kisetsunokazeni

ときには空を見上げて深呼吸。無駄と思える時間も必要な時がある。

小さなお使い

2017-04-05 13:55:53 | ひとこと
遠くから独特の


ぱーぷーという笛の音


母に頼まれた娘は


お皿を抱え


じっと勝手口で耳を澄ます


戸を開けてずっと見つめて待つのは


なんだか気恥ずかしくって


だから


閉めた戸の内側で


全身を耳にして


笛の音が近づくのを


息を殺して待っている


そして


おもむろに戸を開けて


「おじさん、お豆腐一丁とお揚げ4つください」


おじさんが手際よく


いっぱいある引き出しからお豆腐とお揚げを出し


お皿に盛って渡してくれるのを


わくわくしながら眺めると


ハッと我に返ってぽっけからお金を出してお支払い


おじさんがにこにこしながら自転車に乗り


笛を吹きながら行ってしまうのを見送りながら


いつか私もあの引き出しから


お豆腐出してみたいと小さく夢見る


そうして


母のほうに振り返り


今日の戦利品を見せるけど


こんな風な買い方だと


たまに戸を開けたとき


もうおじさんが通り過ぎてることもある


そんなとき


ほんとに申し訳ない気持ちで母に振り返ると


「しようがないわねえ」の言葉と


優しい笑顔がそこにあった


幼い日の


小さなお使いはいつも


ドキドキとワクワクに


満ちていた
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