夢の介音楽夜話

音楽、アート、グリーン、クラフトなどなど徒然なるままに

トリプル・ネック・ギター レヴュー

2015年05月29日 | アート・文化



複数のネックを備えた一台のギターを「マルチ・ネック・ギター」と呼ぶ。
眼にするところでは、6弦と12弦ネックの「ダブル・ネック」だろう。

ソリッドのエレクトリック・ギターが開発されて以来、一台のギターに複数のネックを取り付けることは容易になった。
複数のネックをセットする目的は様々だ。

複数のチューニングで弾きたいというスティール・ギタリストのニーズは、ダブルからトリプルへ、そしてフォー・ネックへと行き着いた。
歴史の中ではレボルバー式の回転物も開発されたようだが、演奏中の持ち替えスピードの観点からフェンダー社で有名なダブル、トリプル、フォーネックが普及した。

ギターでもオープン・チューニングなど瞬時に持ち替えするため6弦のダブルネックという発想もある。
もちろん、スティール弦とガット弦、12弦と6弦など音色の変化を目的とする場合もある。

ギターとマンドリンやウクレレ、ベースといった異種の弦楽器の組み合わせも多い。
これらを一台のギターに搭載するには、小型の楽器が大きなボディに組み込まれることになる。

ここでは専門家の志茂さんの言葉が印象深い。
例えばアコースティックのウクレレとベースの場合、同じボディを介して共鳴するため予想外の共鳴音が出る。
従って「作ってみなければわからない、面白い音が出る」というわけだ。

そうした多弦ギターの極致が、パット・メセニーがカナダのリンダ・マンツァーに製作依頼した「Picasso」だろう。
「一台のギターに何本の弦が張れるだろうか?」というトライアルで始まったらしいこの作品は彼女の代表作だ。


先般志茂さんの近作、「Alani's Triple Neck」を拝見した。

ハワイで生まれたウクレレ、スラックキー・ギター、スティール・ギターの三種の楽器をソリッドボディに収めた傑作だ。

基本となるボディ・サイズを「テレキャスターのケースに入ること」としたという。
仕上げもビンテージのテレキャスターのよう、色むらのあるようなクリームホワイト系の薄いタッチの塗装。

全体に小ぶりで、驚くほど軽い。
ギターを上部に持ってきたのはデザインとバランスの両面で正解だ。

8弦スティールギターをギター達と同じ面位置にセットしたのはスティール・ギタリストならではの発想だ。
「膝の上で弾くラップ・スティール」スタイルを採用したらしい。

ギターはソリッドでありながらアコースティック出力をイメージした6弦。
ヘッドは、フェンダーを彷彿させなお「Shimo Guitars」を印象付ける形状。

センターの4弦ウクレレの収まりがいい。
弾きやすいことと、ソリッドなのにボディが共鳴している、
これはスティールの指板の下がホロー構造になっていることと密接な関係があるようだ。

スティールはフェンダー系のイメージを引き継ぎながら、ウッドのハワイアン・ギターを強烈に意識している。
いわゆるフェンダーの分厚いソリッド・ボディから出る低音弦の音色を実現しながら、オアフとかローカルなハワイアン・ギターを彷彿させる。
弦間隔にもスティール・ギターの達人ならではのリクエストが寄せられたようだ。

ピエゾによるアウトがそれぞれ独立しているのも志茂さんらしい。
細かいことを言えばギターとウクレレは、PAにつなげる前のイコライジングが異なる。
そしてスティールはミュージカルアンプを通した方がよりスティールらしい音を期待できることから、すべて独立した方がいいからだ。

立奏し、膝の上でも弾くという演奏スタイルからこのコンパクトさは、重宝するだろう。

このトリプルネックの出来は、志茂さんの弦楽器作りの集大成といってもいいかもしれない、それほど完成度が高い。
ビルダーは注文に応じて作るのだが、志茂さんは演奏スタイルやその人、音楽そのものまで研究し、それらを作品に反映している。
さらに経験に基づいたテクニカル・サポートを作品に込めるし、フォローもする。
ミュージシャンが頼りにしたくなるというものだ。

随分昔のこと「The Hawaiian Band」というマルチネック・ギターのアイデアをお持ちし、志茂さんにお手伝いしていただいた。
一旦完成したが、さらに改良の途上、早く完成して陽の目をみなければ。

「ものづくり」と「考えること」

「夢を実現する」ことが、ミュージシャンの夢だ。

















1961 Gibson EBS 1250 Double Neck Guitar

Andy Manson, Led Zeppelin, John Paul Jones style triple neck at The Fellowship of Acoustics

