空と海の間で。。。

独り言。。。
家族のこと。。。
日常のこと。。。

日々のこと。。。

指切りげんまん ~創作物語~

2016-10-18 23:59:07 | 日記

夕方。。。アニメの時間
私が、ケラケラ笑いながら
テレビを観ていると
横でばぁちゃんが、こんなことを言う

「ワシは水戸黄門が観たい。。。」

(今の時間は、そんなのやってないよ。)

「テレビ局に電話をかけて
 今すぐ、水戸黄門を放送するように
 お願いしてくれんかね。。。」


(そんな事出来ないわよ。。。)

私は深いため息をついた

ますます、ばぁちゃんの我儘は
エスカレートしてきたなぁ。。。

すべてはあの日。。。
今から一か月ほど前の
三月一日の朝
始まった。。。

三月一日の朝。。。
天気は晴れ

いつも早起きのばぁちゃんが
朝食の時間になっても
部屋から出てこない

ママに言われて
様子を見にいくと
ばぁちゃんはまだ、寝ていた

「ばぁちゃん、朝ごはんだよ。」

私はそう声をかけたが
返事はなかった

「ばぁちゃん、起きてよ。」

さらに声をかけたが
またもや、返事がない。。。

……。

なんだか、おかしい

恐る恐る。。。ばぁちゃんに近づいて
様子をうかがう

眠ってるみたいなのに
息をしていない。。。

布団の中で
ばぁちゃんは。。。死んでいたのだ

あまりに突然の出来事で
とても信じられなかった


「穏やかな顔してるよ。
 きっと、あまり苦しまなかっただろう
 よかったな。。。かあさん。。。」

パパは、動かないばぁちゃんに
そう語りかける

あんな寂しそうなパパを見たのは
生まれて初めてだった。。。

でも、あの時はまさか
もっともっと信じられない事が起こるなんて
思いもしなかった


それは。。。
ばぁちゃんのお葬式が終わった次の日
家族3人。。。
家で食事をしていた時に起こった

なんと。。。
ばぁちゃんが
まるで、生きてる時と同じように
私の前に現れたのだ

「ばぁちゃん、生きてたの?」

思わず私が、そう叫んだので
パパとママはびっくりして
私のほうを見た。。。

ばぁちゃんは、私の隣に立っている

「琴音。。。あなた、大丈夫?
 ばぁちゃんは亡くなったのよ。」
 そしてそこに。。。いるわ。
 骨だけになっちゃったけど。。。」

ママは、ばぁちゃんの骨壺のほうを
静かに見つめた

その目には、うっすら涙が浮かんでいる
 
 「琴音はばぁちゃん子だったからな
 ショックなのはわかるが。。。
 頼むから、『私には、今ここにばぁちゃんが見えるのよ。』
 なんてこと言わないでくれよ。。。」

。。。ん???

見えないの???

私は、私の隣に立っているばぁちゃんを
じっと見つめた

確かに。。。いる。。。よね

どうやら
ばぁちゃんの姿は
パパやママには見えないらしい

私にだけ。。。見えるって
これって、幻覚?
それとも。。。
これが噂の霊能力ってやつ???

私にしか見えていない

ばぁちゃんもそのことを
よくわかっているらしく
やたら私だけに
話しかけてくる

「ワシのご飯はどこじゃ?」

(ばぁちゃんの分は、あっち。。。)

私はばぁちゃんの祭壇におかれている
影膳に視線を向ける

ばぁちゃんは頷き
祭壇のほうへ歩いていった

声に出さなくても
心で思うだけで
ばぁちゃんに意思は伝わるらしい

ほっ。。。助かった

そうでなければ。。。
パパやママにどう思われることか。。。

パパもママも幽霊など信じないタイプだから
きっと。。。私は
病院へ連れて行かれてしまうだろう


そんなことを思いながら
ばぁちゃんの姿を目で追っていた

すると。。。
影膳の前に立ったばぁちゃんが
こんなことを呟く

「ワシは、肉が食べたい。。。」

(肉???
 ばぁちゃんのご飯はお供え物だよ。
 殺生禁止の精進料理だから無理だって。。。
 ばぁちゃん。。。お願い
 我儘言わないでよ。。。

 だってもうばぁちゃんは。。。
 死んでるんだよ!!!)

