ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

「逃げ恥」のそれから

2016-12-27 15:03:21 | 日記
朝日新聞のコラム「天声人語」で、テレビドラマ「逃げ恥」がテーマ
に取りあげられていた。その内容は、「リテラ」のネット評論を読ん
だあとでは、どうしても見劣りの感を禁じ得ない。

数日前にそう書いた本ブログを、朝日新聞の編集委員が読んだわけで
はないだろう。朝日新聞はこれとは別に、12月26日付で、「逃げ恥」
をテーマにした特集記事を組んでいる。「逃げ恥」は、それだけ世間の
耳目を集めているということなのだろう。

朝日のこの特集記事を読んで面白いと思ったのは、原作漫画の著者で
ある海野つなみが、インタビューで次のように答えていることであ
る。

「見た人はどんな反応を?

2通りありました。一つは、「結婚して家事でお金をもらおうなんて
ガメツイ」というもの。男性や年配の女性が多かったのですが、「自
分たちは『家事=無償』でやってきて、何の問題もなかったのに、な
んでお金の問題を持ち込むの?」という反応もありました。

 もう一つは「今までお金をもらっていた仕事が、結婚してタダにな
るのはおかしいよね」という反応です。

 ――どう感じましたか?

 おもしろいな、と。」

思い返していただきたいのだが、前回のブログで取りあげた「リテラ」
の評論は、後者の反応に焦点を当てたものであった。私が面白いと思っ
たのは、この原作者が、作品を描き進めている段階では、後者のような
見方、つまり「今までお金をもらっていた仕事が、結婚してタダになる
のはおかしい」という見方を、特に意識していたわけではなかった、と
いうことである。

「逃げ恥」の原作者は、ネットの評論で展開されたような大げさな社
会的問題意識など、特に自覚していたわけではないのである。

このこと自体はべつに珍しい話ではない。大学入試の国語問題文など
でも、作問のために使われた文章の書き手自身は、自分が書いた文章
であるにもかかわらず、その設問に正しく答えられないことが多い、
ということも、よく聞く話である。

朝日のこのインタビュー記事を読んで、私が興味深く感じたのは、
(「逃げ恥」をめぐる)「リテラ」のその後のネット記事を読んでいた
からかも知れない。
12月26日配信の記事《“逃げ恥”原作者・海野つなみと本谷有希子が
『あさイチ』で安倍政権の「1億総活躍」を批判!「お国の役に立て
みたいな感じ」》は、NHKの番組「あさイチ」を取りあげ、そこで繰り
広げられた安倍政権の「1億総活躍」政策に対する批判を、延々と繰り返
している。

「逃げ恥」原作者の発言は、「(「一億総活躍」のスローガンは)お
国の役に立て、みたいな感じがします」の一言だけ。
この一言に対して、「“活躍”は国から強制されるものではない。しかし、
現在の安倍政権はこの言葉によって、「お国のため」に働けと強制して
いるように思える。まさに正鵠を射る発言と言っていいだろう」とのコ
メントが付けられている。

あとは、「あさイチ」のMCの発言とも、「リテラ」執筆者の意見とも
つかぬ「一億総活躍」批判が、手を替え品を替え、際限なくリピート
されるだけだ。

NHKのこの番組を見たら、あるいは、「リテラ」のこの記事を読んだ
ら、だれもが「逃げ恥」の原作者は、安倍政権批判の急先鋒だと思う
だろう。こうして「逃げ恥」の原作者≒民進党の急進派論客、である
かのような神話が作られる。世情を煽りたいだけのショー番組によっ
て、社会派の虚像を仕立て上げられた「逃げ恥」の原作者は、どんな
思いをいだいているのだろうか。
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