Fusetar 'Lucifer' - custom 3 neck Guitar & Setar instrument - Shahab Tolouie

Buddy Merrill plays "South" on the Fender Steel Guitar

5. Pat Metheny - Into The Dream

みんなちがってみんないい

2015年05月26日 | 音楽



河原のせせらぎを聴きながら風を楽しむ
陽を浴びて音楽を楽しむ、飲んだり食べたりおしゃべりしたりしながら、、、

八王子の浅川というそんなに大きくない河川の流れを見ながらBBQ
地場の野菜が売られたり、氷と一緒にキュウリやトマトが浮かんでいる

なぜかジャージー種の牛が闊歩したり
雨模様の予報は外れて日焼けしそうな暑さの中イベントは進行する

金子みすゞさんの詩をいただいたこのイベントは第8回で通算23回だそうな

確かにみんな様々な楽しみ方をして一日を過ごす
社交の場を強要したりしないで互いの存在を認めながら自由を満喫する

音楽を説明する必要もなくレゲエが始まればみんな踊り出す
そして我らがダカインサウンド

太陽を浴びながら拡がるスラックキー・ギター、ウクレレとベース


わずか30分の夢を笑顔で見てくれたAさん、名古屋から車で来てくれた
「このままバンドを名古屋に連れて帰りたい」と

久しぶりにお会いしたミュージシャン、Mさん
術後一週間とは思えない元気な顔を見てまたぞろ音楽の虫がささやく

なんでもできる人と音楽をやるのは、これまたまた難しい
なんでもできてしまうから

みんなちがってみんないい

でもちょっぴりセンスのいい小鳥さんと一緒に歌いたい






金子みすゞ   わたしと小鳥とすずと

夕暮コウUNIT with 森下寿一 Perfect

恋は愚かに

2015年05月21日 | 音楽




メロディで恋を語れたら、、、
歌詞を理解せずとも旋律が恋の情熱を語っているなら素晴らしい。

1940年にできたらしいこのスタンダード、アレンジでロック風にもなるしっとりとしたバラードだ。

憧れた女性が知的でお高くとても自分の手に届かない人だと思う時、男はコンプレックスに苛まれる。
ものを言えば馬鹿にされそうだし、だいたい気の利いた話題が出てこない。

しかしそうした高嶺の花の付き合う相手は、さもない粗野な男のような気がするのももてない男の僻みか、この世の常か。

リズミカルなアレンジもいいが、しっとりとしたバースから始まるジャズ・ボーカルがいい。
バースは作者に許されるインプロヴィゼーションなのだろうか。

エディ・カマエが来日した公演で彼の作品「E Ku'u Morning Dew」を歌い始めた時、初めて聴くバースに感動した。
「ああ、バースがあったのか」と。

ごく自然に導入部を語り、メロディの印象をより強いものとしてくれる。
その夜のコンサートの全てを彩ってくれるようだった。

メロディを作り、歌詞を書く、ことがやり慣れていないから遠い世界のように思える。

ラブレターを書いて恋の歌を捧げるという努力をしたら案外できるようになることかもしれない。

嗚呼「Fools Rush In」


Lesley Gore - Fools Rush In (Where Angels Fear To Tread)

Fools Rush In (Alternate Take 9) - Elvis Presley

Doris Day - Fools Rush In

Stacey Kent - Fools Rush In

アヴェ・マリア

2015年05月18日 | 音楽


B.B.Kingの訃報がニュースに流れた。
クラプトンが敬愛し、オバマ大統領との映像も印象に残っている、まさにKingだった。

ブルースが何たるや語る術はない。
が、ロックの世界やフォークの世界、様々なミュージシャンに影響を与えて間接的に我々はその精神を聴いている。


ひょんなことでお会いしたポーランドのお嬢さんEさん、日本語が堪能だ。
話していると「歌う」という。
「沖縄の歌が大好き」とも。

BEGINの「島んちゅぬ宝」が好きと、ウクレレのIさんと共に歌い出した。
「涙そうそう」も「すべての人の心に花を」も。

詳しいことはわからないが、日本に興味を抱いて勉強し「東北大震災復興支援活動」のために来日している。

ポーランドは日本で言えば北海道あたり、冷涼な気候のようだ。
そこへ阿部さんがやってきて「原発」づくりの提案をしていった。
現地の政治家たちは「お国初の原発づくり」に浮足立っているそうな。
Eさんを日本に招いたHさんは日本に25年住んでおり日本の良さも悪いところも、そして福島の実態も知っている。

「原発」は「悪貨は良貨を駆逐する」と言うことわざがぴったりするような「魔物」だ。
ちょうど子供がお父さんに「何かを買って」というアクションに、悪い意味で似ている。

「原発」は、事故の損害賠償、使用済核燃料の最終処分までを含めた「コスト計算をすべき」であろう。
ポーランドご出身のHさんは「子孫に負の遺産を残さないという観点」から「脱原発」のドイツの選択を評価していた。


さてブルースはハワイには似合わないと思うのだがやっている人がいた。
ウクレレで「アヴェ・マリア」を弾いて歌い、パヴァロッティも歌う。
ジミー・ヘンドリックスからB.B.Kingまでなんでもこなす。

