Yuri Kobashi『エンドレス』

SHIMANO Racing 小橋勇利のブログ

レースレポート 全日本選手権

2016-06-29 19:45:32 | レース
大会名:第85回全日本自転車競技選手権大会ロード・レース
開催場所:日本・大島
開催日:6月25日
カテゴリー:U23
コース:11.9km×8周=95.2km
天候:雨後曇り
出走人数:132人
リザルト:4位+3:02(完走42人)

アンダー23カテゴリー最終年の僕にとって2回目にして最後となるU23カテゴリーでの全日本選手権。アンダー1年目、大分の全日本選手権にアンダーで出場した以来のエントリー。

今回はいつにも増して慎重に調整、コンディショニングを行ってきた。
チームの合宿や6月初頭に行われたツアーオブジャパンなどでもしっかり負荷を掛けることができ、とても良い状態で大島に入った。
レース直前の練習でも10分走のベストをマーク。白いナショナルチャンピオンジャージを獲るイメージは十分だった。
後半の消耗後の勝負に自信がある僕にとっては今回のレースが非常に短いという点は不安要素ではあったが、その代わりに天候が荒れて厳しくなることを願った。

当日朝起きると外は大荒れ。
海には白波が立ち、雨は横に降っていて視界もかなり悪かった。素晴らしい。

しかし会場に着いて、アップを開始する頃には雨は止んでしまい風だけが残った。レース直前に周回数が10周回から8周回に減らされたことを知る。ガッカリしたことは否めない。更に短期決戦になり、各選手かなり手前からの動きが予想された。
ライバルとしてマークしたのは岡選手、小林選手、岡本選手、徳田選手。
岡選手・小林選手の総合力を、徳田選手は独走力、岡本選手はスプリント力に警戒した。
戦う相手によって自分の走りを変化させて走ろうと決めスタートした。

スタートと同時に大粒の雨が降り出した。
視界不良、スリッピーな路面にスタートから集団内は不安定。予想通り1周目の上りはそこそこなハイペースで上る。上りで抜け出そうとする選手もいたが特に何事もなく下りへ。
景気付けに下りでスピードを上げアタックしてみる。しかし誰もついてくることはなく単独になってしまったのですぐにアタックをやめる。無駄足は使えない。
下の海外沿い平坦に出ると鹿屋が集団の前に揃いペースコントロール。最初はどういうことかわからなかったが、スタートゴール地点まで残り1Kmを切った辺りの小さな上り坂のスピード感で次の周回の上りで徳田選手を発射するためのコントロールだと気付く。
急いで集団真ん中辺りから前方へ向かう。


スタートゴールラインを通過し2周目に入る。



右に曲がり極端に道が細くなり上りが始まる。すぐに鹿屋の選手の隊列が2つに割れ、中切れが発生する。それをかわしながら前に出ようとした孫崎選手がハイスピードなコーナリングでスリップし落車。後続もあわや落車しかけるというハプニングが発生。
これにより徳田選手を先頭に数人の鹿屋の選手が抜け出す形に。
道が広くなったところからすぐに前の数名に向けブリッジ。後ろから前に合流し頂上まで残ったのは10人ほど。強い選手だけが前に残ったこの逃げは絶好のチャンス。
みんなで声を掛け合いローテーションを開始する。下りでの協調がイマイチでスピードが乗らず後ろから数人が数回に分けて合流してしまい20人弱まで人数が膨れ上がってしまう。スプリントにしたい僕と岡本選手としては好都合であるが、この逃げに入っている徳田選手、小林選手、岡選手にとってはそうではないだろう。
次の展開があると思った。
ローテーションは全員が回っていた。



3周目に入った上りですぐに動きがあった。


道が広くなったところで小林選手がアタック。ぴたりと後ろをついていく松本選手。僕もすぐチェックに入る。アタック後すぐにペースは緩んだが、急激なペースアップにより更に人数が絞れ10人ほど。もちろん僕がマークしている選手は全員残っている。
そこから再びそのメンバーで協調を取りローテーションを開始する。
海岸線の風は強くじわじわ脚が削られていく感覚だったが、僕の調子は非常に良く、周りの選手の表情とは対称的に余裕を感じていた。
周回数が8周回ということもあり、上りをゆっくり行くこともなく毎周回比較的速いペースでこなしていく。

一定ペースで2周こなしていた残り3周の表示を見る前の補給地点でレースは動いた。


徳田選手のアシストである石井選手が残り1Kmの看板を過ぎた辺りでアタック。
その少し前から集団には疲れも見えていたため誰も追いかけることはなくお見合い状態に。
そのまま石井選手は単独で抜け出す。
その微妙な空気の中ローテーションの順番で先頭は小林選手に。
補給地点が見え、皆が補給を欲し取りに行こうと気を緩めているその瞬間、再び小林選手がアタック。マークしているのか松本選手がまたぴたりと後ろをついて行った。
僕も補給を取ろうと思っていたため、ワンテンポ遅れて追いかける。
補給地点でペースを上げるのはヨーロッパでは常套手段。日本でこの攻撃を仕掛けられることはあまりないが、その辺りはスペイン仕込みの絶妙なタイミング。

このアタックに反応出来たのは僕達3人の他に徳田選手と僕と同じ松山工業出身の後輩で松本選手と同チームの明治大学野本選手のみ。5人になったこのメンバーに不足感はない。
皆で声を掛け、この5人で行こうとコンタクトをとる。

