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家族(嫁してインドに生きる)

2016年03月04日 | 読書
 
 処分しようとしていた古い文庫本
 のあとがきにちょっと気になる
 文章を見つけたので
 載せる事にしました。

 

 

 1984年のちくま文庫で
 タゴール瑛子さんの書いた
 「嫁してインドに生きる」です
 インドと日本をあれやこれやを
 潜り抜けて 奮闘した記録です

 インドではその当時の日本以上に
 大家族の制度がしっかり残って
 います。しきたりやら国の違い
 やら大変さが伝わってきます

 瑛子さんの初めての出版本に
 よせた娘さんの手紙があとがきに
 紹介されているのです。
 
 私の紹介したいのはそのあとがきです

 娘さんは日本とインドで生活して
 その後 アメリカで大学を卒業
 22歳でドイツの青年と結婚しています

 「ここに書かれているインドの生活は
 私にとっても非常に魅力的です。

 比べてアメリカでは あくまで個人プレー
 だけが頼りの孤独な国です。

 生活の不安定さとつきまとう心配
 対人関係の希薄さは想像以上です。
 安定した豊かさとか安心感はお金がなければ
 手に入りません
 カルカッタに在るような家族 友達 人々との
 親密で暖かい思いやりのあるつながりは夢の
 ようです。

 たとえジョイントファミリーにつきものの
 様々な弱点や欠点があったとしても
 人々が相互に無視したり 無関心でいたり
 血の通わない組織に 不平不満をつのらせて
 いたりするよりはずっと人間的で自然だと
 思うのです。

 私は人生が完璧に幸せで易しいものだとは
 思っていませんし 人々との摩擦を恐れよう
 とも思いません。

 少なくとも人々と接触する事は良きにつけ
 悪しきにつけ 本物であり それ自体が
 生きている証拠だと思います。

 アメリカに長く住んでいると インドの
 家族構成に見られる安心感や暖かさ 包容力と
 いった優れた資質が恐ろしく欠けていると
 感じます。

 その埋め合わせに人々がしがみつくもの
 ーそれは大抵の場合「希望ホープ」なのです
 こう言えば聞こえがいいようですが
 実現の可能性も薄いホープに向かって
 人々は他人を踏みにじっても厳しい生存競争に
 のぞまなければなりません。

 競争のすごさは地獄の沙汰と言ってもいいでしょう
 多くの人がクレイジーになるのも不思議では
 ありません

 殊に希望や目的を達成できなかった人々は
 落伍者と見なされ 二度と立ち上がれないような
 状態になってしまいます。

 こうした「ルーザー」を支えてくれる家族に
 欠けているのもインドとは全く違った社会だと
 思います。

 ジェネレーションギャップについても
 考えさせられました

 ここではジェネレーションが異なれば
 互いに受け入れず 我慢できず 往々にして
 敵意さえ抱いているのです

 親の代 子の代とどうしてこうも区別する
 のでしょう?

 年齢に関係なく 人は誰でも同じ時間を共に
 経過していきます

 だれでも同じように子から親になり老いていきます

 しかし ここでは若い人々は高齢者を「ボケ老人」
 「無能者」「剥奪された者」「窮乏者」などと
 冷酷に呼んで 自分たちとは別の人種のごとく
 扱うのです。

 若い者もそう遠くない日にいずれは高齢者に
 なるという簡単な事実をどうして忘れるのでしょう
 パラノイア(偏執病)にかかっているかのようです

 アメリカは若く 有能な人々にとっては惹かれる
 所ですが 年をとった人々には惨めな所です

 一生懸命に生きてきて 結末で苦しまなければ
 ならないとは耐え難い事でしょう。

 できるならば私はアメリカで老いたくないと
 思っています。
 
 ・・・・中略・・・

 人生は全く予期せぬ出来事が起こる物なのですね
 人生は思い通りには計画できない
 だからこそ 未知への挑戦があり
 冒険があり ワンダフルなのだと思います

 ・・・中略・・

 私はいつも自分の背後にはインドと日本
 この歴史と伝統のある二つの国が存在している事
 を誇らしく思っています。

 本当の意味での「先進国」(物質面だけではない)
 は自国の伝統的な「長所 美点」の重要性を意識
 するものだと思います。

 時間は無駄に過ぎていません
 伝統もまた長い年月と経験の積み重ねの結果で
 あり あらためて注目するとそこには
 ベターライフのための限りない知恵と実利的な
 知性が詰められています。
 
 日本もここらでアメリカの後追いばかりをする
 ようなやり方を考え直したほうがいい。

 何故ならそれでは失う物が余りに多く
 得る物が少ないと思うからです。

 核家族 憂鬱な対人関係 留まる所を知らぬ
 物質欲 不平等な富の分配と蓄積
 広がる貧困 不安な老後 孤独な老人ホーム
 無責任な教育 社会的無関心 深刻な暴力問題
 青少年非行といじめ問題・・・

 これでどうして「進歩プログレス」と
 呼べるのでしょうか?

 
(最後に娘さんはこう書いています)

 あなたの本が醸し出すヒューマニティの
 良い点が 社会的観点からも深く読まれて
 欲しいと心から願ってやみません。」

 さてこれはもう29年も前に書かれたものです。
 あれからはや30年近くたち 
 世の中は 変わったのでしょうか?
 少しは良くなったのかな?
 立ち止まったまま?

 調べたらアマゾンで中古で売ってました
 興味のある方は調べてみてください
 

 
 

 


 



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