ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

トランプ エゴイストの愚かな選択

2016-05-11 08:16:16 | 日記
アメリカの大統領選挙も、候補者選出のピークを過ぎた趣がある。共
和党の予備選は、想定外のトランプ氏が勝利する勢いとあって、様々
な憶測を呼んでいる。なかでも、暴言・妄言に近い氏の歯に衣着せぬ
物言いは、各方面に少なからぬ波紋を投げかけ、物議をかもしてきた。
この大統領候補者の発言には、日本にとって無視できないものが含ま
れている。

「日本や韓国は、米軍の駐留費用をきちんと支払うべきだ。
負担しないのなら、米軍を撤退させる」

日本に与えたインパクトは、この発言が最大のものだろう。

そこで考えてみたいのは、もしトランプ氏がアメリカ大統領に選出さ
れたら、そしてこの発言を実行に移すことになったらどうなるのか、
という問題である。考えるにあたっては、軍事的・政治的・経済的・
地政学的観点からの考察が欠かせず、様々な角度から国際関係の諸様
態に照明を当てる必要がありそうだが、私はこの分野に詳しくないの
で、得意とする天邪鬼の観点から、トランプ大統領の下でのアメリカ
の、そして日本の前途について考えてみたい。

トランプ氏の発言に特徴的なのは、エコノミストに特有の、コスト‐
ベネフィット分析の思考法である。「アメリカ軍の日本駐留」という
プロジェクトについて、それに費やされる費用負担(コスト)と、そ
こから得られる利益(ベネフィット)を計算する。トランプ氏は、こ
のベネフィットのうち、「アメリカが享受する取り分」はゼロに等し
く、「日本が享受する取り分」は極めて大きいと見積もり、そのため
のコストは日本側が支払うべきだと考えるのである。

だが、この判断はどういう結果をもたらすのか――。

この判断の根底にあるのは、「自分の利益を最大化すればよい」、
「相手がどうなっても構わない」という思考法、エゴイズムの思考法
である。

エゴイズムはどういう結果をもたらすのか――。

人と人との関係のケースだったら、自分のことしか考えないエゴイス
ト、自己中の人間は、だれからも相手にされず、孤立して、困ったと
きだれにも助けてもらえないだろう。
いつも自己利益の最大化を優先する「困ったちゃん」は、結局、いち
ばんの窮地で自分の利益を手放さざるを得ないのである。

私はこれを「利己主義者の弁証法」と呼んでいるが、国家と国家との
関係においても、この弁証法は成立する。いつも自国の利益を優先し、
他国との関係や信義など度外視して憚らないエゴイズム国家を相手に、
生き残りのための同盟関係を結ぼうとは、どんな国も考えないだろう。
「国が考える/考えない」というのは変な言い方だが、賢明な国家指
導者なら、そう考える/考えないということである。

どんな国とも同盟関係が結べず、孤立した国家は、(国際社会から非
難のつぶてを浴びせられている)あの北朝鮮と同じ末路を辿るしかな
いのではないか。経済状態一つとってみても、現在のアメリカより事
態が悪化することは間違いない。

そうなることを見通して、アメリカでも、自国がこういう愚かな道を
選択しないようにと、警鐘を鳴らす賢者がやがて現れるのではないだ
ろうか。あるいは、そうなることを直感的に察知し、トランプ候補者
の危うさを本能的に嗅ぎ分けて、彼の暴言を食い止めようとする勢力
が自然発生的に生まれるかも知れない。そんな予感がする。その勢力
がテロの実力行使に走るのかどうか、トランプ氏がその餌食になるの
かどうか、――私にはそこまでは分からない。
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