ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

青春時代の真ん中は

2017-08-15 12:07:00 | 日記
青春時代は 夢なんて
あとから ほのぼの 思うもの

青春時代ーー。私にそういう時代があったのかどうか。それは分からない
が、私の高校生時代、大学生時代には、巷に歌があふれていたような気が
する。本屋に入っても、喫茶店に入っても、有線放送の歌謡曲が流れてい
た。

当時はLPレコードやカセットテープが主流の時代で、私が初めて買ったレ
コードはジョン・コルトレーンの「至上の愛(A Love Supreme)」だった。
私はそれを、ヘッドフォンを付けて、池袋近くの狭いアパートの一室で聴
いた。

レコードにせよ、カセットにせよ、それらを買う金がなかった私は、ラジ
オの音楽番組をよく聴いた。井上陽水や吉田拓郎の曲が流れていた。ポッ
プスやフォークを流す番組ではなかったが、深夜FM放送の「ジェット・
ストリーム」も私は好きだった。

「ジェット・ストリーム」で流された曲はどれも心に沁みる曲で、カセッ
トに録音したいと思ったほどだが、いかんせん私のカセット・デッキは受
信状態が悪く、雑音が多くて、(高価な)カセットテープを使ってまで録
音する気にはなれなかった。

還暦をはるかに過ぎたこの歳になって、当時を思い返すと、(悪い)夢の
中にいたようで、胸の詰まる思いがする。当時の私は、いろんな意味で五
里霧中のどん底をさまよっていた。

青春時代の 真ん中は
道に迷って いるばかり

今は違う。タブレットに電源を入れ、ネットにつなげば、古今東西のいろ
んな曲を動画つきで聴く(観る)ことができる。ラジオとは違って、雑音
が混じることはない。

私の10代〜20代はグループサウンズやフォーク・ソング、アイドル・
ソングが全盛の時代だった。その時代の曲をYouTubeで聴くと、どれもが
懐かしく、いつまでも飽きない。夕食後、ふと思い立って、焼酎をちびり
ちびりやりながら、YouTubeやSpotifyを聴き浸ることがある。昭和の名
曲メドレーの一つに、山口百恵の「いい日旅立ち」が流れてきた。作詞・
作曲を谷村新司がした、とてもいい曲だ。

せめて今日から一人きり 旅に出る
ああ 日本のどこかに
私を待ってる 人がいる
いい日 旅立ち 夕焼けをさがしに

この曲を聴いていると、一人の女性の姿が浮かんできた。北海道で行方知
れずになった中国人の若い女性である。テレビのワイドショーで取りあげ
られているのを1,2度見たことはあるが、興味を持って見たことはな
い。発見されたという話は聞かないから、彼女はまだ北海道のどこかをさ
まよっているに違いない。

さまよっている・・・。そう、青春時代の真ん中を。

18歳の夏。終戦記念日の8月15日前後、私も北海道をヒッチハイクし
ながら、青春時代の真ん中をさまよっていた。あれから50年が経ち、今
は老いぼれの私がいる。

青春時代の真ん中を、当てもなくさまよう異邦人の彼女。その彼女の胸に
は、「いい日旅立ち」が流れているのではないか。そう思いながら、私は
焼酎のグラスをおいて、タブレットの電源をOFFにした。
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