有志舎の日々

社長の永滝稔が、 日々の仕事や出版・学問などに関して思ったことを好き勝手に 書いていきます。

岩波ブックセンター信山社の破産に思うこと

2016-12-01 13:41:20 | 出版
岩波ブックセンター信山社が破産し、店は閉店となったことはもう広く取り上げられています。
現状までについては、月曜社・ウラゲツブログでの小林浩さんの記事がきちんとまとめてくれているので、興味のある方読まれることをおすすめします。

ただ、これは単なる一書店の閉店ではないというのが私も含め人文書出版に関わる人間の思いでしょう。
おそらく、日本で一番人文書が売れるであろう神保町という街の中心にあって、しかもあの品揃えをしている書店が継続できないということの重大性。
その重大性というのは、現代日本における(世界的にそうなのかもしれないが)学問や「知」というものに対する冷ややかな視線(「自分には関係ない世界」「興味もない」という感性)の伸長と、「学問なんてものは限られた旧体制エリートの手慰みと考えることがカッコイイ」という訳知り顔の人々がいかに多くなったかという事。
学問することが賞賛され、必要とされる社会でないと、結局、小手先の「お勉強」やメソッドだけがうまくでき、人々を見下しながらも、本質をうがつ「学問」を敵視するような輩にこの国をいいようにされてしまうと私は思う(もう殆どされているのだろうが)。

だから、そういう輩の本質を見極め、それらと闘うための武装として学問は絶対に必要なのだ。
約35年前に大学へ入学したとき、のちに私の指導教官となる故・沼田哲先生が言った「大学は自分で勉強するところ、高校までみたいに親切に「勉強しろ」なんて言わないよ」という言葉を思い出します。
大学だけでなく、社会に生きる以上、自分で勉強・学問しないかぎり、ただ単に「統治される」存在にしかなれないのだと思う。
だから、自分で勉強するために学術書という武器は必要なのだ。だから著者の方々には、使い方が難解で誰にも使えないような武器ではなく、今まで闘った経験が浅い人にも使える、新しく強力な武器をつくりだして欲しい。
そして、書店という「知」の武器商人は出来るだけたくさんいた方が抵抗が強まることは間違いない。

別に出版社や書店の業界的利益のためだけに学問はあるのではないと思うのです。
はっきりいって、経済利益だけを追求するんだったら、こんな儲からない仕事を続けているなんて極めて経済的不合理なわけですから。

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