ばぁちゃんは不満そうな顔をして
それでも、ご飯を食べ始めた

確かに食べているのに
ばぁちゃんの目の前にある
ご飯は減らない。。。

ちょっと、不思議。。。だった

次の日の夕食の時も
こんなことがあった

「今日、テレビの料理番組で覚えたのよ。」

。。。とママ

出てきた料理は、マグロのカルパッチョ
すごく美味しそうに出来ている

「わぁ、とっても美味しそう。」

私の言葉にママは嬉しそうだった

でも、ばぁちゃんは気に入らないらしい

「刺身はわさびと醤油で食べるのが
 ワシは好きなんじゃが。」

(だから、ばぁちゃんは死んでるんだってば。
 死んだ人の口に合わせて夕飯は作らないでしょ!!!)

私は心の中で
ばぁちゃんにそう言った
すると。。。
ばぁちゃんがこんなことを言う

「ワシは死んどりゃせん。。。
 まだ、約束を果たせんでいる。
 だから今は。。。
 殺されても死なんわい。」

(ばあちゃんがどう思ってようと
 本当に死んでるんだって。
 孫の言うことが信じられないの?

 それに。。。果たしてない約束って???
 いったい誰とどんな約束をしたの???)

ばぁちゃんは答えない。。。

答えの代わりに歌が聴こえた

♪指切りげんまん
 嘘ついたら針千本飲まぁす♪

って。。。シカトしたね。。。はぁー。

それでも。。。
もしかしたら答えてくれるかも
そう思って、しばらく答えを待った
ようやく、ばぁちゃんの口から出た言葉は

「ワシの眼鏡がないのじゃが。。。」

えっ。。。もしかして
完全にはぐらかされた?

まっ、いいか

はいはい。。。
今度は眼鏡ね。。。

(えーっと眼鏡は。。。
 ばぁちゃんを荼毘にふすとき
 お棺に一緒に入れちゃったよ。)

 「。。。ということは、燃やされちゃったってことかい?
 勝手にそんなことされちゃ。。。困るわい。」

ばぁちゃん。。。かなり怒っている
なんだか昨日より
もっと我儘になっている気がした

まるで、駄々ばかりこねる子供みたい。。。

生きてる頃は
控えめで。。。
文句なんか言ったことない人だった。。。

バカは死ななきゃ治らない
というのは聞いたことがあるけど

我儘は。。。死ぬと
よりひどくなるなんて話
今まで私は。。。
聞いたことなかった

 

そんな毎日がしばらく続いた
ばぁちゃんの我儘にも
だいぶ慣れてきたころ

庭にある桜の木が
満開になった

「ばあちゃん
 見て!!!
 桜が満開だよ。。。」

なんだか嬉しくて
つい声を出して叫んでしまった


パパとママが留守でよかったぁ
病院行きは。。。免れた
今度から、気をつけなきゃね。。。

それから。。。
ばぁちゃんと並んで
お花見をする

そういえば、去年もここで
お花見したよね。。。

桜が咲くのを
いつも一番楽しみにしていたばぁちゃん

ばぁちゃんにとって
この桜は特別なものらしい
理由は知らないけど
ずっとばぁちゃんを見ていればわかる
ばぁちゃんが、この桜の木に
特別な想いを持っているってこと
私は、ばぁちゃんがこの桜を愛でる時の
優しく。。。そしてなぜか
ちょっと切なそうな表情が好きだった

だから、毎年。。。
こうして、ばぁちゃんと花見をするのは
私が小さい頃からの年中行事のひとつ

あっ。。。でも。。。
去年までのばぁちゃんは
ちゃんと生きてたけどね。。。

ばぁちゃんと一年ぶりの花見を
楽しんでいると
庭の桜の木の向こうから
ふっと一人の男が現れた

なぜか。。。軍服を着ている

イマドキ
この姿で現れるってことは

えっ、この人も幽霊???

