蟋蟀庵便り

山野草、旅、昆虫、日常のつれづれなどに関するミニエッセイ。

人類滅亡まで、あと4年?―-再びのミツバチ考

2009年04月19日 | つれづれに

 メロン、スイカ、イチゴ、ナス、カボチャ、トマト、キュウリ…春たけなわの受粉の季節を迎え、俄かに「ミツバチ激減」の特集やニュースが増えた。
 4月2日Nテレビ。茨城県つくば市鉾田。全国有数のメロン産地で、例年一つのハウスに6,000匹のミツバチを放すのに、今年は僅か2,000匹しか確保出来ない。農協や養蜂家に何度も頼んでいるが、あと1ヶ月続く受粉のめどが立たないという。愛知県大手のミツバチ販売会社でも出荷できるミツバチが激減、業界全体で50%の出荷ダウンとなった。およそ1,500万匹を育てるある養蜂家の巣箱でも、昨年8月に異変が起きた。400万匹のミツバチが死んでしまったという。
 原因①カメムシなどの駆除の為、水田などに使われるネオニコチノイド系の農薬の影響。②駆除する薬が効かなくなったヘギイタダニの大発生(新たな駆除剤が今月認可され、温かくなるこれからの受粉期に向けて急ピッチで生産を進める予定)。③伝染病の為に輸入出来なくなった女王蜂。
 全米各地(35の州)で確認されているCCD(蜂群崩壊症候群)にも触れていた。一昨年から昨年に掛けて、全米のミツバチの1/3、実に270億匹以上が失われたという。茨城県畜産草地研究所みつばちグループの研究者が全国の養蜂家にアンケートを実施したところ、23.4%からミツバチ失踪経験ありの報告を受けた。中には150群300万匹を失った人もいる。「ハウスや自然でない状態で育てられた受粉用のミツバチが、ストレスで弱っているのではないか」と彼は言う。収穫減、作物価格の高騰が懸念される。特集では、少しでもミツバチに負担がかからない育て方、使い方が必要ではないかと結んだ。

 4月10日、Tテレビ。政府が対策に乗り出したという。メロン、イチゴの一大産地・千葉県旭市。農業水産省調査によれば、20年度前年比14%もミツバチが減った。巣箱の中の巣板1枚の価格が、5、000円から10、000円に高騰。原因の指摘は同じ。(伝染病の為に輸入できなくなった女王蜂の輸入先を、オーストラリアと明言した)
 死人のような不気味な目付きの農水相が、したり顔に対策を述べている。緊急調査を実施したところ、21都県でミツバチが不足している。対策として①需給調整のシステムを立ち上げる。②園芸農家への経営支援の検討。③アルゼンチンからのミツバチの輸入。
 結びにキャスターが触れたのが、アインシュタインの「ミツバチが消えたら、人類は4年しか生きられない」という衝撃的な言葉である。

 際立って浅薄な政府の認識を含め、まだまだ危機感は斑らである。日本でも、いつ起きても不思議ではないCCDの恐怖。根底にある「環境問題」に深く突っ込んだ報道は、残念ながらNテレビでさえ、まだない。ヘギイタダニに新たな駆除剤を投入しても、またもや耐性を増すだけかもしれない。農家の売り上げが減る、だから助成金を出して助ける、緊急に外国からミツバチを輸入する……刹那的な対症策だけで、迫り来る滅びの足音に耳を傾けている気配はない。

 愚痴り、かこちながら、異常に高温の4月後半を迎えた。5月半ばを先取りした眩しい日差しが陋屋・蟋蟀庵の庭に注ぎ、半日陰の庭の隅に群生したホウチャクソウが、細長い釣鐘を仲良く2連ずつ風に揺らしている。高速道1,000円の超渋滞連休が近付いている。庭先にビーチ・ベッドを持ち出し、真夏のダイビングに備えた恒例の「甲羅の下焼き」が連休の私の楽しみである。紫外線の皮膚癌の恐怖など、古稀まで生きた我が身にはない。彼岸の母が「また、なんばしようとね、あんたは!」と、今年も呆れることだろう。
                (2009年4月:写真:ホウチャクソウ)