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あしながメール ~創作物語~

2017-04-20 20:58:48 | 日記

地球に。。。
生態系のすべてをぶち壊すほどの
大きな隕石が衝突するまで
あと一ヶ月。

最愛の息子であるたたらを
木星移住用宇宙船「ノアの箱舟」に
無事、乗りこませたみさきは、
最期の瞬間を
生まれ育った実家で過ごすことにしていた。

まさか、こんなことになるなんて
思ってもみなかったなぁ。。。

もうすぐ、人生の終わりを迎える。
けれど、みさきの気持ちは不思議と落ち着いていた。

「さぁ。。。帰ろう。
 実家に帰るのなんて久しぶりだわ。」

生まれ育った家で、最期を迎えるっていうのは
とてもいい考えだとみさきは思っている。
忘れかけていた大切な思い出のかけらも
あの家には残っているかもしれないし。。。

何より。。。
みさきには実家に帰って、
確かめたいことがあった。

それは、みさきにとって、
どうしても確かめなければならない
大切なことだったのだ。


○ ○ ○

地球に隕石が接近していることに、
最初に気付いたのはみさきの夫、涼だった。
隕石は巨大で、
しかも、もうすぐ地球に衝突する可能性が極めて高い。

宇宙開発局に席をおいてから、
涼はこれほど上司への報告に
気が滅入った事はなかった。
人類がこれまで体験した事のない大きさの
隕石の衝突はおそらく、
地球上のほとんどの生物。。。
つまりは、人類をも絶滅させるであろうことが
予想されたのだ。

昔、恐竜が絶滅したように・・・。

涼自身も最初は、とても信じられなかった。
何かの間違いであって欲しいと祈った。
けれど、何度予測し直しても、
最悪の結果をコンピューターははじき出す。

 

世界中から専門分野の学者たちが集められた。

なんとか、軌道を変えられないものか。

衝突前に隕石を爆破させる術は無いか。

あらゆる可能性を探りながら
地球単位のプロジェクトが始まった。               

それが、「ノアの箱舟計画」

学者たちは、毎日。。。
色々なアイデアを出し合った。
けれど、どれも非現実的なものばかりで
何の解決策も見いだせないまま
ただ、時間は過ぎていく。
その間にも、隕石は刻々と地球に近づき
衝突は、ほぼ避けられないものとなっていた。

残された道は、他の星への移住だけだ。

涼は、このプロジェクトのリーダーを務めていた。
「車椅子の天才」と呼ばれた
涼の頭脳をもってしても、
その移住計画は困難を極めた。

たちこめる。。。暗雲。。。

人類滅亡を全ての学者たちが
だんだんと覚悟し始めていった。

そんな時、一人の青年が、
分厚い計画書をもって涼のもとを訪れる。
18歳の。。。
まだ少し幼さが残る端正な顔立ちの青年。
その青年は、涼とみさきの息子。。。
たたらであった。

たたらが持ってきた計画書は
驚くほどよく出来ていた。
今までのどの学者のアイデアより
精巧で精密で、画期的だった。


そこには、紛れもなく
人類存続の希望の光が灯っていた。

○ ○ ○

たたらが普通の子供と違う事に
涼が気がついたのは、
彼が2歳になったばかりの春だ。

やっと言葉を話し始めるこの年頃に、
たたらは、日本語、英語、中国語、フランス語、
さらに韓国語と五カ国の言葉を
同時に話し始めたのだ。

どうして、こんなことになったのか。
涼は必死に考えた。
思い当たるのは、ただ一つ。。。

でも、まさか。。。

涼は、何回か自分の研究室に
たたらを連れて行った事がある。
そこの研究員にアメリカ人、中国人、
フランス人、韓国人が確かにいた。
たたらは、ほんの数回、
彼らの会話を聞いただろう。
覚えるとしたら、あの時しかない。

