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過度な忖度をやめよう!必読・「池上彰・森達也のマスコミの大問題」

2017-12-14 15:53:15 | 日記

  森達也さんのことを知りたくてこの本を手に取って読んだ私。池上さんについては「週刊こどもニュース」のお父さんというイメージと、最近すごくテレビにでているとは思っていたものの、深くはその話に耳を傾けたことがなかった。

  今日、この「池上彰・森達也のマスコミの大問題」を読み終えて、私はとても明確に今の社会をイメージすることができるようになったと感じた。それを、是非みなさんにも感じてほしい。今、何が起きていて、日本が平和な国であり続けるためには何が大事で、何をしなくてはならないかという、とても緊急の重要な話がしっかり詰まった本だった。

  取りあえず、自分が忘れないように、そしてみなさんにどんな本だか分かって頂くために、本の中の大事な言葉を拾っておくことにする。      注:(  )のカッコ内は、私の私見です。

1.メディアは、複数のメディアを読み比べる・・・1方向からしか見ないでいると、真実を見失う。角度を変えれば、違う世界が現れるのに、違う視点をしらないと、1面的思い込みで真実に気づけない。

 (本に書いてある例ではないが、トランプの就任式の映像。沢山の観衆がいるように編集されている或る映像では沢山の聴衆が集まっているように見えるが、撮影の視点を変えるとガラ空きの広場が見られる。実際は、オバマの約180万人に対し、トランプは約30万の聴衆)

2.空気を読むメディア・・・世界には救い求める声をあげているが、そこには人々の目がいかない。メディアの目が向かないから。どうしてメディアが目を向けないか。「イスラム国」による2人の日本人人質事件は報道されるが、イスラム国での千何百人もの虐殺、アフリカの何千人の餓死は遠い国の話として、国内の自殺、交通事故は話題性が特になく取り上げられない。

  (メディアが扱わない真実がたくさん社会に横たわっていることを忘れないように)

3.メディアの萎縮・忖度・・・政府がメディアに圧力をかけている。「放送法」を持ち出してというが、「放送法」には3条、4条に「何人からも干渉され、または規律されることがない」とも書かれている。言われて萎縮する方が情けない。政府がマスコミに圧力をかけるのは当たり前。権力監視がジャーナリズムの最大の基本要素なのを知らないのは、菓子メーカーの人が菓子は何のためにあるか知らないのに等しい。

4.新聞の底にあるのも市場原理・・・産経や読売が政権与党を支持するように書くのは、政権与党を支持する読者が読むから。逆に、朝日や毎日、東京新聞も同じ。宅配制度だから、読者の望む方向に造形されやすい。

   (いいと思うものは、買って支持する。読者がフィードバックする大切さを感じた)

5.ジャーナリストは現場のことを伝える・・・戦場でなくても、市井の人の暮らしでも、教育でも、多様性があっていい。でも、現場をみて伝えることが大事。

   (そういう池上さんと、森さんはヨルダンのパレスチナ難民キャンプで池上さんに初めて出会ったという。池上さんはそんな現場にも行っていたのかと驚いた)

6.戦時中、マスコミに国民は煽られたのか?・・・国民の支持がなければ、メディアは煽りません。戦争中、日本放送協会が戦争のラジオを流したら、聴取料を払ってラジオを聞く人が増え、ラジオが普及した。1980年、CNNが24時間のニュースチャンネルとしてできた時、誰がみるんだと苦戦を強いられたが、1991年の湾岸戦争で視聴者が爆発的に増え、経営が安定した。メディアと戦争はずっと蜜月。1996年FOXニュースと言うCNNより右寄りなニュース専門局ができた。イラク戦争でCNNが「U.S.Army」と言てたのを「Our Army」視聴者数を逆転した。FOXがブッシュの旗を強く振ったのは、でも国民の多くが支持したから。イギリスのBBCが「イギリス軍」というのに保守系議員から追及があったが、BBCの会長は「愛国心について、あなたからお説教される筋合いはない」と答弁したという。かっこええと思いました。 政府が右と言ったものを左と言うわけにはゆかないと言ったNHK会長(当時)とは雲泥の差。市場原理がメディアには絶対働く。世界中そう。だから公共放送は重要なんです。

