有志舎の日々

社長の永滝稔が、 日々の仕事や出版・学問などに関して思ったことを好き勝手に 書いていきます。

明治維新と大陸浪人

2017-07-04 12:53:52 | 学問

梅森直之さんが『初期社会主義の地形学(トポグラフィー)』(有志舎、2016年)の「第2章 資本主義批判としてのアジア主義」で行っている考察より。
「グラムシはイタリアにおける国家形成のプロセスを・・・「資本の受動的革命」として分析した。受動的革命とは、生産関係と生産力の発展が完全なる資本主義シズテムを産み出すのに不十分な状況で、新しい権力者が古い支配階級と妥協することにより新社会の諸要求が、部分的に実現されていくプロセスを意味している」。
「明治維新は、アジアという非西洋的な空間で発生することにより、受動的革命に共通する後発性や後進性といた要素に加え、周辺諸地域に対する相対的な進歩性と近代性を獲得した。・・・その結果、資本主義文明の伝道に献身する進歩主義者と、資本主義文明への対抗を目論む保守主義者が、ともにアジアへ流出するといった事態が生ずるに至ったのである。竹内(好)が洞察した進歩と抵抗の一体性というアジア主義の特徴は、非西洋圏における最初の受動的革命という明治維新の歴史的特質に由来するものであった」。
そして、今も日本は受動的革命の延長線上にあるわけですよね。となると、もう一回、きちんと「明治維新」「日本における近代」というものを根本から分析し直さないと。

また、この章のなかで、デビット・アバナディの帝国主義研究を紹介して、欧米帝国主義の特徴を、「独自な理由と独自の拡張能力を有する政府と企業と宣教師団という三つのエージェントの活動と相互作用が、長きにわたる帝国主義の歴史において類を見ないような強靱でかつ柔軟な権力を生み出したのである」と言っています。
そして、「(宣教師団のような)第三のエージェントを日本の帝国主義は持ち得なかったのか」という問いを立て、その回答として「大陸浪人と彼らが奉じた「アジア主義」というイデオロギー」がそれにあたるのではないかと論じています。
だとすれば、日本近現代史研究において、「大陸浪人」の研究をもっと本格的にやっていかないといけないのではないかと思うのです。この分野の研究については、専門研究者の人には軽視されている印象が強い(もちろん、少しはやっている人がいるが)。
「大陸浪人」研究、面白いと思うんですけどねえ。もっとやってくれないかなあ。

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