ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

日米地位協定 ノーと言わない理由

2016-07-07 15:27:10 | 日記
沖縄の元米兵による女性強姦・殺害事件をうけて、日米両政府
は日米地位協定の運用見直しを行い、この協定が適用される米
軍属の範囲を縮小することで合意した。このことを踏まえて、
新聞各紙が社説で、それぞれの立場を表明している。

問題は単純であり、今回の日米合意がその解決になっているか
どうかもはっきりしている。これは小学生でも分かる理屈だ。

日米地位協定が米軍関係者に与える特権的な地位が、彼らの起
こす様々な凶悪犯罪の温床になっている。ならば、地位協定が
適用される範囲を狭めればよい、ということで、今回の合意が
できたのだが、沖縄にいる米軍関係者の大半を占める(2万人
あまりの、3万人に近い)軍人はそのままである。かの残虐な
事件の犯人が軍属だったことから、日米両政府は、協定適用の
対象になる軍属の範囲を狭めたというが、これでは子ども騙し
の屁理屈にもなっていない。同様の犯罪の発生を絶つために
は、その根っこにある地位協定と、それが米軍関係者に与える
特権的な地位を根こそぎ、抜本的に見直すことが必要なのだ。

こんなことが分からない大新聞の論説委員でもあるまい。にも
かかわらず、彼らがあえて「ノーと言わない」のは、そこに
「ノーと言えない」大人の事情があるからなのだろう。今回の
本ブログでは、「ノーと言わない」社説を取りあげ、それがど
ういう理由(屁理屈)から「ノーと言わない」のかを探ってみ
たい。

最もあからさまなのは、読売の社説である。《米軍属範囲縮小
 沖縄に配慮した現実的な合意》という見出しに示されるよう
に、読売は、「米軍属範囲縮小」を行った今回の日米合意は
「沖縄に配慮した現実的な合意」であると主張し、そう主張す
る理由をなんら提示していない。

あきれる程の潔さだが、ドサクサにまぎれて、さらに、「(地
位協定の見直しよりも)重要なのは、沖縄の基地負担を軽減す
ることであり、そのためには、普天間基地の返還と、辺野古へ
の基地の移転が求められる」と主張するに至っては、安倍首相
も顔負けのラディカルさである。

読売と並んで「ノーと言わない」派の双璧をなす産経だが、そ
の社説《地位協定の明確化 米軍は一層の綱紀粛正を》は、読
売ほど「上から目線」の論調ではない。もっと腰の低い日常的
な、あるいは人情的な目線から、「ノーと言わない」理由を、
次のように述べている。

「米軍関係者による再三の凶悪事件をうけて、沖縄の人々が怒り
心頭なのは当然のことで、よく分かります。でも、米軍の関係者
がすべて凶悪な悪人だなどと思わないでください。米軍の関係者
にも、心優しい善い人、平和を愛する人は大勢いるのです。何よ
りも彼らは、日本の平和と安全のために働いてくれている、大切
な人たちなのです。」

軍事的な抑止力を維持しながら、基地負担の低減をはかる現実
的な方策を、辺野古への基地の移転に求める点でも、また、お
馴染みのこの主張を社説の結論におく点でも、産経は読売と変
わらない。問題は、どちらの論調が沖縄の人々の心に響くか、
沖縄の人々に対して説得力を持つかだが、それは私には分から
ない。(どっちもどっちかな)
コメント
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