蟋蟀庵便り

山野草、旅、昆虫、日常のつれづれなどに関するミニエッセイ。

師走の風に

2016年12月28日 | つれづれに

 3.7度の木枯らしが窓で鳴いた翌朝、宝満山―三郡山―砥石山―若杉山と連なる山々が、うっすらと雪を頂いた。学生時代に25回の縦走を重ねた連山も、今は遠く仰ぎ見るだけである。しかし、想い出の中に、踏みしめた山径の起伏がしっかりと残っている。
 77度目の除夜の鐘に煩悩を払う夜が間近になった。あと3日で、波瀾の一年が終わる。年毎に時の流れが速くなる……歳月人を待たず……そんな実感を抱き始めたのはいつからだろう?

   人生無根蒂    人生根蒂無く
   飄如陌上塵    飄として陌上の塵の如し
   分散逐風轉    分散し風を追って転じ
   此已非常身    此れ已に常の身に非ず
   落地爲兄弟    地に落ちて兄弟と為る
   何必骨肉親    何ぞ必ずしも骨肉の親のみならん
   得歡當作樂    歓を得ては当に楽しみを作す
   斗酒聚比鄰    斗酒 比隣(ひりん)を聚(あつ)む
   盛年不重來    盛年 重ねて来たらず
   一日難再晨    一日 再び晨(あした)なり難し
   及時當勉勵    時に及んで当に勉励すべ
   歳月不待人    歳月 人を待たず

  人生には木の根や果実のヘタのような、しっかりした拠り所が無い。
  まるであてもなく舞い上がる路上の塵のようなものだ。
  風のまにまに吹き散らされて、もとの身を保つこともおぼつかない。
  そんな人生だ。みんな兄弟のようなもの。
  骨肉にのみこだわる必要はないのだ。
  嬉しい時は大いに楽しみ騒ごう。
  酒をたっぷり用意して、近所の仲間と飲みまくるのだ。
  血気盛んな時期は、二度とは戻ってこない。
  一日に二度目の朝はないのだ。
  楽しめる時はトコトン楽しもう!
  歳月は人を待ってはくれないのだから!!    (陶淵明)  ネットより

 小さな丘と深い谷を連ねたような1年だった。時として弱気になり、途方に暮れることもあった。「神は、乗り越えられない者に試練は与えない」という言葉を信じ、娘たちや孫たち、兄弟姉妹、そして周りの友人たちに支えられて、家内と二人で乗り越えてきた。紛れもなく、「人は誰かに生かされている」ということを実感した1年だった。しかし、もう不安はない。
 「終わりよければ全て良し」……何とか無事に今年を終える安らぎを確かめながら、久し振りにパソコンを叩いている。
 「ブログが、ある時期からぴたりと静止してしまった事も気付いてました」と案じる温かいメールをいただいて、ふっと心の奥に残っていた小さな氷の塊が融ける思いがした。

 庭の片隅に、大好きな水仙が開いた。家内の病室に届け、無事に退院した玄関に飾り、癒しをもらった。やがて来る新しい年にも、優しく甘い香りを振り撒いてくれることだろう。
 木枯らしに枯葉を散らし尽くした蝋梅が、無数の蕾の間から一輪の花を開いた。楓の枝先では、春の芽生えに備えた瑞々しい新芽が、健気に寒風に耐えている。目を凝らせば、庭一面に春への歩みが始まっていた。

 申年が去る。全ての喜怒哀楽を包み込んで、躊躇いなく、そして潔く去るがいい。私達には、まだまだ豊かな「明日」があるのだから。
                   (2016年12月:写真:香り広げる水仙)
ジャンル:
ウェブログ
コメント (2)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 晩秋を飾る | トップ | 木漏れ日 »
最近の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
良いお年を! (テディー)
2016-12-28 20:11:41
ご隠居さま、こんばんは!

何度も、何度も、ご隠居さまの「晩秋を飾る」のタイトルのままのブログをお訪ねしては、ととろ奥様のことを案じておりました。
先日無事に退院されたとのメールに安心いたしました、本当に良かったですね。

丘を越え、谷を越えて、本当に色々とあった、この一年でしたものね。
そんな今年も、もう終わりです。
どうか、素晴らしい新年をお迎えくださいますように!!
ありがとうございました。 (蟋蟀庵ご隠居)
2016-12-29 07:37:58
テディーさん

 大変ご心配をおかけしました。お陰様で、元気に新しい年を迎えることができます。
 いくつになっても、「人生いいろいろ」ですね。此処まで生きてきたら、健康こそが余生の資産です。
 お互いに、豊かな新年に期待しながら…「どうぞ、よい年をお迎えください!」
 一年間、本当にありがとうございました。

コメントを投稿

つれづれに」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。