所属している一橋大学管弦楽団のトランペットの同期が辞めた。
彼は自分から「会計チーフもパートトップも僕がやります。むしろ、ずっと僕がやるものだとずっと思っていたのですが。」と一年前に言って、私は、私達は信じて任せていた。
前から集合時間ギリギリにきて音出しせずに練習に参加なんてことはよくあったけれど、会計とか場所取りや鍵開けをする副長の仕事があるからはやく来ざるを得ないだろう、と思っていたが
ちゃんと仕事をしたのはこの1年で3回くらいなのでは。
少し前までは「定期のメインのトップ(管楽器奏者にとってはステータス)は僕がやりたいです」と言われ、すごく熱心な人なんだなと思っていた。入団して初めて学年でアンサンブルをしたのも彼が企画してくれたのがきっかけだった。
それが段々変わっていった。
ギリギリに来て音出しせずに練習に参加、飲み会にも来ないし誰とも喋らない、GPに無断遅刻、参加すると言っていた行事(演奏会含む)に無断欠席、トレーナーへの謝礼を各セクションリーダーに渡していない、練習しなさすぎてまったく音が出ない、連絡が1ヶ月以上取れなくなる、会計(口座にアクセスできるのは彼だけだった)が機能しなくなり多い人は30万円以上立て替えている
など。
1ヶ月以上彼と連絡が取れなくなっていたが、オフ期間(サマーコンサート後1ヶ月は活動がない)だからまあ仕方ないかと思っていたら、オフ明け後の分奏からの本振り指揮者合奏(休むのはご法度)に練習が始まってから「本日の練習は欠席します」との連絡。代吹きはたてたからいいものの理由が不明。すぐに返信しても既読がつかず。
4日後の練習は流石に来るだろうと思っていたら、
来なかった。
この日も練習が始まってから「かなり遅れます」との連絡。意味がわからない。トレーナーさんをお呼びしての練習だったため、「今から練習には参加しなくていいです」と返信したものの、謝礼の関係上来てくださいと伝えた
のに。
彼は来なかった。
誰も彼のことを信用してないから二重封筒も用意して謝礼も立て替えて新札で用意していた。
特に問題なくトレーナーさんにお支払いできてよかったものの、次の練習は合宿前日練。ここでケリをつけないと間に合わなくなる。口座も渡してもらわなきゃ。
22時30分を過ぎていただろうか。金管の同期3人と彼の家を訪れた。LINEはちゃんと見てね、欠席でも遅刻でも人それぞれ事情はあるのはわかるけどなるべく事前に連絡してって伝えなきゃね、なんて話しながら。
彼の住むアパートに着いた。金管のセクションリーダーが階段を上り、インターホンを押す。
がちゃり。
出てきた彼は、心配になるくらいに前よりもかなりやせ細っていて、か細い声で「すみません…」と言った。
「辞めたいです…」
泣いていた。21歳の男が泣いていた。
受け入れるしかなかった。