でも、そんなことがあるのだろうか。

涼にも、確かなことはわからない。
けれど、2歳のたたらは。。。
正確に五ヶ国語を話していた。

そんなこともあって
涼は、いち早く
たたらの知能の高さに気がついた。

並みの天才ではない。。。

そのことを確信した涼は
たたらの知能の発達に合わせて、
自分が教えられる全てを教え込んだ。

小学校を卒業する頃には、
たたらは、天才とよばれる涼さえ
とてもおよばない程の知識と、
発想力を身につけていた。


○ ○ ○

 

実家についたみさきは、
かつての自分の部屋の屋根裏から
古い日記を引きずり出し読み返す。
涼との恋愛時代の自分が
悩みながらそこにいた。
いろいろあったけれど、
結婚して本当によかった
とみさきは思っていた。

20年前。

みさきは、涼に片思いをしていた。
いつも、通勤電車の中でみかける涼のさわやかな笑顔は、
みさきの視線を離さなかった。

でも、声をかける勇気がない。
みさきは、どちらかといえば内気な性格である。

告白なんて、無理にきまっているわ・・・。
もう、あきらめようかしら。。。

と考えていたそんな時、
一通の携帯メールが届いた。

「あきらめないで。」

見知らぬアドレス。
だれかに心を読まれているみたいで、
気味が悪かった。

けれど、そのメールに不思議な勇気をもらった。
このまま終わりにしてはいけない。
みさきは、そんな風に思いはじめたのだ。
それは、どちらかといえば
使命感に似ているような気がした。          


みさきはついに、涼に告白する決意をした。
どこの誰ともわからない人からのメールで
こんな大切なことを決めるなんて
自分でもちょっと意外だった。
けれど、どうしても何かせずにはいられない。
あのメールには強いパワーがある。
それが、みさきをいつもよりずっと
強くさせているような気がした。

どうしてだろう。

いくら考えても
その答えは、みさきにはわからない。

一生分の勇気をふりしぼって
ある日、みさきは想いを伝えた。
普段のみさきにとっては信じられない行動だった。

でも、あのメールの言葉が
みさきの背中を押し続けてくれた。

「いつも、貴方を見てました。
 よかったら、友達になってもらえませんか。」

それが、みさきの勇気の限界である事は、
誰の目からみても明らかだった。
ガタガタと震えているその姿に、
涼は、思わず

抱きしめて支えてあげたい。。。

そんな衝動にかられたほどだ。

「いいですよ。では、まず。。。
 名前を教えてもらっていいですか。」

憧れ続けていた笑顔で涼にそう言われた時、
みさきは、失神しそうだった。
あのメールの送り主に心から感謝をした。


その日から、
みさきは、涼の恋人になった。
夢のような幸せな日々。

しかし、幸せは長くは続かなかった。

ある日突然。。。
その事故は起こってしまった。
飛び出してきた子供をさけるため、
大きくハンドルをきった涼の車が
崖から転落してしまったのだ。

すぐに病院に担ぎ込まれたが、
涼は、意識を失ったまま。

長い手術が終わり、
手術室から出てきた医師は言った。

「まだ、安心は出来ません。
 今夜辺りが峠でしょう。
 出来る限りの事はしました。
 後は、本人の回復力にかかっています。」

生死のさかいをさまよう涼。 
みさきはどうしていいかわからなかった。
耐え切れないほどの不安のなかで、
涼の回復を必死に祈った。
そんなみさきの所にまたメールが届く。

「心配ないよ。必ず助かる。」

そのメールは不安で潰されそうな
みさきの心を支えてくれた。

でもいったい、誰が?

