夢の介音楽夜話

音楽、アート、グリーン、クラフトなどなど徒然なるままに

追体験、語り継ぐこと

2016年07月29日 | 日記・エッセイ・コラム


母の命日を迎えて西伊豆の墓所を訪れた
熱海をはじめ伊豆半島全体の観光地はシャッター化が進んで寂しい

高度成長時代の社内旅行をあてこんだビジネスモデルがもはや通用しない時代であるとしても「不況」が直接の原因だ
リーズナブルと評される旅館には中国人と思しきスタッフがたどたどしい日本語でサービスをする

大型観光バスで大挙して来ている外国人の話す言葉はどうやら中国語だ
中国人スタッフが中国人観光客を相手にビジネスを展開して糊口をしのいでいるならもはや産業の空洞化が日本国内で行われているわけであり、アベノミクスは機能していないのではないか

穏やかな駿河湾を見下ろす山村から夢を見て新天地を目指した祖先たちを思いやる
アメリカに密航したという祖父の兄の子孫にも会ってみたいと八丈島に出かけた亡父の気持ちもわかる

片田舎の山村や漁村、農村にも第二次大戦の影響はあった
生きて帰れた人はいい方で貧しい暮らしから必死の思いで育てられた少年を死に追いやる戦争は憎い

同じ年代を生きた忌野清志郎氏の母親の最初の夫がレイテ島で戦死したそうだ
戦後再婚して彼を生んだ母は三歳の時に亡くなって姉夫婦に育てられたという

追慕する実母の写真や短歌を見たのは物心ついてから、戦争に対する憎悪を母から受け継いだ
愛する人を紙一枚で召集され、紙一枚で戦死を告げられる残酷を一体誰に許されるのだろうか

終戦記念日が近づいてきてあの忌まわしい戦争の記録が報道される
戦時中の覇権主義は満州など一時の夢を与えたもののそれは絵に描いた餅でしかなかった

戦争体験のある人が身近にいなくなった今、追体験をして世に語り継ぐこと
それが我々に託された仕事か、





20091231 耳をすませば・忌野清志郎

キッズ・バンド

2016年07月23日 | 音楽


子供がバンドを編成して演奏するのは、見ていて楽しい
大人びたパフォーマンスをやらせるのは鼻つまみものだが、素直に音楽にのめり込む姿は親でなくとも見て微笑ましい

小学校低学年の女の子3人のバンドクリニックをお試しでお引き受けした
今バンドがあるわけではなく親御さんの子供にやらせてみたいという期待にお応えした次第だ

近隣に住み同じ小学校に通うお友達3人は、それぞれがドラムス、ピアノ、ウクレレを習っている
ドラムス嬢の発表会で楽曲「キセキ」を大人に混じって演奏するのを見た親御さんが、これならバンドができそうだと思い立った

バンドがなかなか育たないのは機材など必要なアイテムが多い上に、ドラムスなどスタジオ施設が必要だからだ
ましてや子供用の楽器を調達しなければならないならそれこそ大手楽器店のスタジオでしか対応できない

幸いドラムスは大人用でレッスンを受けているというからスタジオの備品で事足りる
キーボードも家庭用のものを持ち込んで、先ずはやってみようということになった

福島の歯科大学出身の歯科医たちが覆面で製作したという「キセキ」は良くできた楽曲だ
印象的なコード進行の上に歌がたたみかけるように乗っかっていてリズムが変化してゆく、間にラップが入ったりと、学校でもとりあげているらしい

1音づつコード展開するようなアレンジ箇所は、初級者にはハードルが高いが、子供はそんなことはお構いなしだ
レッスンでやっていないピアノ嬢にとっては初めての曲なのでコード弾きをその場で教えて対応することにした

わずか一時間余でセッティングから片付けまでして、なおちょっぴりでも彼らに「成功体験をしてもらいたい」のが講師の思い
コード理論の説明をする時間などないので鍵盤を押さえながら口頭で「C、Cオーギュメント、」とやる

無言の彼女はコード・プログレッションの説明に耐えていたが、やがてそれら和音は楽曲の進行とリンクしていることに気付いたようだ
そして一時間弱でイントロと楽曲前半部分についてこの乙女バンドは譜面を共有できた

マイクが欲しいとの声は、先生にはわかっていたことで、機材使用料がかかること、準備に時間と手間がかかることで今回は無しにしたのだよ
まあ、案ずるより産むが易しでやればできる、月2回くらい集まって音出しできればバンドらしくなるだろう

スタジオで大きな音で音楽をやること、しかもお友達とで、彼らはまるで遠足に来たようなはしゃぎようだった
そう、バンドをやるってことは楽しい、一生忘れられないほどの思い出になる、、、だからやめられない


GReeeeN - キセキ


Boz Live 2004)

知ってるかい、この美しい星を

2016年07月20日 | 音楽


信念を持って生きている人は美しい
美しい地球を守ろうとして様々な活動をする

環境を破壊して経済活動をした方が利益につながるし残念ながらそうして高度成長を続けてきた
利益や金を優先することが正しいと息巻いてきた人々も深刻な環境破壊を目の当たりにするとひそひそ声になる

プレスリーやビートルズで知られている湯川れい子さんの主催するイベントに今年も参加させていただいた
他界されて久しい中村とうようさんの意を汲んだメモリアルイベントだ

神経質そうな目をされたとうようさんにお会いしたのはポリドールのアルバムのCD化の時だった
「新しくレコーディングした方がいいのだろうか?」と私に真摯に質問されたのが最後になってしまった