また、幽霊が増えるの???
勘弁してよ
パパやママに悟られないように
相手をするのは
ばぁちゃんだけでも大変なのに。。。

私はとっさにそう思った

「遅くなってごめんな。」

その軍人さんの幽霊は
そう言って笑った

遅くなった?
どういうことだろう

(ねぇ。。。ばぁちゃん
 心当たりある???)

私は隣にいるばぁちゃんを見た

ばぁちゃんは。。。
その軍人さんの幽霊を
じっと見つめていた

そして、叫んだ

「とうちゃん!!!
 やっと来てくれたん?
 ずっと待っとったよ
 来てくれてうれしいわぁ。」

とうちゃん???って
あの軍人さんがばぁちゃんのおとうさんなの?

ばぁちゃんは軍人さんの元へ駆け寄り
その手をしっかり繋ぐ

すると。。。その瞬間
ばぁちゃんが、小さな女の子になった

不思議な光景だった

嬉しそうに笑う。。。
小さな女の子がそこにいる

どういうこと?

「待たせたね。。。
 約束を守りに来たよ
 一緒にお花見しようって
 指切りげんまんしたもんな
 随分と時間がかかったけど
 やっと一緒に桜が見られる。」

満開の桜の木の下で

軍人さんと小さな女の子が
手を繋いで
桜を見上げている

まるで。。。
戦争映画のワンシーンのようだ

でも。。。あれは。。。
小さくなってるけど
私のばぁちゃん。。。だよね

。。。のはず。。。

しばらく。。。
静かな時が流れた

やがて、女の子は
軍人さんの手を離し
私の元に近づいてきて
こんなことを言った

「お別れの時が来たみたい。
 今まで、本当にありがとう。。。
 琴ちゃん。。。
 幸せになりなさいね。」

それだけ言うと
軍人さんのところへ戻り
再び、しっかりと手を繋いだ

あぁ。。。やっぱり。。。
あの子がばぁちゃんなんだね。。。

呆然としている私の前から

小さな女の子になったばぁちゃんと
軍人さんの姿は
ゆっくり、ゆっくり。。。消えて行った

何が起こったのか
よくわからなかった

でも、わかっていることが
ひとつだけある。。。


ばぁちゃんとは
これでほんとの
さよならなんだね。。。

その日。。。
仕事から帰ってきたパパに聞いた

「ばぁちゃんのお父さんて
 軍人さんだったの?」

「えっ?。。。じいさんのことか?
 パパも実際には会ったことはない。
 だから、遺影の写真でしか知らないが
 ばぁちゃんが小さい頃
 戦争に行って。。。
 戦死をしてしまったらしい

 そういえば。。。昔
 パパのおばさん。。。
 つまり、ばぁちゃんのお姉さんに
 こんな話を聞いたことがある。
 戦死の知らせが届いても
 ばぁちゃんはじいさんが死んだことを
 しばらく信じなかったって。
 
 庭の桜が咲いたら
 一緒に花見をしようと
 指切りげんまんしたからって。
 
 とうちゃんが、自分との約束を破るなんてこと
 絶対ないからって。
 
 でも、守れない約束もあるんだよな。
 娘とそんな約束をしていたんじゃ
 じいさんも最期まで心残りだったろうけど
 死んでしまったら、どうしようもない。。。」

私は。。。
仏壇においてある
私にとっては、曾じぃちゃんの遺影を
改めてまじまじと見た。。。
思えば、今まで。。。ちゃんと遺影を見る
なんてことはしたことがなかったなぁ