結局。。。
みさきには、
メールの送り主はわからないままだった。


涼は、奇跡的に命をとりとめた。
けれど、事故で脊髄を損傷
涼は。。。歩けなくなった。

歩けなくなっても、涼は涼だ。

みさきは、涼が生きていてくれただけで
充分しあわせだと思った。

だが、涼の方は違う事を考えていた。
みさきの将来を考えれば、
車椅子の自分では負担がかかりすぎると思ったのだ。

「別れて欲しい。」

涼はみさきに、別れを切り出した。
みさきの両親もみさきの将来を考えたのだろう。
交際を反対した。
両親の涙を流しながらの説得。
その涙に、みさきは、一瞬迷った。

こんなに反対されるなら、
いっそあきらめてしまおうか。
涼だって、別れたいと言っているし
私には、そんなに経済力もない。
私では、彼の支えになれないのかもしれない。


その時、携帯の着信音が響いた。
あのメールだ。
ゆっくりとメールを開く。

「のりこえられるよ。あきらめないで。
 逃げちゃだめよ。」

メールには、そう書かれていた。

みさきは、はっとした。
あきらめるということは、
この状況から逃げ出すということだ。
今逃げたら、きっと一生後悔する。
私があきらめてどうするのだろう。
涼を支えられるのは、私しかいない。
そして、私を支えてくれるのも、
やはり涼しかいないのだ。

そんなこと、わかっていたはずなのに。。。

そう思いながら、みさきは涼の病室へと走った。
素直な気持ちを涼に伝えたかった。

ただ、そばにいたい。。。と。


○ ○ ○

それからも、みさきが落ち込んでいる日や
悩みを抱えて途方に暮れた日には
決まってメールが届いた。


涼からプロポーズをされた夜。。。

これ以上ないような、幸せをかみしめている時
また、あのメールが届く。

「おめでとう。貴方の幸せは約束されました。」

メールは、これが最後の一通だった。
それからあとは、一度も
このアドレスからのメールはこなかった。

みさきは何度か
このアドレスにメールを送ってみた。
けれど、送信されない。

本当に、いったい誰なのかしら
ぜひ、お礼を言いたいのに。。。

結局最後まで、
誰からのメールなのかわからずじまい。

正体を明かさず、ずっと応援してくれた。
そんなメールの送り主を
昔読んだ本に出てきた
「あしながおじさん」
のようだとみさきは思った。

いつしか、みさきはあのメールを
「あしながメール」と呼ぶようになっていた。
あのメールがなければ、
涼とは結婚できなかっただろう。

それはすなわち。。。
たたらにも会えなかったという事だ。

そして、今。。。
大きな隕石の襲来。

涼との結婚をあきらめていたならば。。。
たたらがこの世にいなければ。。。。。。

人類は滅亡していたかもしれない。
いや、きっと滅亡していただろう。
大げさではなく、あのメールは。。。
人類さえも救った「あしながメール」
ということになるのだ。

そんなことを思うと
みさきは、なおさら不思議な気持ちになった。

○ ○ ○

今、涼はこの移住計画のリーダーとして、
全部の宇宙船が無事に出発するのを見届けている。
任務が終わり次第、
みさきのところにくる事になっていた。

最期は二人で過ごそうと約束したから。

移送用宇宙船「ノアの箱舟」は、
たたらが設計したものだ。
この移住計画は、涼とたたらがいたからこそ
現実になったと言ってもいい。

涼とたたらが人類の救世主となったのだ。

若いたたらは、木星についてからの
人類の生き残り政策の実行リーダーにもなっていた。

涼は、木星移住を断った。
涼の頭脳を、多くの人が惜しんだ。
けれど、たたらがいる。
それで充分だと涼は言った。


宇宙船に乗れる人数には限りがある。
ならば。。。
将来のある若者が、
一人でも多く生き延びたほうがいい。

涼もみさきも意見は一致していた。
だから約束をしたのだ。
二人で終わっていくことを。

みさきは、充分幸せな人生を送った
と思っていた。

たぶん、世界一幸せだった。
涼とたたらのおかげで・・・。

○ ○ ○


木星への出発日前日
みさきはたたらに
一台の携帯電話をもらった。
どうやら、たたらが作ったものらしい。

あらかじめ、いくつか
登録されているアドレスがある。
みさきは、その中のひとつに
見覚えのあるものを見つけた。。

それは、20年前、
みさきが使っていたメルアドだったのだ。

「僕からの最後のプレゼントだよ。
 たぶん、これですべてがわかるよ。。。かあさん。」

みさきは、「あしながメール」の事を
たたらに話したことがある。
誰とも知れぬメールの発信者。
その人がいなければ、
たたらは生まれていなかった
かもしれないことも。

