先日工房へ私の紬でお越しくださいました方の着姿をご紹介いたします。
お召し頂いた単衣紬着物と縞帯は私の作です。
帯留は小川郁子さんのものをしてきてくださいました。
薄ピンクベージュの帯揚げも私の染めです。(*^^*)
上の写真は室内で撮影したもので緑味が強くでていますがもう少しグレーよりです。
こちらの着物は書籍『森田空美のきもの美巡礼』、拙著作品集『樹の滴』でも取り上げられています。
着物は始めから単衣の時期の紬としてハリ感を残した固めの糸で織ったものです。
赤城の節糸を経てにも緯にも使っています。
帯は着尺と同じ真綿系のもので、私の母のために織って仕立ててあった未使用のものをとても気に入ってくださりお分けしたものです。
他にも取合せられる帯はいろいろお持ちですが、この時期に特に爽やかな取合せでお越しいただきました。
もちろん帯揚げ、帯締を替えれば秋単衣にも。
私よりほんの少しお姉さま、、と思われる60代の方です。
ご高齢のお母様の介護を妹さんとで交替でされ、またお孫さんのお世話などもあり、自分の時間が取れず好きな習い事もついに遠ざかっているとのことでしたが、「今日は時間がようやく取れたので久しぶりに着物で来ました」とのことでした。
お忙しい中でもお召いただき本当に嬉しく、有難く思います。
近況の雑談をしながらも着物の取合せの話、気軽に着る時の半幅帯の結び方などもやり、しばし寛いだ楽しい時間を過ごさせていただきました。
夫の海外赴任、子育て、親の介護、孫達の世話など自分の思い通りの時間はなかなか持てなかったかもしれませ。
でも今こうして自分の目で選んだ着物を取合せを考え大切に着て、一人静かな自分の時間を持つことが出来るのは今までの日々の様々な積み重ねがあってのことでしょう。
苦楽をたくさん胸にしまって静かに着物を愛でる眼差し面持ちに大人の女の充実した貫禄が滲み出ているようでもありました。
善きものに触れ、自分の精神を高め、こころを落ち着かせ、心地よい時を持つことができるよう私も努力したいと思いました。
誰にでも似合う、自然で上質である(簡単なことではありませんが・・)着物を目指して創り続けてきましたが、進むべきはこの道でいいのだと、こうして着て下さる方々にお会いすると改めて確信を持つことが出来ます。
人生とともにある一枚の着物にお選びいただき作り手として光栄に思います。
着姿ページでもご紹介しています。