その写真は
出征直前に撮ったのだろうか
軍服姿の写真だった

そして、その人は紛れもなく。。。
さっき、桜の木の向こうから現れた
あの軍人さんだったのだ

私は、ようやく。。。
すべてを理解した。。。

ばぁちゃんは、待っていたんだ
自分の父親が約束を守りに
帰ってくるのを。。。

戦死の知らせを聞いた後も
きっと心のどこかで
待ち続けていたんだね

そして。。。今日
約束は果たされた

そうなんだよね。。。

ばぁちゃんが曾じいちゃんと
同じ世界の人になったから
果たせた約束
。。。なのかもしれない

いろんなことが
わかった気がした。。。

「あのね。。。
 時間はかかったけど
 曾じぃちゃんは、ばぁちゃんとの
 約束を守ったんだよ。
 たぶん。。。」

私はつい、そんなことを口走ってしまった

「琴音?。。。おまえ、何言ってるんだ?」

パパが、不思議そうな顔をする

「うぅん。。。何でもない。」

慌てて否定。。。
危ない危ない。。。
病院行きになるところだった

話してもとても
信じてはもらえないだろう

パパは、幽霊を信じないタイプ。。。だから

でも。。。
私はちゃんと知っている
私はちゃんと見ていた

それだけで、いい気がした

ばぁちゃん。。。
約束の桜。。。
見られてよかったね

死んだあと
あの控えめなばぁちゃんが
我儘を言うようになったのは
もしかしたら。。。ばぁちゃんの心が
だんだん、子供に
戻っていったからなのかもしれない

桜の満開の日に
もう一度。。。
父親と出会うために

これからは。。。
子供に返って
曾じいちゃんに思いきり甘えたらいい

そんなふうに思った

どんなに我儘言っても。。。
きっと笑って許してくれるよ
こんなに長い間
待ち続けていた大切な娘の
小さな小さな我儘。。。なら。。。


庭の桜はたわわに咲き。。。
いよいよ、春本番

ばぁちゃんのいない春は
ちょっと寂しいけど

でも、私は大丈夫

だって。。。ばぁちゃん
あんなにうれしそうに笑っていたもん

お父さんとしっかり手を繋いでさ

寂しいのくらい我慢しなきゃね
泣いたりしないよ

それでも私は
ちょっと泣きそうになって
涙がこぼれないように
庭の桜の木をそっと見上げた

そしていつもみたいに
心の中でつぶやいた
もう、ばぁちゃんに伝わるかどうかは
わからないけど。。。

(ばぁちゃん。。。
 私、約束するよ
 いつか、必ず幸せになる。
 指切りげんまん。。。ね。)

桜の向こうから
ばぁちゃんが歌っている声が
聴こえたような気がした

♪指切りげんまん
 嘘ついたら針千本飲ぉーます♪

(指切った♪)
                 了

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6 コメント

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こんばんは。 (なずな)
2016-10-19 00:59:04
ここ数日のお話の中で、これが1番好きかも!
文字だけを追っているのに、その場面場面が浮かびます。
とてもほっこりとするお話でした。
また、お願いしますね!
ツナグ (すずしろ)
2016-10-19 23:23:59
亡くなった人と話をしてみたいって、近しい人を送った人は一度は思うんじゃないかな?
じいやんにも、父にも会いたいです。

あ、なずなさんの後にすずしろって、春の七草やん(笑)。
なずなさまへ (夕暮れの赤)
2016-10-20 22:48:32
コメント、ありがとうございます。
気に入っていただけたのなら
嬉しいです!!!
バッドエンドのお話も結構好きですが
こういう結末は、書いていてもスッキリ♪(笑)

読んでくださって、ありがとうございます。
また、よろしくお願いいたします。
すずしろさまへ (夕暮れの赤)
2016-10-20 22:52:36
コメント、ありがとうございます。
私は、すごく。。。おじぃちゃん子だったので
もう一度。。。話せたらなぁ。。。
時々、夢の中に訪ねて来てくれるので
私がいつか、あちらに行くまでは
それで我慢しています。 (笑)

ほんとだ!!!
春の七草
なんとも素敵な偶然ですね。。。

せり、なずな、ゴギョウ はこべら ほとけのざ
すずな。。。すずしろ。。。ウンウン。。。これぞ七草♪

いつもコメント、ありがとうございます。
すっごく励みになります。
<(_ _)>
こんばんは。 (なずな)
2016-10-20 23:35:51
あの・・・
私、フルネーム(もちろん仮名ですが・・・)が、
せり・なずな、なんです。(笑)
なずなさまへ (夕暮れの赤)
2016-10-22 23:38:32
あっ、そうなんですね。
せり・なずな。。。
素敵なお名前ですね。
完璧に春の七草

なおさら素敵です!!!ふふっ

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