レコード会社のスタジオで録音された音源は高品質だが、ワールドミュージックの素朴な味わいがよそ行きになってしまう懸念もある
ミュージシャンの思いとビジネスが融合するのは夢物語かもしれない、コストパフォーマンスありきが商業なのだから

音楽をビジネスにすると主義主張を傍らに置かなければいけない状況も出てくるだろう
評論の世界もあまりに偏ってはいけないのだろうが、そこに何らかの光明が見出せなければこれまたいけない

湯川れい子さんが作詞した曲を敬愛する尾崎紀世彦さんが歌っていた
英語の「Do you know」と、「地球(ほし)に抱かれて」という難しい曲だ

「また逢う日まで」の大ヒット以来、持ち込まれる曲は難しい曲ばかり、結果一般人が歌えなくてヒットに結びつかなくなってしまった
尾崎さんがしみじみと述懐されていたが、今だに尾崎さんファンの多くの方々が彼にしかできない歌唱力を追い続けているのは皮肉なことだ

カラオケで電子的に点数を競うなどという時代になったが、そもそも歌に点数はつけられない
新橋で弾き語りをしていた頃の尾崎さんにお会いしたかった、プロの演奏で素人が歌うなんて恥ずかしくてできなかった時代だ

さて猛暑の一夜、サンディーのボーカルとフラ、スラックキーとスティールギター、集う人々が和やかな気持ちになれた
天国からとうようさんが眺めていてくれたからだと思う



尾崎紀世彦 Do You Know

小田裕一郎作曲「地球(ほし)に抱かれて」歌:尾崎紀世彦

トリオの可能性

2016年07月17日 | 音楽


古今東西、音楽ジャンルを問わずトリオ編成はよく目にする
楽器のミニマム・ヴァリエーションとコーラスのコストパフォーマンスを求めて、可能性は無限大か

ミュージシャンサイドからすれば最小限の楽器で旅ができる
メキシコのギタロンとギター二本があれば、客席を回りながらチップをゲットできる

ハワイではウッドベースとギター、ウクレレのトリオが古いLPジャケットに見られる
これにスティール・ギターが加わればどんなレパートリーもこなせる

コーラスを「ひとかたまりの音に仕上げる」のにも都合がいい
兄弟で編成されるトリオは声の質が似ているため更に一体感が増すようだ

リスナーは勝手な要求を重ねるのが常で、更に色気を要求するかも
一体感と矛盾するが、個々人の人間的な魅力ということになろうか

数日前初めてお会いしたYさんがギャビィ・パヒヌイを引き合いに出されたので驚いた
スティール・ギターをやられる方なので当然といえばそれまでだが、かなり正確に捉えていらしたのが嬉しかった

ライ・クーダーの傑作アルバム「チッキン・スキン・ミュージック」の2曲をギャビィが弾いていることを案外認識されていない
そしてアルバム「Kanikapila」で、達人ピーター・ムーンと素晴らしい演奏を残していることを案外ご存じない

さて映像のこのグループ、好みは分かれるところだが、一体感を感じる
ハワイのグルーヴと言ってもいいかもしれない、丁度寿司屋に入って威勢のいいお兄さん達の気迫に圧倒されるようなパフォーマンスだ

音楽に「リズム」がいかに重要か、、、いつもの持論に行き着く



Hawaiian Airlines' Pau Hana Fridays - Na Hoa: Ka Uluwehi O Ke Kai

Hawaiian Airlines' Pau Hana Fridays - Na Hoa: Sweet Lei Lehua

Hawaiian Airlines' Pau Hana Fridays - Na Hoa: Pili Me 'Oe

トゥセイ

2016年07月13日 | 音楽


楽曲を綺麗にまとめ上げるか、別物にしてグレードアップ(?)するか、は悩ましいところだ
全てに「アレンジの妙」を加えたいところだが、ステージの全体を考えるとそうもゆかぬ

様々なヴァリエーションがあって、なお音楽的な主張という芯が通っている、なら企画は成功だ
オリジナルを50年追求している盟友Fくんの生き様も尊敬するが、何らかの調味料をまぶしたくなるのが私のいけないところ

スティーヴィー・ワンダーが出てきた頃、黒人で盲目の少年という位しか情報がなかった
ラジオから流れた「太陽の当たる場所」が明るい未来を感じさせる楽曲で印象に残っている

長女が生まれた頃「I just call to say I love you」がヒットした
英語のこの歌の意味が何なのかお構いなしに「トゥセイ」と口ずさみながらラジカセから流れる曲に合わせて彼女は踊っていた

2016NAMMショー、日本発ドラムスブランド「KANOUPUS」ブースで、スティーヴィーがひとしきりドラムを叩いていったという
この話を教えてくれたドラマーKさんの話では、彼は元々ドラムスをやっていたらしい

楽曲にリズムがどれほど重要かは、身に沁みているだけにこの話は納得したものだ
彼の作る楽曲を振り返ればリズムがかなりの比重を占めていることもわかる

さて映像のお二人、爽やかでいい
「私うまいのよ」とか「こんなに弾けるんだぜ」という悪臭を放たなくて素直に淡々とこなしているのがいい

「女性のキーはどの辺りかなあ?」と探した結果、遭遇した映像
男性がキー「C」で歌い始めてコーラスを、次に転調してキー「G」で彼女が歌う、やがてエンディングでキー「C」まで持っていって彼女のハイトーンで終わる

この爽やかさがいいのだ
やたら派手なパフォーマンスをもてはやす最近の傾向は、年寄りは全く関心がないのだよ

「自然体」で表現できればいい
そしてそれは「本物」であって欲しい








I Just Called To Say I Love You - Stevie Wonder (cover by Bailey Pelkman & Randy Rektor)