その話を聞いた時
たたらは、少し驚いた表情をしていた。
そしてこう言ったのだ。

「今の研究が成功したら、
 『あしながおじさん』の正体を
 教えてあげられるかもしれないよ。
 楽しみにしていてね。かあさん。」


○ ○ ○
 
みさきから
「あしながメール」
の話を聞いたたたらは、
とても驚いていた。

その頃、たたらは
タイムマシーンの研究をしていた。
物質を過去に送るところまでは、
まだまだ時間が必要だ。
しかし、電波ならもう送れるかもしれない。
そんなふうに思っていた。
ためしに過去へメールを送れる
携帯電話を製作中。。。。

そして、試作品の携帯電話第一号が
もうすぐ完成するのだ。

偶然だろうか。

○ ○ ○


たたらからの最後のプレゼント。。。
その携帯電話の使い方を教えてもらった時

まさかっ

とみさきは思った。
過去の自分にメールが送れる
なんて事があるだろうか。

いや、たたらは天才だ。

絶対無理だといわれていた移住用の宇宙船も、
たたらは現実のものにしてしまった。
もしかしたら現代から過去へメールが送れる
携帯電話なんてものを
本当に作ってしまったのかもしれない。

それを確かめるために
みさきは最期の地をここに選んだ。

昔の日記に「あしながメール」の発信元が
書いてあるはずだったから。

早速、みさきは調べてみた。

「まちがいないわ。。。」

あのメールは、この携帯電話からのものだ。
最初のメールは20年前の今日届いている。

みさきは迷わずメールを打ち始めた。
教えてあげなくちゃいけない。
その恋の結末は、世界一の幸せだと言う事。
そして、人類の存続をかけた恋愛だということ。

「あきらめないで。」・・・送信。

たたら、ありがとう。
やっぱり貴方は最高の息子だ。
貴方にまた出会うために、
「あしながメール」を私に送るよ。


○ ○ ○


最期のメールは、隕石が地球に衝突する5分前。

「おめでとう。貴方の幸せは約束されました。」

・・・・送信。

すべて終わった。
もう、何も思い残すことなんてない。

最後の5分間。
涼とみさきは二人で。。。
たたらが作るであろう木星での人類の未来を夢見ながら
静かな気持ちで過ごしていた。

後は、たたらに任せよう。
彼ならきっと上手くやってくれるだろう。
人類のためにたたらは最善を尽くしてくれる。

あのたたらなら・・・。

みさきは、幸せを最期の瞬間まで抱えていた。
                 
             おしまい

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2 コメント

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切ない (すずしろ)
2017-04-25 21:52:42
とても素敵で、
とても切ないです
すずしろさまへ (夕暮れの赤)
2017-04-26 21:18:31
コメント、ありがとうございます。
長いのに読んでくださって
本当にありがとう。励みになります。
地球最後の日。。。
人類滅亡の日。。。
やがては必ず来るのですけれど
それは、ずっと先のことだと思っていました。
でも、意外と。。。残念ながら。。。
近い未来にあるのではないかと
心配になるような異常気象や天変地異や
あるいは。。。争いが
多くなったように思えます。
そんな中で。。。
こんなお話を作ってみました。

本当は命を全部乗せられるような
大きなノアの箱舟が欲しいですよね。
それとももしかしたら、この地球自体が箱舟で
私たちはまだ、旅の途中なのかもしれません。
そうならば。。。
目的地に辿り着く前に沈没しなければいいですけど
それは、神のみぞ知る。。。
というところでしょうか。

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