上りのペースは非常に速く、小林選手と徳田選手2人が抜け出す形に。後ろは3人になるが、僕はその3人からも1人ドロップしてしまう。
正直ここはめちゃくちゃキツかった。
僕がタレているというより、パワーの絶対値が高く僕のパワーでは不足している感覚。
いつもはそんなこともないのだが、気が付けばヨダレと鼻水をダラダラ流しながら上っていた。一旦呼吸を整え山頂に向かってスプリント。下りに入るギリギリのところで明治大学の2人に追いついた。3人でローテーションして前2人を追う。
下り切り、平坦に出たところで合流し再び5人になる。
先ほどの周回とは打って変わって僕に余裕はない。表情を見た感じでは余裕があるのは小林選手のみ。前々からわかってはいたが、1人だけ別カテゴリーのような別次元の強さを見せていた。
次の通過で残り2周。
再び上りが来るのが怖かった。

アタックされるのは目に見えている。

後は耐えれるか、耐えれないか。
千切られれば負け、残れればスプリントで勝つ自信があった。


残り2周の表示を見て、上りに入る。
警戒はしたが何事もなく上り始める。
冷静に考えて、残り2周を残してアタックするメリットがない。
アタックするなら最終周回。
自分が小林選手の立場でも同じ判断をするだろう。依然スピードは高く、野本選手が苦しそう。
平坦に出たところで野本選手はローテーションに入れなくなる。僕もローテーションを飛ばす回数が増えた。
もはや僕としてはローテーションに入るメリットもない。むしろ後ろに吸収されて振り出しに戻したいまである。
緊張感は時間を追うごとに増し、残り1㎞の看板を見るあたりでは皆に横の動きも出てきた。

残り1周に入る直前の補給地点。
再びここで小林選手がアタック。
今までのアタックとは明らかに違う、もう一段階上のパンチを見せられた。
この時点で僕の両脚は悲鳴を上げそうで、ふくらはぎが痙攣を起こしていた。
ジャンの音を聞きながら上りに入って行く。
一度スピードが落ち着き先ほどの補給地点で遅れをとっていた徳田選手も戻ってきた。野本選手が千切れ4人。
道幅の狭い薄暗い小道を睨み合いながらゆっくりと上っていく。ゆっくりと言っても十分ペースは速かったが、この場においてのゆっくり。
小林選手は何度も後ろを振り返り後ろにつく僕の表情を伺っている。僕はキツイことを悟られないよう必死に睨みつける。目はそらさない。
大人数で逃げている時や、逃げの5人に絞られた時はみんなで会話しているくらいだったのに、今はそれとは真逆の殺気立った雰囲気。


いよいよ再度アタックするであろう、道が広くなる地点が近づいてくる。

今までのキツく苦しいイメージ・感覚を少しでも忘れるためにグローブも脱ぎ、サングラスも取り環境、感覚を改めた。

道が広くなり上りの斜度がキツくなった1.5秒後に小林選手がアタック。
僕もここが全てを決するターニングポイントだという気持ちで歯を食いしばって食らいつく。脚だけじゃなく腕も痙攣している。
今までとは景色が違う。
周りの景色のスクロールスピードが全く違う。ギアもアウターの真ん中ほどまで掛かっている。

なんだこれは。

僕の30秒インターバルの強度であった。
正直痙攣していて体が痛かったこと以外、それ以降の20秒間くらいのことはあまり覚えていない。








文字通り、僕は30秒を過ぎたあたりで小林選手から千切れた。僕が千切れた5秒後に小林選手も踏むのをやめた。(余談※マリノはこの坂で40-20秒の練習をしていたらしく、もがいたのは40秒ほどらしいです…)

クソ…!!!あと5秒耐えていれば!!!!

そう思ってももう遅い。
彼もキツそうに後ろを振り返ったが、僕が千切れてるのに気付くと再び腰を上げて踏み直して行った。
対して僕は完全にオールアウト。
僕が千切れてくるのを待っていたかのように、松本選手を引き連れて後ろから来た徳田選手は僕を追い抜かす際に更にスピードアップ。
速度差をつけて僕につき直させないように抜き返してきた。僕はそんなことをされずともつき直せるわけもなく。
すでに脚も心もなくなっていた。

1位は圧倒的な力の差、2・3位は冷静な判断を下せなかったが故に逃してしまった。
しかし、アタックされた時に2位狙いに切り替えて走っていればと思う反面、ギリギリまで真っ向勝負が出来てよかったと思う自分もいる。
レース後は最後まで残った他の3選手と話し、それぞれどんなことを考えていたか聞いたが、8割方お互いがお互いの考えていることをわかっていた。
僕が真っ向勝負を挑んで少しでも相手の脅威になれたことは間違いないし、それにより相手を少しでも追い込んで、少しでも不安にさせることが出来たのは間違いない。
そんな風に心の底から真剣にぶつかり合うレース、戦いが出来た今回の全日本選手権は本当に楽しくて素晴らしい最高の時間だった。
負けたのは非常に悔しいし、表彰台に上れなかったのは悔やんでも悔やみきれない。
しかし決して後悔はしていない。
最後まで戦ってくれた全ての選手に尊敬の意を表し、またこれから練習に励んで更なるレベルアップ目指していこうと思う。

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ツアーオブジャパンが終わりました

2016-06-08 16:34:59 | 日記

ツアーオブジャパンが無事終了しました


結果はどれもあと一歩というところまでは行けても結局結果は残せず

非常に悔しいですが力不足でした

東京まで走りきりレースが終わり解放感があるだろうとそれを楽しみにしていましたが、結果を残していない僕には解放感というのはあまり感じられませんでした

結果が残らないと充実感は感じられないし、不足感が残る

それが後悔にもなります

今思い出しても悔しさが滲みます

また明日から練習しなおして
全日本選手権こそは




[photo by 松本昭彦]



8日間応援していただき本当にありがとうございました!
次は奈良クリテリウム
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