
それでも、死神の答えから得られた情報を総合すると、
おぼろげながら死んだ時の状況がつかめてきた。
私は、どうやら自転車ごと崖から落ちて死んだらしい。
そう言われても、何も思い出さなかった。
けれど、崖から落ちた瞬間の痛みとか恐怖とかを考えると、
忘れたままでいいような気もする。


「さあ、着いたよ。この家だ。」

大きな門のある家の前で、死神は立ち止まる。
ここが、次の人の家らしい。

「じゃあ、入ろうか……。行くよ、流音ちゃん。」

死神が、閉まったままの玄関を通り抜けた。
慌てて後を追いかける。
私の体も当たり前のように玄関をすり抜ける。
中に入ると、死神が階段を上がっていくのが見えた。
どうやら、次の人は二階にいるみたいだ。
一体どんな人だろう。
だんだん緊張してきた。
死んだ人に会うなんて、初めての体験だ。

死神の後からその部屋に入った時、
私はすごく嫌な気持ちになった。
なぜなら、その部屋は明らかに子供部屋だったからだ。
壁紙は、空色。白い雲がいくつも浮かんでいる。
部屋の中は、おもちゃやぬいぐるみでいっぱいだ。
きっと、すごく可愛がられているに違いない。
死神は、その部屋におかれているベッドの横で立ち止まる。
見れば、五歳くらいであろうか。
少し茶色い巻き毛の可愛らしい男の子が眠っているように見える。
天使のような子供だった。

「この子、死んでるの? 」

死神は首を横に振りながら答えた。

「いや、この子は、あと十分ほどすると目を覚ます。
一階にいる母親の所へ行こうとして、
あの階段から落ちて死ぬ事になっている。」

なっている……って。
こんなに小さい子供が? 

私には納得出来なかった。

「なんで、こんなに幼い子が死ななきゃいけないの。
この子の寝顔、まるで天使みたいじゃない。
このまま、朝まで寝かせてあげようよ。」

柄にも無く、つい大きな声が出る。

「そう言われてもなぁ、もう決まっている事だし……。
それに、この子は天使みたいな子ではないんだ。
……つまり、本物の天使になる子供なんだ。
だから、何の汚れもない今の魂が望ましい。
この子はこれから天使になって、
多くの人を幸せにするんだ。
どう、素敵な事だろ。」

誰かを幸せにするために、
死ななきゃいけないなんて、間違っている。
そう思った。
とにかく、この子を助けたかった。
なんとしても、生きてもらいたい。
だって、この子は愛されている。
この部屋を見ればわかる。どんなに愛されて、育てられているか。
まだ、死んではいけない命だ。

「なんとかならないの? 間違ってるよ。そんなの。」

私は食い下がった。
死神は、少し困ったような顔をしている。
どんな顔も、愛くるしい。
本当に、死神にしておくのはもったいない。

「方法がないわけじゃない。天国でも人手不足なんだ。
天使の数が足らなくて、多くの人が幸せになれずにいる。
かといって、だれでも天使になれるわけじゃない。
流音ちゃん、十四歳だったよね。
だったら、魂もそれほど汚れてないだろうし……
もしも、流音ちゃんが代わりに天使になってくれると言うなら、
この子の寿命はのびるかもしれないな。
でも、天使になるのは、ちょっと大変だよ。やってみる? 」

死神の意外なこの提案に、私はすぐに飛びついた。

「もちろん、やるわよ。
私の方は、もう死んでいるんだから、怖いものなしよ。」

本気でそう思った。
この子の命は私なんかの命より、
はるかに価値のあるものに思えた。
天使だろうが、死神だろうが、
なれと言われたものになってやる。
覚悟は出来ていた。

「そう……。じゃあ、まずは条件をクリアしないとね。
この世に未練があると天使にはなれない。それが決まりだ。
流音ちゃんには、この世にやり残したことがあるみたいだよ。
とにかく、それを何とかしないと……。できる? 」

未練って……。そんなもの無いような気がした。
私が死んで、泣く人はいるかもしれない。
でも、断言できる。
困る人はいない。
私には、これといって叶えたい夢もなかったはずだ。
一体、何をやり残したというのだろう。
穴ぼこだらけの記憶をたどっていく。
この子を助けるためには、何としても思い出さなきゃいけない。
必死に過去をさかのぼり、記憶の穴をじっと見つめる。
丁寧に、丁寧に、ひとつずつ……。
そしてそこに、とうとう彼女の名前を見つけた。

「舞坂月子……だ。」

私は思わず、その名を呼んだ。
月子とは、同じクラスだった。
たぶん、私は死ぬ少し前、
月子に会いに行こうとして自転車に乗った。
そこまでは、なんとか思い出せた。
でもなぜ、月子に会わなければいけなかったのかはわからない。
そもそも、月子とは仲が良かったのだろうか。
だめだ。思い出せない。
ただそこに、私のやり残した事があるような気がした。

「舞坂月子に会いに行く。すべては、そこから始めないと……。」

もう後にはひけない。
私は天使になるべく、問題の解決に乗り出した。


            つづく。。。

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