ジャズのコード進行をするすると弾いては声楽家並みのボーカルを披露する。

ハワイという土壌はこうしたミュージシャンを生み出す何かがあるような気がしてならない。

そうだ、火山国には地底のエネルギーを利用する発電手段がある。
マグマのエネルギーを取り出して循環する。

処分に困る汚物を生産するよりも、もともと地球に備わっている資源を利用する方が科学的、先進的だと思うのだが。



Willie K Sings "Ave Maria" - Thunder Valley Casino Resort

Willie K - Over The Rainbow - Love Makes A Family

"Waterfall" (May This Be Love), Sung By Willie K, With Kris Thomas and Jerry Byers

Willie K Blues Band- Singing the Blues (Maui live 3.12.11)

ポピュラー・ミュージックの世紀

2015年05月15日 | 音楽



「中村とうようコレクション」の展覧会、イベントが今月から開催される。
5万点に及ぶ氏のレコードや楽器のコレクションは、2006年武蔵野美術大学に寄贈された。

2011年に他界された氏のコレクションの展覧会、メモリアルイベントは例年行われ、今年は5月25日から8月16日にかけて武蔵野美術大学の美術館、図書館にて開催予定だ。

プログラムをざっと紹介すれば

5月25日(月) 在りし日の中村とうようさんの横顔に迫る
5月30日(土) 世界の蓄音機
6月6日(土)  明治・大正の日本で生まれた大衆芸能
6月27日(土) ハワイ音楽の輝かしき秘宝 (山内雄喜 スラックキー・ギター)
7月4日(土)  アラブ音楽の深遠なる世界
7月11日(土) アメリカ音楽黄金期
8月 1日(土)  ワールド・ミュージック古今東西
8月10日(月)  ブルースからアフリカ音楽へ

7月20日(月・祝) 「とうようズ・デイ2015」17:30~20:30 メモリアル・コンサート
           サンディー、山内雄喜とパイナップル・シュガー 他
 
中村とうようさんとは、パイナップル・シュガー・ハワイアン・バンドのポリドール盤アルバム「アイランドフォークBEST14」のCD化の際にお会いした。
カスタムアルバムに続く日本で初のスラックキー・アルバムとして記念すべき音源を復刻盤としてCD化、再発する企画について
「新たにレコーディングすべきだろうか?」と意見を求められたことが、氏の音楽に対する誠実さを物語る記憶として印象に残っている。

そんな経緯を振り返りメモリアル・コンサートにお声がかかったのは嬉しい。

スラックキー・ギターを中心としたダカイン・サウンドを追求してきた者にとってとうようさんがハワイ音楽にどのような趣味を持っていらっしゃるのか興味深く、伺ったこともあった。
「いや、僕は古いのが好きなんだよ。」というような感じでおそらくSP盤の時代、ソル・フーピィ辺りがお好きなのかなあと思った。

コレクターにとってコレクションは「宝物」
一つ一つが恋人のようなもので人には譲りたくない。
一つ手に入れると次から次へと欲しくなる。

言い換えればコレクションを見ればその人のセンス、価値観、生き様がわかろうというもの。
ワールド・ミュージックという世界規模になればその足跡は一体どうなっているのであろうか、興味深いところだ。

昨今のウクレレ、フラブームが目立つこの頃、「ハワイ音楽」にも目を向けたい。
ハワイ各島で行われるスラックキー・ギター・フェスに例年参加して功績を認められた山内雄喜がフェスで受賞し、
昨年「2014 Na Hoku Hanohano "Ki-ho'alu Legacy Award "」を受賞した。

そして今年9月「スラックキー・ギター・フェス・イン・トーキョー」が開催される。
70年代に日本で初のスラックキー・ギター・アルバムを制作して三十数年、様々な思い出が走馬灯のように駆け巡る。


スラックキー・ギターはハワイで生まれたオープン・チューニングのギター奏法、
スタンダード・チューニングでは得られない複雑なトーンや滑らかで煌びやかな装飾音など言葉では説明できない魅力を持っている。
先般ギターを弾かれるある方に簡単な手ほどきをして差し上げたところ、眼が輝いてくるほど感心された。
ファンは増えているものの日本ではまだまだ知られていない、スラックキー・フェスを通じてハワイの風を感じて欲しい。


ささやかながらこうした音楽の歴史の一隅に自分がいられたことは幸いだ。
そして音楽は一人ではできない、応援してくれる仲間がいるからこそ続けられる。

仲間たちへ伝えたい「ありがとう」と









Ry Cooder - Always Lift Him Up _ Kanaka Wai Wai

田中勝則氏 (音楽プロデューサー) 故中村とうようの音楽コレクション展を開催 Tokyo Midtown presents The Lifestyle MUSEUM

2011/9/12 中村とうようさん 追悼コンサート @ ムサビ図書館 - 2

中村とうよう_ブルースの世界