7・メディアが国益を意識したらメディアとしてはお終い・・・事実を伝えるのが、メディアの役割。事実を伝えるということは、長い目で見れば、結果的に国益に資するということを肝に銘じる。噓をいったり、知り得たことを隠してはいけない。沖縄返還協定をめぐり日米政府間の機密情報を漏らしたとして元毎日新聞の西山記者は有罪判決を受けたが、皆の関心は外務省女性事務官の不倫問題に関心を寄せてメディアの追及ができなかった。アメリカでは、ペンタゴン・ペーパーズやウォーターゲート事件を報道した記者は国民的英雄で、それは国民が新聞を応援したから。思想信条が違っても、マスコミが公権力と闘う時には連帯するのもさすが。メディアの最大の任務は権力監視と知っているから。日本は朝日バッシングで、他の新聞が連帯どころか足を引っ張る。

   (今年の衆院選挙でも民進党の山岡女史の不倫報道をマスコミが繰り返した。それを垂れ流すマスコミを許したのも民意というべきか。日本は変わっていない。国会で議論される森友・加計問題より、国民は日馬富士事件の方に関心があったということか)

8.憲法改正について・・・鎖国体制を解いた明治以降、日本はアジアに対して優越感をもってきた。しかし、その歪んだ優越感を、戦後も払しょくしてない。アメリカだけではなく、中国でも戦争に負けたのに、実感は薄い。経済でアジアの覇者的な位置を実現したから?でも今は、GDPも中国に抜かれている。失いかけた日本の自信を取り戻そうと戦後レジームをかえようと改憲を言い出している。でも、その改憲もアメリカの意向で、安保関連法の変革はアメリカ議会で大拍手を受けた。かえって、アメリカの支配の強化になっている。

9.ドイツでは、国民の投票でナチスを選び台頭させてしまった反省が根深くある。だから、憲法にあたる基本法の改正は、国民投票でなく、しっかりした知性がある代表者が決めることにしている。なぜなら、「時に国民は熱狂してとんでもないことをすることを知っているからだ」

10・読者の反応がいいものに偏る・・・憲法改正のような政治テーマを扱うと賛否、左右どちらからか抗議がきた。真面目なスタッフでも、人間ですから面倒にやがてなってくる。番組途中から電話の応対などで、スタッフがかかりきりになる。それなら「こんな行事で子供たちが楽しい体験をしました」などが楽かと思いますよね。でも、よかったというのが1つでもあると救われる。数字がよくなくても、視聴者の支持があれば、第2弾の話になることも。雑誌や、新聞は、もう読者がほぼ決まっているが、テレビは偶発性のあるメディア。それがせっかくの武器なのに、不意打ちが自主規制の根拠になってしまう。

  政治的・社会的問題はどう扱うか考えて準備して、ものすごく手間暇がかかります。やったところで必ずどこからか抗議が来る。褒められることは少なく、報われることが少ない。視聴率もとれないので、行列のできるラーメン店紹介の方がいいよねと意見が流れる。

  政治と社会とメディアは不可分。国民は2流だけど、政治は1流という国はない。

12.最近「集団化」。内部に異物をさがし、強い指導者を求め、さらに外部に敵をさがすやり方が大きくなっているように感じる。兵とスピーチとか、反知性主義。集団の原理は一律の行動であり様式。個の煩悩や哲学は必要ない。理性や知性や論理が自分たちの一体感や連帯に水を差すとする。本当は世間が一斉にある方向へ動き出したときに「ちょっと待てよ」と冷静に立ち止まって考えることが、知性というものです。

   ポルポトもフランス留学したエリート中のエリート。集団化は人間の本能。歴史上、国家も含め組織が暴走してしまうのは、被害者意識の共有。被害者は加害者を憎みます。危機意識が高揚して自衛のための暴力を肯定する。これはイスラエルが体現している。連合赤軍の内ゲバも、オウムも、「閉鎖的な組織の中で議論すると強硬派が勝つ」という中で、どんどん強硬になってきた。穏健派は必ず負ける。どの国でも、いつの時代でも必ずそうなっている。

   あと、側近たちの忖度。オウムでは、側近は麻原の言葉を過剰に忖度した。麻原も、側近たちの願望に同調していった。互いに、過激な言葉を発してしまえば、次にはもっと過激な言葉を発さないと後退したことになる、日本が勝ち目のない戦争に突入していったのも、同じ構造だったと思う。閉鎖空間の中で議論すると、どんどん極論になっていく。だからこそ、オープンな社会が必要。外部からの批判を受ける仕組みを作って行かないと、定まった方向にどんどん行ってしまう。

     (森友・加計問題で、過度の忖度が小心な役人の中に横行したことは間違いない。官僚主導だった政策を政治が取り戻すといって官僚の人事権を政治家が握ったことで、忖度が増幅されたことは間違いない)

   北朝鮮が異常だというけれど、よく考えれば昔の日本も同じだった。(とんでもない国といいつつ、対象を理解する回路を断ってしまうのはおかしい)実は別の形で自分たちにも(その側面が)あることだと気づくかどうかの差は大きい。

   イスラム国も同じ。やっていることは残虐だけど、大陸で日本兵もやったし、アメリカも東京大空襲でやった。中国も文化大革命、ドイツはホロコーストで、東西を問わずすべて同じ。「人間とは思えない」というけど、人間だからこそ、こんなひどいことをやってしまう。その視点は持たなければいけない。

   対談を終えた最後のあとがきで、池上彰が森監督との話を振り返って、下記のように締めくくっている。

  森監督はイスラム国やオウム真理教の信者のドキュメント映画を作った。大事件を起こした宗教集団でも、個々の信者は不器用で真面目一辺倒。世間は「殺人集団」「凶悪集団」と断罪するが、ユダヤ人殺害の責任を問われたナチスのアイヒマンについて「悪の凡庸さ」を見出したように、「普通の若者」たちが引き起こした事件だった。「凡庸な悪人」は日本にもおおぜいいるはず。宗教集団に限らず、世間の「空気」を読んで行動する小心者は、いつしかか良心を失い、思わぬ犯罪に手を染めることがあり得るのです。メディア側が自分から「お利口さん」になってしまって、権力者の意向を忖度。自主規制が広がっていく、これこそが問題なのです。森さんは、「お利口さんの」対極に存在する、現代の絶滅危惧種に分類されてもいい存在です。対談によって刺激をうけ、化学反応が起きて、新たに生まれた視点や論点もありました。そこを読み取って下さい。    

  あなたも、是非自分でこの本を手に取って、あなたのやり方で、大切なメッセージを読み取って下さい!!!

  まとめたら、長文になってしまいましたが、最後まで読んで下さった読者の方に、心から感謝いたします。ありがとうございました!!!!

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2 コメント

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Unknown (ブドリ)
2017-12-15 22:49:00
今年の12/8はTVも新聞も真珠湾攻撃など太平洋戦争の報道がすごく静かだったように思えるのですが、いかがですか?
追い詰められて戦争に突入していった当時の日本と、現在の北朝鮮が似ているという専門家は少なくありません。一方で、安倍政権は攻撃するための手段を手練手管で増強しようとしていて、アメリカと一緒に挑発しているとしか思えません。
強い力に憧れをいだきやすい若い世代に、しっかりとした情報を伝えて、力に頼らない道を考えるようにしていく事が大事だと、マスコミはしっかりと戦争のことを伝えるべきなのに、安倍政権に忖度しているとしか思えません。
正しい戦争なんて絶対にない!
悲しい思いをするのは子供達だということをしっかりと伝えなくてはいけませんね。
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Unknown (felizmundo)
2017-12-16 09:28:19
 共謀罪とあいまって、国民の間に忖度して自己規制の気持ちが強く働くと、行きつくところは・・・。
 最近、いろいろなことを調べていて、結局「他者への視点をしっかりもって、分け隔てなく人の話に耳を傾けられる人のいうことが1番正しい」と思えるようになりました。そういう人たちに主導してもらえる政治が一番いい。
  塩野七生さんがテレビで「民主主義はかなり危険な仕組み。でも、いちばん自由を保証できる好きでもある仕組み」というようなことを発言していましたが、それを聞いて、この本にあった、ドイツのナチスを反省して国民投票で基本法を変えないという姿勢の話と共通すると思いました。
  空気で流れて、国民が熱狂して戦争が起きた歴史の轍を2度と踏まない。民主主義の怖さを認識すること。為政者が国民のお墨付きをもらったと勘違いして独走するのを放置するのも民主主義の結果です。
  歴史を学ばない人間は、過ちを何度でも繰り返す。でも、核戦争ならもう次はない。
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